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殲滅完了

「だぁクソっ!! 藪蛇だったか!!」

「奴さん等、ご丁寧に粘着球が塞いだ場所をぶっ飛ばしやがったわ!!」


 再び粘着球が塞いだ場所を見れば、見事にもう一度そこに穴が開き、援軍であろうネメシスが次々と入ってきていた。

 それに露骨に舌打ちしながらもファイナルスプライシングを飛ばそうとしたユーキだったが、その前に次々と援軍のネメシスが撃ち落とされ始めた。


『全くさぁ! リゾート地に攻撃を仕掛けるって、アイゼン公国って野蛮な奴等の巣窟なのかなぁ!?』

『うわぁ、全弾当たってるぅ……』

『レイトだから多少はね?』

『ああやって穴空いてるなら落としたネメシスは勝手に外に放り出されるでしょ? ならもう出落ちさせるしかないじゃん?』


 そういえばこの戦場、イカれたスナイパーがいるんだった。

 腕部スナイパーキャノンにスペースイグナイターのエネルギースナイパーライフルを取り付け、交互に弾を撃って次々とネメシスを落としていく様は最早ギャグだ。

 次々と落とされては宙域に放り出される味方にアイゼン公国軍残党は明らかに困惑していたが、レイトは止まらない。

 嫁とのバカンスを邪魔された恨みは大きい。


『あ、そうだ! レイトさん、当てないでね!!』

「あっ、ミサキ!?」

『あたしが行く! ユーキは念の為中で監視!』


 そんな射的ゲームが繰り広げられる中、ミサキが一人突出。敵軍の中を潜り抜けて空いた穴から外へと飛び出していった。

 ユーキも後を追おうとしたが、ファイナルスプライシングを見られれば問題になるかも、と思ったサラがそれを止め、ミサキの後を追った。

 宙域に出たミサキは、すぐに外に出た理由を見つけた。


「あ、やっぱり母艦が居た」


 外に出た理由は敵母艦。あそこまで大量のネメシスを送り込んできたのだから数隻は居るだろうと思っての行動だったが、どうやらビンゴだったようだ。

 敵母艦の周りでは戦闘が起こっており、陣営としてはアイゼン公国軍残党と、リゾートコロニー防衛軍に別れているらしい。

 しかし、やはり元々正規軍だったアイゼン公国軍に軍配が上がっているらしく、リゾートコロニー防衛軍は劣勢に立たされている、


『なーる。リゾートコロニーの防衛に何も出てこなかったのはそういう事だったのね』

『あ、あの、サラちゃん? 外宇宙だよ……? 私達生身だよ……?』

『大丈夫だってば。この程度で落ちてちゃ今日まで生き残ってないっての。でも、流れ弾がコロニーに行くのだけは避けたいし……ミサキ、行ける?』


 この場で光の翼、最強の矛であり盾を使えるのはサラだけだ。

 ならば、遊撃はミサキに任せるべきだ。

 行ける? の言葉でそこまで察したミサキは好戦的な笑みを浮かべながら、操縦桿を力強く握りしめる。


「りょーかい、お嬢様。ボーナスは期待してますよ?」

『えぇ。ポケットマネーから出したげる』

「それじゃあ!」


 スロットルペダルを踏み込み、駆け抜ける。


「ミサキ・フジサキ! イグナイトファイター、行ってきます!!」


 この時代に置いては型落ちとも、時代遅れとも言われる航宙戦闘機が宇宙を飛ぶ。

 この世界最強のネメシス、ファイナルスプライシング並の速度でぶっ飛ぶ航宙戦闘機は一瞬で戦場へと飛び込み、弾幕の中を舞いながら戦場の様子を把握する。


「なるほど、防衛軍は下手にコロニーに流れ弾が行かないように気を使って上手く動けないと……それなら、あたしが掻き乱すしかないね」

『なんだあの機体!? 残党軍の増援か!?』

『いや、確か客の乗ってきた船に航宙戦闘機があると聞いたから、恐らくそれだが……この戦場に戦闘機で出るなど危険だ! すぐに下がるんだ!!』


 防衛軍の機体はイグナイトファイターを見て即座にそれを守るために動こうとしたが、相手側の弾幕が厚すぎるせいで上手く行っていない。

 しかし、その中をイグナイトファイターは悠々と舞う。

 時には足のみを変形させて急制動をかけながら真横へスライドし、時には腕だけを変形させてエネルギーを纏った腕部で弾を弾いて。

 戦闘機の天才であるミサキだからこその動きで敵の注意を一気に引いていく。


「防衛軍さん! 見てる暇があったら攻撃してほしいんだけど!」

『…………あ、あぁ! わ、わかった! 全機、あの戦闘機が注意を引いている間に攻撃しろ!』


 ユーキとレイトが見てたらリアルバルキリーだよ、リアルバルキリー! と叫ぶくらいにはトリッキーな動きを繰り広げるイグナイトファイターを見て防衛軍は呆然としていたが、ミサキからのオープンチャンネルでの通信を聞いて即座に動き始めた。

