新たなる星を求めて
ティファ達3人は最早趣味だけやって生きていくことすらできる程度には貯金がある。
しかし、アーマードブラストみたいな装備やら現在鋭意開発中のビームライフルやらを作るにはどうしても金というのは幾らあっても足りなくなる。
という訳で。
「実は結構珍しい依頼があったのよ。だから、面白半分で受けてみた」
ティファが何やら珍しい依頼とやらを持ってきた。
トウマとサラはへー。と適当な感じ。
所詮依頼なんて最後はネメシス取り出して無双すれば終わるいつものパターンなのだからなんとでもなる。
「今回の依頼はなんと、アイゼン公国ってトコの国のテラフォーミング船団の護衛と惑星降下後の敵対原生生物の排除よ」
「て、テラフォーミング? それって……未開の惑星を人が住めるようにする、的な?」
「それよ」
しかし、ティファが口にした依頼の内容は、今までの依頼とは規模感がまるで違う物だった。
テラフォーミング船団の護衛。そんなのネメシスオンラインでもやったことが無い。
「テラフォーミングってのは大量の物資と貴重な機材を惜しみなく使う必要があるの。それこそ、国が主導で進めるレベルの規模のプロジェクトなの」
「その割にはしょっちゅうテラフォーミングしてるけどね」
「そうなのか?」
「えぇ。ただ、それ程までに今の人口増加のスピードは凄まじいの。庶民はコロニーへ、金持ちは星へ。そうやって振り分ける事で何とかなっているのが現状なの」
なるほど、とトウマは口にする。
確かに前もテラフォーミングは頻繁に行われているし、その背景には人口増加があるとも聞いていた。それ等の詳細がやっと分かったという形だ。
しかし、それを聞いていると、ふと疑問に思ったことが何点かあった。
「……つまりそれって、テラフォーミングしてる間、ずっと護衛してろって事か?」
「そういう訳じゃないわ。具体的にはテラフォーミング船団の集結から準備、惑星への降下、降下後のテラフォーミング開始地点の安全が確保されるまでが護衛期間よ」
「それってどんぐらいだ?」
「大体2週間から1ヶ月ね。よほど危険な惑星じゃない限り、ここから伸びることはないわ」
「危険って……そもそも、テラフォーミングに危険なんてあるのか?」
「あるわよ。テラフォーミング船団はさっきも言ったとおり、貴重な機材や大量の物資を持ってるわ。それを狙う馬鹿な輩はどうしても付き纏うわ。それに、惑星に関しても、他の知的生命体が居ないとも限らないし、凶暴な原生生物だっているかもしれない。それらが襲ってきた時にやり返すのもわたし達の仕事よ」
なるほど、と言葉を返す。
軍も軍でやる事がたくさんあるため、テラフォーミングに付きっ切りというわけにはいかないのだろう。
「ちなみに、テラフォーミング先の星に知的生命体がいるってことは?」
「ないわよ。ないない。そこら辺の調査は事前にしてるし、何より人類が宇宙進出してからもう長いけど、人型以外の知的生命体は発見されてないの。だから、ありえないわ」
つまり、人間が居ないかの確認だけはもうしてあるということ。
ちなみに、人間が居る場合はどうするのかと聞いたところ、そこら辺は平和そうなら宇宙進出まで放置。絶滅戦争等のヤバいことをしてた場合は超科学で上から抑えつけるとの事。
なるほどね、とトウマは頷いた。色々と考えてるんだなーとも。
「という訳で。今回の仕事は拘束時間が長めよ。一応、戦闘時以外は基本自由だけど、テラフォーミング船団から離れるのは駄目ね」
「テラフォーミング中の惑星に降りてみるのは?」
「偵察って名目でなら可能ね。やっぱり自然ってのは貴重だから、降りたい人は結構多いの。だから、こればっかりはテラフォーミングの仕事をしてる人の特権ね」
ちなみに食料や水といった必需品は十分な量が支給されるし、テラフォーミング船団の中には店もあるため、菓子等の娯楽品も多少ではあるが取り扱われている。
案外自由時間もあるし、これも経験だということでこういう長期拘束の依頼は初めてとなるトウマとサラの経験のためにも、この依頼を受けることとなったのであった。




