第62話:『贈る言葉(ロイヤル・グラデュエーション)』
「……あら。随分と、不細工に『晴れ渡った』旅立ちですわね」
帝都学園の卒業式。
かつての「吹き溜まり」Z組の生徒たちは、今や学園で最も誇り高い瞳を持つ卒業生として、胸を張って講堂に並んでいた。
教壇に立つ麗華は、九条院家当主の証である黄金の徽章を、あっさりと傍らに置いた。
「……お聞きなさい。私は今日、九条院家の実権を、四天王の一人であった蓮さんに譲りますわ。……彼のような『痛み』を知る者が、新しい秩序を築くべきですもの」
ざわつく会場。だが麗華は、卒業証書を手にしたZ組の面々、そして最前列に陣取った広島・岡山・山口の教え子たちを見渡し、不敵に微笑んだ。
「おんどれ、ええか」
麗華の広島弁が、帝都学園の静寂を、永遠に記憶されるべき熱狂へと変える。
「……卒業おめでとう! ……あんらたは今日から、九条院という名前も、学園の成績も関係ない、剥き出しの世界へ放り出されるんじゃ! ……そこは不細工で、理不尽で、泥だらけの場所かもしれん。……じゃがな、自分の魂だけは、絶対に誰にも『統治』させるんじゃないわよ!!」
麗華の扇子が、天を指す。
「……迷うた時は、自分の腹の底から出る『本当の声』を信じんさい。……不細工に足掻き、不細工に笑い、自分だけの『正解』を、その手で掴み取ってきんさいや!!」
万雷の拍手。
涙を流す生徒たちを背に、麗華は優雅に講堂を後にした。
学園の正門。そこには、一台のボロいスポーツカー(あるいはバイク)を転がし、ガムを噛みながら待つ加藤の姿があった。
「……へっ。……ババア、準備はいいか。……次の『お掃除場所』から、さっそくSOSが届いてるぜ。……今度は、さらに不細工な北の果てだ」
「……あら。……加藤さん、私を誰だと思っていて? ……九条院麗華が通った後は、ペンペン草一本残らぬほど『清潔』にして差し上げますわよ」
麗華は日傘をパァン! と閉じ、助手席へ。
走り出す車。窓から差し込む夕日が、二人の背中を黄金色に染め上げる。
「……不細工。……最高に不細工で、気高い人生ですわ!!」