 リゾートコロニーの防衛軍は軍と付くが、その実質はユーキやサラのような腕が良く、人当たりがいい傭兵を金で纏め上げたPMCのようなもの。

 正規軍に比べれば練度は劣るし数も劣るが、それでも注目が明後日の方を向いた正規軍相手なら負けることはない。


『クソッ、あのカトンボめが!! さっきから戦場をウロチョロと!!』

「戦闘機ってそーいうもんだし? ついでに隙見っけ!」

『なっ、これはまさか、エネルギーマシンガン!? せ、戦闘機如きがぁ!!?』


 弾の回避に集中こそしているが、だからと言って反撃できないわけではない。

 一瞬の隙を見つけて機首を敵機に向け、エネルギーハイマシンガンを乱射し、敵を一機落とす。

 しかし、その後隙を狙ってエネルギー弾が飛んでくる。


「よっと。このまま引きつけてーの……スタンドマニューバ! んでもって、ミサイル!!」


 それを一旦避け、注意を引きつけながら飛行。

 イグナイトファイターを追うように照準が合わされ、放たれたエネルギー弾がイグナイトファイターの飛んだ軌跡を彩る。

 その弾は徐々にイグナイトファイターへと迫っていき、あと数秒もあれば照準は完璧にイグナイトファイターに合うという所。

 その段階でミサキはスタンドマニューバ。ユーキから教えてもらったその技を使って急減速。

 弾が明後日の方向へ飛んでいったのを見てから逆方向へ飛び、そのついでにミサイルを放つ。

 機体を回転させながら放たれたミサイルは次々とアイゼン公国残党軍の機体を焼いていく。


『クソッ、なんなんだあの戦闘機は!! 目が後ろにでも付いてんのか!?』

『戦闘機に、あの後ろの光の翼を生やした白い機体…………どこかで、見たことが……』

『戦場に介入して来ない機体など無視しろ!! 今は目の前の戦闘機だ!!』


 しかし、数が多い。

 明らかに敵方の戦艦の艦載量を無視した数の機体がこの宙域にいる。

 という事は、ネメシス以外は一度撤退したか。

 ただ、どちらにしろ、だ。

 ここまで数が多いと、イグナイトファイターの弾薬料だけでは敵を倒しきれない。

 それに、推進剤もだ。

 イグナイトファイターは空気を取り込み、その中の酸素を抽出、燃焼する事で推進剤を節約する事が可能だが、宙域においてその機能は動いちゃくれない。


「くっそぉ、流石に単騎じゃキツいかぁ…………お嬢様!! オーディンパックを射出するから、援護お願い!!」

『了解。オーディンパックとのドッキングまでは邪魔させないわ』

「感謝します! という事で、オーディンパック射出をパイロット権限で申請!」


 ホロウィンドウに手のひらを叩き付け、強化武装の射出を申請する。

 それを受け取った、ハインリッヒ家の連絡船内にある2種の強化装備の内の一種が飛び出し、宙域へ。そのまま自動操縦でイグナイトファイターの元へと飛んでくる。


『なんだ、また何か飛んできたぞ!?』

『戦闘機!? 2機目か!? えぇい、撃ち落とせ!!』

『させるかっての!! フェンサー、守ってやりなさい!!』


 自動操縦故にあまり複雑な動きができない強化武装。戦闘機の形をして飛んでくるオーディンパックはあわや撃ち落とされそうになるが、それをフェンサーウィングが守り通す。

 その間隙を縫ってイグナイトファイターがオーディンパックに接近。そのまま追従する。


「ドッキングシークエンス、起動! オーディンパック、接続!」


 ミサキの言葉と共にドッキングが始まる。

 オーディンパックが飛びながら分離し、いくつかのパーツに。素体である戦闘機部分はそのまま帰還していき、残っていたパーツ。オーディンパックの本体とも言えるパーツがイグナイトファイターに接続される。

 両翼の先端にはミサイルポットを兼ねた追加ブースター。エンジンを兼ねた両脚部にはミサイルポット及び、追加推進剤が備えられた増加装甲が。両腕部には小型エネルギーマシンガンが内蔵された増加装甲が。

