第59話:『鉄の規律(ロイヤル・パニッシュ)』
「……あら。随分と、不細工に『錆び付いた』正義ですわね、鋼さん」
帝都学園、中央広場。
そこには、分厚い校則本を小脇に抱え、冷徹な眼鏡の奥で生徒たちの「違反」をカウントする四天王・鋼が立っていた。
彼の背後には、規律違反として「再教育」を命じられ、うなだれるZ組の生徒たち。
「九条院先生。……この学園において、校則は絶対です。……あなたの『日傘』は装飾過多、その『扇子』は武器転用の恐れあり。……そして何より、その『広島弁』は、帝都の品位を汚す公序良俗違反……。……即刻、教員免許の返上と、生徒たちの退学届にサインを」
鋼が突きつけたのは、微細な行動までを縛り上げる、数千項目に及ぶ「鉄の校則」。
生徒たちは、息をすることすら「校則違反」と言わんばかりの重圧に、震えていた。
「おんどれ、ええか」
麗華の広島弁が、静まり返った広場に、雷鳴のように轟いた。
彼女は鋼が差し出した退学届を、扇子で真っ二つに切り裂いた。
「……鋼さん。……あんたが並べ立てとるんはな、法律でも規律でもない。……自分の『臆病さ』を隠すための、不細工な言い訳じゃ!!」
麗華は、日傘を杖のように突き、鋼の至近距離まで歩み寄った。
「……規律いうんはな、人を縛るためにあるんじゃない。……弱い者が、理不尽な力に屈せんためにある『武器』なんよ! ……あんたがやっとるんは、その武器を取り上げて、丸腰の子供たちをいたぶっとるだけですわ!!」
麗華は加藤に合図を送る。
加藤は、帝都学園の「設立趣意書」と、九条院家が代々継承してきた「真の家訓」の写しを広場にばら撒いた。
「……へっ。……鋼、お前の言う『校則』、よく読んだら雅人が三日前に書き換えた『私物』じゃねえか。……学園創設時の『自由と自律』の精神、どこへ捨てやがった?」
「……なっ、それは……運営上の柔軟な対応で……」
「……柔軟? ……笑わせないで。……自分の都合でルールを曲げるんを、世間では『不細工な不正』と呼びますわ!」
麗華は、怯える生徒たちの前に立ち、彼らの肩を叩いた。
「……お聞きなさい! ……ルールは、守らされるもんじゃない。……あんたたちが、自分たちの『誇り』を守るために、自分たちで作るもんなんじゃ!! ……文句があるなら、この私を論理で論破してみせんさいや!!」
鋼の「鉄の仮面」が、屈辱と敗北感でひび割れる。
校則という名の鎖が、麗華の放つ「魂のカバチ」によって、粉々に打ち砕かれた。
女王の勝利。
四天王の三人が沈み、ついに宿敵・雅人の背中が、剥き出しの戦場に晒された。




