第14話:新たなる統治への辞令(ネクスト・ミッション)
「……ほう。私に、その『猛獣の檻』を統治せよ、と?」
麗華は扇子を閉じ、校長から差し出された辞令を、まるで汚物を見るような、しかしどこか悦びに満ちた瞳で見つめた。
広島県立、鳥影高校。通称『T校』。
そこは希望を失った少年たちの墓場であり、法さえも日傘を差して通り過ぎる暗部。
「救済などという、甘っちょろい言葉を使うつもりはありませんわ。……ただ、私の庭になるはずのこの広島に、不細工な雑草が蔓延るのを、見過ごすわけにはいきませんもの」
翌朝。埃と暴力の臭いが染み付いたT校の校門を、深紅のイタリア製スポーツカーが咆哮を上げてくぐり抜けた。
石畳を叩く、ハイヒールの音。
「おい、なんだあの女……」
屯する少年の一人が、吸い殻を麗華の靴元に弾いた。
麗華は歩みを止めない。吸い殻をヒールで優雅に踏みにじり、そのまま少年の喉元に扇子の先を突きつけた。
「……お黙んなさい。ここが檻だというのなら、飼い主が誰であるか、魂に刻み込んで差し上げなくてはなりませんわね」
職員室の重い扉が、麗華の蹴りで跳ね上がる。
「今日からこの学校の『統治』を担当いたします、九条院麗華ですわ。……いいですか。今日この瞬間から、この学校に『絶望』という言葉は禁止いたします」
麗華の広島弁が、澱んだ校舎に雷鳴のように響き渡った。
「おんどれら、ええか。ここをゴミ捨て場思うとるんなら、今すぐ消えんさい。……ワシの前に立つんなら、死ぬ気で『薔薇』になる覚悟を決めんさいや。……さあ、教育の時間ですわ!」




