第46話:『双翼の騎士(ダブル・ロイヤル・ガード)』
「……あら。随分と、不細工に『左右のバランス』が整いましたわね」
錦大島学園の廊下。麗華は、一点の曇りもない白い日傘を差し、優雅に歩を進めていた。
その後ろ、一歩下がった右側には、煙草の代わりにガムを噛み、鋭い眼光で周囲を威圧する加藤。
そして左側には、乱れた制服を正し、不貞腐れながらも麗華の歩調に合わせる穂井田。
すれ違う生徒たちが、波が引くように道を開ける。
「おい、見ろよ……。あの転校生の穂井田が、九条院に従ってるぞ」
「加藤とかいう男もヤバいオーラだ……。あそこだけ空気が違う」
麗華は、扇子をパァン! と閉じ、足を止めた。
「……加藤さん。……穂井田さん。……あなたたち、そんな不細工に肩を怒らせて歩かないでくださる? ……ここは戦場ではなく、学び舎ですわよ」
「……へっ。……先生、こいつ(穂井田)が隙あらば逃げ出しそうな面してるからよ。……見張りが必要だろ?」
加藤がニヤリと笑う。
「……うっせえよ。……俺はただ、このババアが……九条院が、どうやって俺を『マーマレード』にするのか見極めてやるって決めただけだ」
穂井田が、顔を赤くして視線を逸らす。
「おんどれ、ええか」
麗華の広島弁が、静かな廊下に重厚に響く。
「……加藤さんは私の『影』として、穂井田さんは私の『光』として。……二人が揃うてこそ、私の『統治』は完成するんじゃ。……喧嘩しとる暇があるんなら、まずはその不細工な歩き方を、九条院家の騎士に相応しい『気品』あるものに変えんさいや!!」
「「……チッ(へっ)、仰せのままに」」
息の合った(?)返事に、麗華は満足げに微笑んだ。
しかし、その視線の先――。
学園の最上階、毛利一族が寄贈した「白蛇の間」の窓から、冷徹な瞳が三人を見下ろしていた。
『――ふん。……野良犬と、一族の恥晒しを飼い慣らしたつもりですか、お姉様。……ですが、山口の伝統は、そんな力技では動かせませんよ』
女王の山口編、真の敵が動き出す。
最強の布陣を得た麗華の前に、毛利本家が放つ「静かなる刺客」が姿を現そうとしていた。




