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勇者出撃

「と、いう訳。ティファはいつも通りでいいけど、あたし達2人は12時間交代のローテで警戒態勢に入るわ。朝と昼はあたしが、夕方と夜はトウマがって感じで」

「俺の方がゲームのおかげで夜間戦闘は慣れてるしな。対してサラは地上戦の経験があまりないし、視界の確保がしやすい朝昼の方がいいって判断した」

「それは別にいいけど……大丈夫? 体壊さない?」

「大丈夫よ。何かあったら通信が来るし、通信が来るまでは自由時間みたいなもんだし。あたし達は敵が来たら戦闘するだけ。ヤバかったら互いにすぐに助けを出せば万が一も無いわ」


 既に原生生物のスペックは見切っている。

 奴らの攻撃は100体纏めてかかってきたとしてもキングズヴェーリの攻撃よりは比較的楽に回避できる。

 それ故に、単騎での戦闘であったとしても、100体前後であれば一人でも倒しきる事は可能。それに、12時間警戒態勢と言っても、ずっとネメシスに乗って待機しているわけでもなく、サラはいつも通りに生活して敵襲があれば出撃、トウマも寝る時間をちょっとズラして夜型の人間として生活するだけだ。

 一時間に一回襲撃が来る、なんてことがなければ問題は無い。というかそんな高ペースで出撃していたらネメシスの方が短期間の連続出撃で故障してしまう。

 

「そんなわけで、ティファはあまり気にしなくてもいいわ。2週間、時折メンテがあるけどそれ以外は平和だと思ってれば大丈夫」

「それならいいんだけど……まぁ、2週間空きができるならいいわ。それなら、あの子の強化もできそうだし」

「嫌な予感するなぁ……技術的ブレイクスルー的な意味で」


 ティファは明後日の方向を向いた。

 

「俺さ、最近ティファのこと怖くなってきた。最初は天才だすげーだけだったのに」

「奇遇ね、あたしもよ。その内単騎でキングズヴェーリを倒せるような装備作ってもおかしくないし」

「…………――太陽が綺麗ねぇ」

「すっげー露骨に視線逸らしてすっげー露骨に変な事言いだしやがった……」


 つまり目的はそこ、という事なのだろう。

 どんなビックリドッキリメカが飛び出してくるのか。トウマは不安で不安で仕方なかった。

 まぁ、確実に強化されるという事は分かっているので、そこは安心しておこう。

 

「ちなみに、ラーマナ用の専用装備も同時進行で作ってたり……」


 サラの目が死んだ瞬間だった。

 

****



 それからというもの。

 トウマは夜型に生活を整えるためすぐに昼寝しに行き、サラはそのままいつも通りティファと話をしたりちょっと筋トレしたりして時間を潰し、ティファは時折寝落ちしてまた復活しては作業してまた寝落ちしてを繰り返す、メカニック的な日常に没頭することとなった。

 たった一人で作るようなもんでもないものを一人で作っているため、確実にどこかで疲労が限界突破するだろうが、そういう時に彼女を止めるとレンチとスパナが出てくるため、トウマ達は何も言えない。

 そして、軍や船団というのもただ敵の襲撃を待っているわけじゃない。

 この星全体にもう一度無人探査機を飛ばして原生生物αがどこを中心に生息しているのか、大陸の写真を基に予想を立てたり、軍用のネメシスを飛ばして有人での探査を進めた。

 そうして探査を進めているのだが。

 

「だー、もう。早速スクランブルって……敵釣ってきちゃった感じかぁ」


 会議から約三時間後。サラの元にスクランブルの要請が来た。

 軍のネメシスを使った有人探査の結果、少し離れた場所で原生生物αを発見し、直後に襲われここまで逃げているらしい。

 奴らの速度は軍用ネメシスと比較して少し速い程度。故に、軍のネメシスは必死こいて逃げている最中なのだという。

 しかし、少し離れただけでこれでは、もしかしたらあの原生生物はこの星全体に生息しているのかもしれない。そうなった場合、奴らに対抗する手段は無い。テラフォーミングは中断して撤退が最良の判断となる。


「まぁ、文句言っても仕方ないか。仕事受けちゃったし」


 最低限、仕事をすると言ったのなら、その範疇の事はしなければならない。

 ヘルメットを着用し、OSを立ち上げる。

 すると、すぐにティファから通信が入る。

 

『あー、サラ? あいつらにはS.I.V.A.Rが効くってのは聞いてたから急いでラーマナ用のS.I.V.A.Rの調整もしてたんだけど、やっぱ間に合わなかった。あと三日くらいはかかると思う』

「逆に三日あればできるのね……」

『元々、スプライシングの予備として作ってたのがあったの。で、そっちもまだエネルギー供給用のケーブルが無いと動かないから、ラーマナには持たせられないの。でも、あと三日でスプライシングの分もラーマナの分も、S.I.V.A.Rは無線化できるわ』

「そ、そう……ほんとティファにだけは喧嘩売らないようにしないと……」


 だから軽いバイト感覚でブレイクスルーを起こすんじゃない、ブレイクスルーを。

 サラは遠い目をしながらティファの言った事を受け止め、操縦桿を握った。

 とりあえず、今は戦闘だ。

 

「はぁ……とりあえず、気合い入れないと。ラーマナMk-Ⅱ、サラ・カサヴェデス、出る!!」


 いつも通りの発進の宣言で気合を入れ、カタパルトから飛び立つ。

 今回もアーマードブラストはパージ済み。デッドウェイトとなってしまうからだ。

 脚部と腰部の追加スラスターにより、オリジナルのラーマナすら超えた速度でラーマナMk-Ⅱは空を飛ぶ。

 そして、追ってくる敵の姿はすぐに目視で確認ができた。軍のネメシスは何とか原生生物の攻撃を避けながらこっちへと向かってくる。

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