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「……すまない、君。助かった。助かったがもう黙っててくれ。聞きたくなかった言葉がいっぱいだ」

「うっす」

「あんたも口先が少しは良くなったわね?」

「まぁお前らの交渉しているところずっと見てきたし」

「…………軍人やめて傭兵になろうかな」


 最後に軍人サイドからなんかぼそっと聞こえたが、誰も聞かなかったことにした。

 そりゃあこんなに若いのにそれだけ稼いでいるところを見たら誰だって夢の一つや二つは見るだろう。


「…………で、話がそれたが、戻させてもらう。奴らには軍の携行火器では戦うのが困難だ。故に、軍としてはこの星のテラフォーミングを中断し、宙へ戻る事を提案する」

「なんだと!? 今回のテラフォーミングをするためにどれだけの予算を使ったと思っている!? しかもそこの傭兵に支払った宙賊討伐代も馬鹿にならんのだぞ!?」

「だが、奴らの攻撃を防げない以上、このままでは軍の人間だけではなく、船団の者にも被害が出る可能性がある。金のために人命を捨てるのは愚策だぞ」

「ぐっ……しかしだな……!!」


 テラフォーミング船団は一応国に所属する船団だが、それでもその予算と言うのは限りがある。

 それに、船団にもノルマのようなものはしっかりとあるため、原生生物に攻撃されたからという理由だけで引けば後から何を言われるか分かった者ではないのだ。

 しかしそれは軍側としても同じ。間違いなく今回の責任者は何かしらの重い責任が課されることとなるだろうし、たかが原生生物に逃げ帰ってきた臆病者とも言われてしまうだろう。

 それを加味してでも軍側は撤退を進言し、テラフォーミング船団はこのままテラフォーミングを進行させたかった。


「…………そこの2人は、いつまで我等船団に雇われる気だ?」

「金が払われれば。あと、無茶ぶり言われなければ。ついでに、一か月以上の拘束が無ければ。そこら辺は契約書に書いたはずよ。契約は一か月まで。それ以上は契約外よ」

「それなら、この2人の傭兵を中心に原生生物を撃滅すればいい。金なら船団の方から出す」

「原生生物の撃滅? まさか、奴らを根絶でもしろとでもいうのか!? しかも、たった2人の傭兵を中心にか!?」

「そうしなければ互いに多数の首が飛ぶことになるぞ」


 軍としてその提案は容易に頷けるものではない。

 たった2人に依存して、原生生物を根絶しなければならないなど、流石に無理がある。

 それに、トウマとサラは一か月の契約だが、既に2人を雇ってから二週間は経過している。あと二週間で原生生物を根絶するなど到底不可能な話だ。

 

「幸いにも、奴らのサンプルは大量にある。それを基に奴等の侵攻を止めるための薬剤か何かを開発させる。二週間以内でな。その間、軍には船団の依頼と、奴らの根絶の方法を考えてもらう」

「……いいだろう。だが、二週間でどうにもできなければ、テラフォーミングは中断。撤退だ」

「やむを得ん。それでいいだろう。そこの傭兵2人、異論は?」

「いや、あるけど。普通に」


 当たり前だ。

 

「まずこっちとしてはたった2人で24時間体制を敷くことになるわ。それに、メカニックだって1人しかいない上に、機密の関係で第三者には触らせることはできないわ。だから、追加の報酬を要求させてもらうわ。具体的には、今回わたし達に提示された額の3倍」

「3倍だと!?」

「いや、そうでしょ。本来は2人で8時間を1か月って所を24時間働き詰めになるんだから。しかも、数百の敵に対してあたし達2人だけで戦うのよ? 危険手当も含めてそんぐらい出しなさいよ。こっちだって好きで命張ってるわけじゃないのよ」


 そりゃそうだ。船団の人間の中にも、まぁそれぐらいは払うべきだろうと頷いている者が数名いる。だってこれから二週間もの間24時間警戒態勢を2人でやらないといけないのだから。

 1人頭12時間警戒し続ける。普通に無理だ。

 

「で、これはここの防衛の報酬ね。もしも追加で何かしらの作戦に出ろって言うのなら追加で報酬をもらうわ。片方が出撃している間、片方が無理にでも警戒態勢を続けないといけないしね。残業代みたいなもんよ。それに、あたし達が一番に命張るんだからそれぐらいは出しなさい」

「……金、金と。金がなければ動けんのか」

「えぇ、そうよ。地獄の沙汰も金次第。こちとら無償で戦力供給してるわけじゃないのよ。だから、別にいいのよ? このままこの星を離脱して帰っても。あたし達は別に困らないし」


 むしろ、この程度で24時間警戒態勢を2週間続けてくれるのならば安い方だろう。

 他の傭兵ならば確実にもっと吹っかけている。

 これでもサラ達は懐に余裕があるし、星への上陸を許可してくれた事に対する恩を感じているからこそ、ここまで譲歩しているのだ。これ以上は流石に譲歩できないラインまで来てしまっている。

 命令一つでそれに従ってくれる軍人ではないのだ。

 

「後は船団の施設の優先利用権みたいなのもあれば欲しいわね。無ければいいわ。あとは……もしもメカニックの子が手が足りないって言ったら軍の方からメカニックを貸し出してもらうわ。パイロットはいらない。訓練したくもないしね。あと、ネメシスのパーツなんかも必要になったら送ってもらうわ。その代わり、戦闘はあたし達2人がする。軍のネメシスは地上で余波を防いでれば文句は言わない。これでどう?」


 報酬の増額に加え、人員や資材の優先供給。これがサラの提示した条件だった。

 トウマ的にもこの条件で文句はない。昔のトウマならネメシスに乗れるだけで十分だから、なんて思っていただろうが、今のトウマはちゃんとした傭兵の一人だ。そこら辺の事も弁えている。


「で、どう? あたし達をこのまま雇ってくれる? 言っとくけど、同じことができる傭兵は居ないし、居たとしても吹っかけられるわよ。それでも良ければ、断ればいいわ。あたし達はどっちでもいいから」


 さぁ、どうする?

 その言葉を聞き、船団の人間も軍の人間も、頷くしかないのであった。

 テラフォーミングを遂行するための可能性は、この2人しか持っていないのだから。

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