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南風

 海に入る準備も万全。

 既に女性陣は海へ突撃しようとしているのだが。


「んじゃ、俺は荷物に鍵とかかけておくから、2人は先に遊んできていいぞ」


 ビーチパラソルやら何やらのセッティングを終えたトウマは一息つき、どこからか買ってきて持ってきていたらしいアナログな鍵を取り出した。

 しかし、2人は何言ってんだコイツ、という表情。


「…………もしかして置き引きとか気にしてる?」

「ん、そりゃそーだろ」

「時代遅れよ、ソレ……特にここだと」

「そうなん?」

「こういう所は警備用のシステムってのがあるの。置き引きしようものなら即顔晒されて即逮捕。しかもここはリゾートコロニーよ。そんなセコい事考える奴なんてまず居ないわよ」


 そもそも入るのに莫大な金がかかるのがこのリゾートコロニーだ。置き引きなんて貧乏臭い事を考える人間はそもそも入れない。

 更にした所で即座に警備に通報され即捕まる。故にリゾートコロニーでは置き引きなんて気にする必要はない。

 まぁそもそも、持って行かれて困る物なんて端末程度でもあるのだが。金なんて生身でキャッシュレスできるし。


「あー…………なるほどね? 便利な時代になったもんだな」

「あんたの時代が不便すぎるのよ……わかったら浮き輪2つ借りてきなさい」

「あいあいまむ」


 という事でトウマは持ち場から離れ、近くの店で適当に浮き輪を2つと、自分用のゴーグルとシュノーケルを借りてから戻る。

 すると2人はとっとと日焼け止めだけ塗ってたらしく、もう海に行く準備を終えていた。


「もってきたぞーい」

「あんがと。あっ、日焼け止め使う? 後でお風呂入るとき痛くなるの嫌でしょ」

「じゃあ使うわ」


 という事でトウマも日焼け止めをプシュッと。最近のは虫除けスプレーみたいな小さいスプレー形式らしい。

 これで準備もできたという事で女性陣は浮き輪を使って海へ。トウマは久々に軽く準備体操をしてから海へドボン。


「うはっ、何だこれ、海すっげぇ綺麗だな!! しかも水温丁度良くてめっちゃ気持ちいい!」

「そりゃ人工だもの。っていうかあんた、泳げるのね」

「ん、まぁな。2人は?」

「わたしは無理よ。海なんて初めてだもの。プールだって行ったことないし」

「あたしは軽くなら。けど疲れるし浮いてる方が好きよ」

「あー……確かにコロニーって海とか普通無いしな。気温も一定だしプールなんて趣味じゃなきゃ行かねぇのか」

「そゆこと。わたしみたいなのが普通よ、最近は」


 人工の海はやはり人の手でしっかりと調整されているためか、トウマが今まで見たことのあるどの海よりも澄んでいた。

 とは言ってもトウマ自身、海なんてそんなに来たことはないのだが。

 そしてサラッとカナヅチ宣言をしたティファだが、この時代では普通。水泳よりも宇宙遊泳が重視される時代なので、学校なんかでも水泳よりノーマルスーツを着込んでの宇宙遊泳が授業に組み込まれるのが普通なのだ。

 惑星在住ともなると、流石に水泳も軽くやるらしいが。


「ふーん……じゃあさ、泳ぎ方とか教えようか?」

「んー、別に大丈夫よ。今後必要にはならないでしょうし」

「そっか。なら俺はちょっとそこら辺泳いでるわ」

「好きになさい。わたしも適当に浮いてるから」

「あたしもー」


 という事でトウマは暫く適当に海を泳ぎ、ティファとサラは浮き輪でぷかぷか。時折トウマの腕に紐を括り付けてスイーっと。

 普段から狭い船の中で共同生活しているからか、広い空間でダラダラとするのはちょっと新鮮だった。特にティファは途中からうつらうつらと寝落ちしかけていた。

 昨今の時代、どこもかしこも忙しないのでこういう時間は結構贅沢な物だったりするのだ。

 ちなみに浮き輪にはセンサーが付いており、あまり沖に行き過ぎると勝手に反応して超小型のスクリューが動いて陸の方へと移動する機能が付いていたりするので、安心安全である。

 そんな感じで3人それぞれ好きに海での時間を過ごし、少し時間が経ってから陸へ戻り昼食へ。


「ふーん、ここってこういうご飯も売ってるのね。安っぽいけどなんか好きかも」

「海ってのはこーゆーの食うもんなんだよ。お約束ってやつだ、お約束」

「あたしはなんか苦手かも……美味しくないわけじゃないんだけど……舌肥えたのかも……」


 昼食は海の家の名物かもしれない、声を大にして美味いとは言えない焼きそばやらカレーやら。

 これがフードカートリッジで作られているのだから驚きだ。あんまり美味しくないのに海にいるからという理由だけでそこそこ美味しく感じられる。

 しかしサラだけはちょっとお口に合わなかったのか、微妙な顔をしていた。

 海でのお約束と言えば女性陣がナンパされたりとかあるのだが、ここに居るのはちんちくりん2人なのでそう言うのが起きる訳もなく。


「なんかボール貸し出してたからこれで遊びましょ。という事でサラ、トス」

「え? あ、パス」

「死ねトウマぁ!!」

「うせやぐべっ!!?」


 ビーチバレーとは名ばかりの的当て(的はトウマ)で遊んだり。


「すげー高かったけどスイカ買ってきたぞい。スイカ割りやろうぜ」

「なにそれ」

「うせやん」

「あぁ、これであんたの頭を割るの? 随分と野蛮な遊びね……」

「我々の業界でも拷問です。目隠ししてグルグル回ってから、これを棒で割るんだよ。で、割ったら食う」

「アナログな遊びねぇ。まぁ楽しそうだしやってみましょうか」


 スイカ割りに興じてみたり。

 ちなみにスイカ割りを制したのは。


「そこね!」

「うわ、サラが当てやがった!?」

「へー、こんな綺麗に割れるもんなのね」


 なんとサラだった。

 適当にそこそこ多めにグルグルと回してヤジも飛ばしたのだが、サラは余裕綽々と言わんばかりにスイカまでの距離を詰めてスイカを叩き割った。

 ちなみにティファは普通にスカし、トウマは掠らせるだけだった。

 割れたスイカは小さい物だったため、勿論3人で食べきりました。

 そんな感じで海で遊んだ3人は、夕方になる前にはシャワーを浴びて着替えてから海水浴場を後にしたのであった。


「まぁ、たまの贅沢には丁度よかったわね」

「だな。滞在中にまた来るか?」

「そうね。暇なら来ましょ」


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