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シンデレラ転生の左遷リーマンは零時までの身体能力チートで異世界を救う  作者: 釈 余白(しやく)
第三章:激しくも長き決戦

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19.魔界門の構築

 最前線に陣を築いてから二日、遠くからではわからなかったが魔界門はその形を徐々に組み上げていた。門自体は地面からだんだんとせり出してくるのではなく、積みあがるように形作っている。いうなればミルフィーユのような構造と言えば分りやすいだろう。


 シンデレラは確認のため近寄って少し壊してみたが、未完成だからだろう。欠損ができてもまた積み上がり再生していくだけで意味がない。


「これはやはり完成を待つしかないようですね。なんとももどかしいですし、目の前に積み重なっていく危機を放置しなくてはならず歯がゆいものです」


「まっこと同感でございます。全てが出来上がるまでにはまだ少々時間がかかりそうですし、おそらくは日を跨ぐと考えられます。いかがでしょうか、ここはいったん休息を取っておいていただけませぬか?」


「そうですね、無理に起きて見張っていても仕方ありません。申し訳ありませんが先に休ませていただきましょう。日が変わったころには起きて鍛えはじめますが、その前に緊急事態が起こったなら必ず起こしてくださいね」


「かしこまりました。身の回りの世話をするものが誰もつけられなく、申し訳ございません。できるだけごゆっくりお休みくださいませ」


 迎撃隊隊長へひとまずの警戒を任せ、シンデレラはひと時の休息についた。ここは囲うように馬車を停めて作った彼女専用の休息所である。


 隊長の配慮によって強固に作られたこの場所は、周囲の雑音さえ遮断するほどの防音性能があり、城同等とまではいかないが確実に体力を回復できるような作りだ。


 こうしてシンデレラは最前線にもかかわらずしっかりと休息を取り、間もなくやってくる戦いに向け力を蓄えることができた。



 ただ本人としては寝すぎてしまったことに申し訳なさを感じ、気遣いによって叱られ役を引き受けた隊長へつい当たってしまう。


「隊長、なぜ起こしてくださらなかったのですか? まもなく夜が明けてしまいそうです。魔界門の様子はどうなっているのでしょう。まさかとは思いますが、完成間近ではありませんよね?」


「ええ大丈夫です。間近どころか徐々にペースが遅くなっているようですね。これはただの勘なのですが、進むにしたがって不浄の大気の必要量が増えるのではないかと考えました」


「その見立てには説得力がありますね。わたしも同意いたします。ええっと、算術が得意な隊員を選定して予測時間を出すようお願いできますか?」


「ははっ、ただちに手配いたしましょう」


 迅速な作戦進行によって、昼過ぎには予定時間の算出が終わった。それによるとどうやら門が完全に完成するのは明日の日中から夜にかけてとの予想である。


 しかしこれは魔界門の形状が史実に残されているものと同じであった場合、もし全く異なっていたら大きなずれが生じる可能性もあった。それだけに気は抜けないとシンデレラは全員へ告知し、部隊にはますますの緊張感が張りつめる。


「ですが今晩中と言うことはまずないと考えられますので、聖戦前に最後の英気を養いましょう。お酒は一人一杯までなら許可しますよ?」


「ひっ、姫様!? そのようなぬるいことで大丈夫なのですか!?」


「大丈夫です。いざとなったらわたしが前面に立ちますので安心してください。夜でないと力を発揮できませんから、これから命を張る皆のためならこれくらい当然のことです。それと――」


 シンデレラは隊長へ耳打ちをすると、後方に控える騎士団への伝令、それと王城へで寝込んでいる王子への書面をしたため遣いの手配を頼んだ。


 明日、もしくは明後日には最後の戦いが始まる可能性が高い。つまりシンデレラが無事で帰らない可能性もあるのだ。


 もし悪魔との戦い終結が宣言されても自分が戻らない場合には、予定通り定められた婚約者を妃として迎え、決して探さないようにと綴り託したのだった。


 今のところはまだ何もわからないのと同じ、あの小さな悪魔同等の群れが現れたとしてもさほど脅威ではないだろう。だがそれなら過去にも大きな被害なく撃退できたはず。だがそれでもンノーミヤン帝国は滅んだのだ。


 シンデレラの精神に居座っている灰賀は、常に危機管理を意識し物事をマイナス側へ考える性格である。すなわち今回の戦いは甘い話ではないことは明白で、自分が無事で済むかは五分五分からやや分が悪いだろうと考えていた。


 勝機はやはりどれくらいで魔界門が破壊できるか、それまでにどれだけ悪魔の進行を抑えられるかがカギだろう。迎撃部隊も騎士団も練度は高いがなにせ未経験の戦いであるから過剰な期待は禁物だ。


 それだけに今晩は、もしかすると人生最後の晩餐となるかもしれない。酒の一杯くらいは飲ませてやりたかった。


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