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トライアングラー

 宙賊軍の首領、マリガンの死は軍の攻勢のきっかけとなった。

 たった一人突出した技量を持っていたマリガンの死により、宙賊軍はただの烏合の衆と成り果てた。

 そんな軍が正規軍に勝てるわけもなく、宙賊軍は壊滅。掃討作戦も実行され、結果的には周辺宙域の宙賊は壊滅したのであった。

 その立役者となったトウマ達はと言うと。


「えーっと…………色々とやらかしたみたいですね?」

「まぁ、やらかしたわねぇ」

「やらかしたなぁ」

「やらかしたのよねぇ」


 休暇中だったロールを引っ張って適当なレストランに入り、からから笑っていた。


「あの後凄かったのよねぇ。軍からスプライシングに使われてる技術の提供とか求められるし。挙句の果てにはスプライシングを寄越せって」

「V.O.O.S.Tを使いこなせたらやるよって言ったらあっちの凄腕パイロット、全員小惑星帯に突っ込んでったしな」

「結局ティファが軍の技研に暫く講師として通ってたし、こっちはこっちで特許申請とかもしてたし」


 マリガン戦の後は莫大な報酬と共に何個かの駆け引きがあった。

 まず技術提供。これは結構割高で最終的には受けたのだが、まずは漂流物であり既存のネメシスの枠を超えるラーマナを用意するという所で詰まり、更にティファが横二人の言葉を基に思い付きと意地で実現した動力炉直結のV.O.O.S.Tシステムはやはり既存のネメシスのパーツだけでは自壊を招くだけ。

 本当に数世代先の技術だけを先取りしたような形になり、V.O.O.S.Tシステムの実用は少なくとも100年は先になるとの事だった。

 例えを出すとすれば、江戸時代でパソコンの組み方を教えるような物だった。

 技術は理解できても実現できるパーツがそもそも無いという始末。

 そして、そんなV.O.O.S.Tシステムに必要なあれこれは特許申請し、後の自分達がガッポガッポ儲けられるように、とか何とかやってたら、軍の頭の硬いお偉いさんがスプライシングを寄越せと言ってきた。

 なので、乗りこなせたらプレゼントすると言ったら歴戦のパイロット達は全員ピーキーすぎるスプライシングを使いこなせず、軍のお偉いさんは茹でダコみたいになって帰っていった。

 裏ではティファが遠隔で各部の数値を滅茶苦茶にしてたりしたのだが……まぁ、些細な事だ。最後は可哀想なので普通の数値に戻したが小惑星帯に突っ込まれたし。


「まさかジャンクで作ってたネメシスが最強のネメシスって言われるなんて……おじさん達も報われますね」

「……そうね。少しはお父さん達に追い付けたかしら」

「周回差つけて追い抜いたと思うんですけど」


 元々は両親の汚名返上のために始めたネメシス作り。それが意地となり、気が付けばスプライシングは最強のネメシスとなった。

 普通に両親の腕を周回差つけてブッチ切りで追い越すことになった。

 天国のご両親の笑顔には苦笑いも数割混ざってることだろう。


「まぁ、天才メカニックと天才パイロットと天才メンタリストが居るからな。こうなるのも当然だ」

「誰がメンタリストよ」

「ねぇ痛い痛い!! 爪先踏まれるのは痛いのぉ!!」


 メンタリスト呼ばわりされたサラがトウマの足を踏みつける。

 実際、ティファとトウマはサラによる説得とメンタル補修が無ければ心が折れたまま田舎にひきこもっていただろう。

 一番のMVPはサラだ。二人のメンタルを何とかしたというMVPなのだが、彼女はメンタリストが本業なのではない。


「ったく……ねぇティファ。もう一機ネメシス作れない? あたしもパイロットに復帰したいんだけど」

「そうね、作りましょうか。ラーマナ2みたいなのを」

「いや、ラーマナMk-Ⅱだ。異論は認めん」

「あんたのネーミングセンスどっから来てるのよ……じゃあ、ラーマナMk-Ⅱね。流石にラーマナからはスペックが落ちるけど、現行のネメシス以上の性能は保証するわ」

「オッケー。期待してるわ」


 なんかさらっと目の前でネメシスを作る計画が立てられている。

 ロールはそれに苦笑しながら、通話でティファから聞いたこの一連の騒動の報酬の事を思い浮かべていた。

 確か、大型船を買ってネメシスも人数分揃えてなお余るほど。現代で言うところの戦車や戦闘機を現ナマで買える程の報酬が入ったと言っていた。


「はぁ、いいですねぇお金持ちは。こっちは毎月節約してるのに……」

「そこはほら、傭兵の利点よ。死ぬときゃ死ぬけど儲かる時は儲かるのよ」


 笑いながらティファは残っていた飲み物を飲み干すと、立ち上がった。


「さっ、二人とも。仕事の時間よ」

「あいよ。今日の仕事は?」

「最近宙賊がまたこの周辺に出たらしいから、見つけ出して殲滅。いい感じに素人感出して寄せ付けて落とすわよ」

「これだけでリゾートコロニーで一週間は豪遊できるだけのお金が入るなんて世の中ボロいわよねぇ」


 リゾートコロニー。娯楽用コロニーであり、お値段は1泊辺り100万ガルドほど。

 つまり、ロールの年収の半分である。

 そこで豪遊なんてしようもんなら。


「……私も傭兵になろうかなぁ」

「なるんなら歓迎するわ。ウチのオペレーターにでもしたげる。でも、その場合は……トウマを去勢かしら?」

「ん? んん?? どうしてそうなった?」

「ほら、わたし達はちんちくりんだからまだしも、ロールって結構……ねぇ? それで発情されても困るし……」

「しねぇよ!! ったく、とっとと仕事行くぞ!!」

「はいはい。あっ、ロール、ここは払っておくからゆっくりしててね」

「あっ、ちょっと……自分の分は自分で…………あーあ……」


 若さってパッションだなぁ、なんて考えながら騒々しく去っていく3人を眺めるロール。

 自分の分までサラッと支払って出ていった3人はわちゃわちゃしながら港へと向かっていった。

 両親を早くに亡くした天才メカニック、漂流者である天才パイロット。そして。

 ロールはそんな3人の笑顔を思い浮かべ、一つ確信していた。

 きっとあの3人はこれから先も名を馳せ、最強の傭兵となるのだと。

 ──それが現実となるのは、もう少し先の話。

零れ話:スプライシングPRの名前決め


トウマ「ニコイチ機体だからパッチワークって名前付けたい」

サラ 「ラーマナの名前も入れたい」

ティファ「じゃあもう全部くっつけましょ」

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― 新着の感想 ―
パッチワーク・ドラーマナってなんぞと思ったけど、 パッチワーク・ド・ラーマナ なのねーw
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