 そして、機体の本体には二門の旋回式エネルギーライフルとこれでもかと言うほどの増加装甲に見せかけたミサイルハッチ。

 正しく全身ミサイルハッチの高火力、重装甲の強化形態。


「イグナイトファイター・オーディンパック、起動成功!!」


 追加ブースターにより更なる加速力を得たイグナイトファイターが飛ぶ。

 その速度は先程までのイグナイトファイターよりも圧倒的に速く、ネメシスの旋回性能ですらイグナイトファイターを捉えきる事ができない。

 オーディンパックの弱点は、全身ミサイルハッチになり重量が増す事で地上戦ができなくなる事ではあるが、宙域であるのならば関係ない。

 敵ネメシスは残り25機。


「これなら、全機リーサル圏内!!」


 その程度ならば、オーディンパックのミサイルでマルチロック、全機殲滅が可能だ。

 マルチロックシステムが起動し、モニターに映るネメシスが一気にロックオンされていく。

 電子音とともに映るマーカーを全て目視で確認。敵の攻撃を避けながらマルチロックがなされている事を確認。

 ネメシスにフレアなんて物は装備されていない。

 ならばここで放つミサイルは、確実に当てられる。


「マイクロミサイル!! ブチ抜け!!」


 イグナイトファイターがその場で回転しながら、ミサイルハッチを開放。そして、全てのマイクロミサイルを発射する。

 白煙と共に放たれたミサイルはマルチロックされた敵ネメシス25機へと迫っていく。


『何だこのミサイルの量は!?』

『全機対空防御!! 一発でも当たれば落とされるぞ!!』

『無茶を言うな! 何発あると思っ、ぎゃあああああああ!!?』

『畜生!! 時代遅れの戦闘機がああああああ!!』


 正に地獄絵図。

 ネメシスでは追いつけない速度で飛ぶイグナイトファイターから放たれたミサイルの数は、100を超える。

 その数のミサイルをネメシスだけで凌げるわけもなく、次々とネメシスが爆発四散していく。

 だが、それでも。


『クソッ、あの戦闘機め!! よくも、よくも同士達を!!』


 生き残った者がいた。

 運良く己に飛んできていたミサイルが全て迎撃されたのだろう。

 だが、幸運もそこまでだ。


『死に晒せ!!』

「甘い!! ピンポイントエネルギー展開!!」


 報復にと放たれるエネルギーマシンガンの弾は全て腕部に展開したピンポイントエネルギーで相殺する。

 そして、弾切れした所で。


「残ったミサイルも全部オマケで! フルブラスト、持ってけぇ!!」


 エネルギーハイマシンガン、両腕部内蔵エネルギーマシンガン、旋回式エネルギーライフル、マイクロミサイルが一斉に放たれる。

 たった1機のネメシスに対して放たれた過剰なまでの火力は、避ける事も迎撃する事も叶わず。

 生き残った機体はこの一撃で蒸発したのだった。


「残存戦力無し! 任務完了、帰還します!」

『ご苦労様。という事で、防衛軍の人達。後片付けよろしくね』

『あ、あぁ。分かった。助力、感謝する。おかげでこちらの被害は最低限で済んだ』

『いいのよ。困った時はお互い様だし』


 周囲に敵はなく、後は残されたアイゼン公国残党軍の船を尻目に、サラとミサキは己の船に帰還したのであった。

 あとがきになります。

 今回は更に出てきたイグナイトファイターの追加装備、オーディンパックと設定だけ作ってあるグングニルパックについてです。



・イグナイトファイター・オーディンパック

重武装重装甲というコンセプトで作られた、イグナイトファイター専用の強化装備。

全身武器庫のような状態となり、一度に放てるミサイルの数は100を超えるという正しく化け物火力。

また、追加のブースターを両翼と脚部に装着するため、宙域であれば全力のファイナルスプライシングよりも速く飛ぶ事が可能。

しかし、追加装甲を纏う関係上、ハーフウェイ形態への変形が不可能となり、両腕部のみ展開が可能となるため、小回りは利かなくなってしまう。

武装は両翼部追加ブースター内蔵マイクロミサイル、両脚部追加装甲内蔵マイクロミサイル、両腕部追加装甲内蔵小型エネルギーマシンガン、背部増加装甲内蔵マイクロミサイル、背部二連旋回式エネルギーライフル。


・イグナイトファイター・グングニルパック

素体の純粋強化というコンセプトで作られたイグナイトファイターの強化装備。

両脚部に追加の推進剤が内蔵された増加装甲が取り付けられ、両翼の付け根から本体にかけて増加装甲及び追加のマイクロミサイルが装備されている。

本形態ではハーフウェイ形態に変形が可能。また、両翼の付け根に存在する装置から光の翼を展開することも可能。

光の翼の強度はV.O.O.S.T持ちには劣るものの、最低限の防御能力と最大限の攻撃力及び加速力を与えている。

武装は本体部装甲内蔵マイクロミサイルと光の翼のみ。

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― 新着の感想 ―
あれ? これコロニー守った報酬で、来る前より資産増えるのでは……?
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