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『魂を誰にも統治させるな 〜悪役令嬢・九条院麗華の過激すぎる特別授業〜』  作者: 水前寺鯉太郎
N高編

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47/62

第47話:『静寂のコンチェルト(ロイヤル・ソリチュード)』

「……あら。随分と、不細工に『調和』が取れすぎていますわね」

 学習発表会の準備に沸く3年A組の教室。

 穂井田が机を運び、加藤が不器用ながらも装飾を手伝う。かつての「腐ったミカン」たちが、麗華の魔法によって、今やクラスを牽引する原動力となっていた。

 出し物は、岩国の歴史と未来を融合させた**「錦大島レヴュー」**。

 

 だが、その喧騒の境界線。

 窓際の席で、一言も発さず、ただノートに細かな数式や旋律のようなものを書き込み続けている少女――優がいた。

 彼女は、麗華が何を語りかけても、ただ静かに一礼するだけ。その瞳には、反抗でも絶望でもない、深い「透明な壁」が築かれていた。

「……先生。優のやつ、放っておいた方がいいぜ」

 穂井田が、汗を拭いながら麗華の横に立った。

「あいつ、毛利本家が支援してる『特待生』なんだ。……勉強も音楽も天才的だが、誰とも喋らねえ。……俺たちみたいな『汚れ物』とは、住む世界が違うんだよ」

「……住む世界? ……穂井田さん、あなた、まだそんな不細工なランク付けにこだわっていらっしゃるの?」

 麗華は優雅に優のデスクへと歩み寄り、扇子でトントンと、彼女のノートを指した。

「……優さん。……あなたの書いているその旋律。……随分と、不細工に『美しすぎる』わね。……まるで、外の世界の汚れを一切拒絶している、冷たい氷の城のようですわ」

 優の手が、一瞬止まった。

 けれど彼女は、顔を上げることなく、蚊の鳴くような声で答えた。

「……私は、毛利様に『完璧』であることを求められています。……発表会のような、不確定な感情が混じる場所に、私の居場所はありません……」

「おんどれ、ええか」

 麗華の広島弁が、沸き立つ教室の熱気を一瞬で凍りつかせる。

「……完璧いうんはな、死んどるのと同じじゃ! ……不純物が混じり、歪み、それでも必死に響こうとするからこそ、音は『音楽』になるんじゃ。……あんたのその指先、毛利の道具にするためにあるんか? ……それとも、あんた自身の魂を震わせるためにあるんか、どっちじゃ!!」

 教室中が静まり返る。

 優の肩が、微かに、けれど激しく震え始めた。

「……九条院先生。……余計な『教育』は控えていただきたい」

 廊下から、冷徹な声が響く。

 毛利一族から送り込まれた教育監査官が、優をガードするように立ちはだかった。

「……あら。……ゴミ掃除が終わったと思えば、次は『過保護な飼い主』の登場かしら。……加藤さん、穂井田さん。……発表会のメインステージ、少し予定を変更しますわよ」

 麗華は優のノートを奪い取ると、不敵な笑みを浮かべた。

「……優さんの『氷の旋律』に、このクラスの『泥臭い情熱』をぶち込みますわ。……最高に不細工で、最高に気高い、前代未聞のシンフォニー……見せて差し上げますわよ!」

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