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『魂を誰にも統治させるな 〜悪役令嬢・九条院麗華の過激すぎる特別授業〜』  作者: 水前寺鯉太郎
F高編

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34/62

第34話:『女王の陥落(マジェスティ・フォール)』

「――以上が、今回の『産業廃棄物ワーストテン』のリストだ。……君たちは、我が校の平均スコアを下げるノイズに過ぎない」

 数学教師・乾は、冷徹な手つきでプロジェクターを操作し、赤字で書かれた生徒たちの氏名を晒し上げた。

 アイアン・クラスの生徒たちが、屈辱に肩を震わせる。

「これより、上位者のみを対象とした特進授業を開始する。……リストに載った者は、隅で自習でもしていろ。……君たちの将来など、計算式には含まれていないのだから」

 その瞬間、教室の空気が「沸騰」した。

 「……ふざけるなッ!!」

 口火を切ったのは、かつて長ランで自己を主張した近藤だった。

 一人が動けば、それは濁流となった。日頃の「スコア」という名の抑圧、ランクによる差別、そして命を軽んじるシステムの傲慢さへの怒りが、拳となって乾に襲いかかった。

「やめろ! 暴力はスコアを……ぎゃあああっ!」

 乾の悲鳴が響き、机がなぎ倒される。

 B組の生徒たち――かつて麗華が「気高い薔薇」と呼んだ若者たちが、今、野蛮な暴徒と化して一人の教師を蹂躙していた。

「……そこまでになさいな。……不細工な狂乱カーニバルは、もう終わりにいたしましょう」

 教室の入り口。麗華の声は、怒鳴ることもなく、ただ氷のように冷たく響いた。

 彼女の視線の先には、返り血を浴び、肩で息をする生徒たちの無様な姿があった。

「……先生。……こいつが、俺たちをゴミ扱いしたんだ……」

 近藤が拳を握りしめ、麗華に縋るような目を向ける。

 麗華は、ゆっくりと教室の中央へ歩み寄った。

 倒れた乾には目もくれず、愛用の扇子をパァン! と閉じ、近藤の胸元を鋭く突いた。

「おんどれ、ええか」

 麗華の広島弁が、かつてないほどの絶望を伴って響く。

「……ワシが教えたんは、言葉で戦えいうことじゃ。……理不尽を、その不細工な拳でねじ伏せて、何が『女王の庭』の住人か。……あんたらのその手についてるんは、勝利の証じゃない。……自分たちの誇りを泥に投げ捨てた、汚物ノイズの跡じゃ!!」

 生徒たちが、一斉に顔を伏せ、嗚咽を漏らす。

 その時。

 廊下から、ゆっくりとした拍手の音が聞こえてきた。

「……素晴らしい。実に見事な『教育の崩壊』です、お姉様」

 九条院雅人。

 黒いスーツを纏った彼が、背後に監視カメラの映像を持った監査チームを引き連れて現れた。

「生徒による教師への集団暴行。……これ以上の『解任理由』は、この世に存在しませんね。……お姉様、あなたの岡山での『砂遊び』は、今、この瞬間をもちまして終了です」

 雅人は、震える麗華の耳元で、甘く残酷に囁いた。

「……この映像は、すでに文科省へ送信済みです。……明日の朝には、九条院麗華の名前は教育界から永遠に抹殺され、B組の生徒たちは全員、少年院へ送られることになるでしょう」

 「……チッ。……先生、ハメられたな。……乾の野郎、最初から雅人の回し者だ」

 影で事態を察知していた加藤が、苦い表情で吐き捨てる。

 女王の統治、絶体絶命の陥落。

 麗華が命懸けで育てた「薔薇」たちが、自らの棘で、女王の喉元を切り裂いてしまったのだ。

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