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『魂を誰にも統治させるな 〜悪役令嬢・九条院麗華の過激すぎる特別授業〜』  作者: 水前寺鯉太郎
F高編

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37/62

第37話:『女王の疾走(ロイヤル・ランナウェイ)』

「――九条院先生! 雪乃さんの陣痛、間隔が五分を切りましたわ!」

 丸山家からの緊急連絡。受話器を置く麗華の手が、微かに震えていた。

 窓の外、試験会場へ向かったはずの保の背中は、もう見えない。

「……保さん。……不細工なタイミングですわね」

 麗華は、真っ白なシルクのコートを羽織る間もなく、保健室を飛び出した。

 廊下ですれ違うプラチナの生徒たちが、髪を振り乱して走る女王の姿に絶句する。

「……先生!? どこへ……!」

「お退きなさい! 今、この瞬間に、世界で一番大切な『統治』が始まろうとしていますのよ!」

 校門を出ると、そこには雅人の差し向けた監視車両が道を塞いでいた。

「お姉様。……公務を放棄して、どこへ行くつもりですか?」

 車窓から雅人が冷酷に問いかける。

「おんどれ、ええか、雅人!!」

 麗華の絶叫が、岡山の静かな住宅街に響き渡った。

「……数字や権力で、命の産声は止められんのじゃ! ……邪魔をするんなら、このわたくしが、あんたのその不細工な車ごと、地獄まで引きずり回して差し上げますわよ!!」

 麗華は、停車していた加藤のバイク――そのリアシートに、ドレスの裾を大胆に捲り上げて飛び乗った。

「……加藤さん! 保さんの家へ! ……最短距離で、風よりも速く飛ばしなさいな!」

「……へっ。……仰せのままに、女王陛下!」

 猛烈な加速。

 麗華は、保の自宅へと辿り着くと、玄関を激しく叩き、謹慎中だった保を連れ出した。

「……保さん! 行きなさい! ……あなたの人生で、最も重要な『願書』を提出する場所は、試験会場ではありませんわ!」

 麗華の叱咤に、保の瞳に火が灯る。

「……先生。……俺、行ってきます!」

 走り出す保の背中。

 それを見送る麗華の頬を、春の柔らかな風が撫でた。

 その時、麗華の元に千尋からの通信が入る。

『――先生。……九条院雅人の裏帳簿、解析完了しました。……雅人が岡山知事と交わした「密約」の全貌、今から全メディアに流しますわ』

 女王の疾走は、新しい命を呼び寄せ、同時に腐敗した権力を浄化する「変革の風」となった。

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