不動産転がしの才能
「さーて。んじゃ、ホテル行きますか。ちなみに部屋は俺とニア、レイトとカタリナさん、サラとミサキとロールさんで3部屋取ってある」
「なんでその分け方?」
「いや、普通に夫婦2組とチームA(余り物)で」
『独り身で悪かったな!!』
独身のロリとメイドと役員が何か言ってる。
「っつー事でホテル行くか。サラ、あとはヨロシク」
「あんた、まだ高級なトコのアレコレに慣れてないのね……はいはい、分かったわよ。カタリナ、一応アンタも対応して」
「はーい。あ、ちなみにサラ義姉さん。メルへのお土産って何がいいと思う?」
「んー…………雇用契約書?」
「それ昨日渡してきた」
「仕事が早いわね……」
どうやらカタリナによるメル引き抜きはマジで実行されたらしい。
なお、メルも割とノリノリでそれを受け取って今日からは引き継ぎ作業を行っているのだとか。
送られてきた大金はメルをハウスキーパーとして一生雇ってもあまりある程だった。
「ちなみにユーマさんや。今から泊まる部屋、お幾ら万円?」
「ん? あー…………まぁ、とりあえずレイト。これを飲んで落ち着いてから聞いてくれ」
「あ、うん。これなに?」
「マンゴスチンジュースだって。そこで売ってた」
「ふーん。あ、美味しい」
「で、泊まる部屋は大体3部屋合わせて1日900万なんで、合計で6000万は宿泊費だけでぶっ飛びましたね」
「ブッ!!?」
「実は取った部屋全部スイートでさ。3つスイートルームがあるホテルがあったからそこ全部埋めたった」
「馬鹿じゃねぇの!?」
「ははは。いやまぁ、今回は散財が目的だからさ。それに、やり過ぎたらまた稼ぎゃええねん」
宿泊費だけで6000万。精々数百万程度だろうと思っていたレイトは思わず口に含んだジュースを吹き出してしまった。
ちなみにレイトがユーキの事をユーマと呼ぶのは、Y-UMAという誰かが使っていたゲーム内での名前で呼んだほうがボロが出ないからだとか。
「さ、流石にそこまでの値段なら僕も払うよ!? えっと、1部屋分だから2700万かな!?」
「いや、払わなくていいって。ぶっちゃけ、サラが稼いだ金って2桁億後半もあってだな。この程度じゃ痛くも痒くもない」
「…………えっ、それって50億は超えてるって事?」
「まぁぶっちゃけると。で、ついでに言うと俺とニアの貯金が70億ちょっと。サラも20億はあるんだよ。だからマジでこれ以上の金は害にしかならんの」
「はぁ!? 何その贅沢!?」
「ははは。だからまぁ、今回の泡銭は使い果たす気で贅沢してるってわけ」
キングズヴェーリ討伐辺りから3人の預金は壊れ始めた。
何せ、賊の基地をぶっ飛ばせば億。ズヴェーリを倒せば数千万。害虫駆除でも数千万。それを一時期は休む事なくやっていたわけで。
更には1年半も貴族の専属に近い状態で仕事をやり続け、ついでに特許料も諸々入ってきて。
気が付いたらこんな事になっていた。
ちなみに、エネルギーマシンガンの特許料のおかげでニアの口座には生活費以上の金が毎月振り込まれている。
「僕でもこの間の謎送金でやっと10億超えたばかりなのに……?」
「うん。今ならまだ、ただの富豪で済むけど、不動産転がしの金まで入ってくると変な所から目ぇ付けられかねんからなぁ」
だから、今回は偶々上手く行った。調子に乗ってカジノに行ったら全部溶かした、という馬鹿を演じねばならないのだ。
「まぁ、俺等なんてまだまだよ。世の中にゃ兆クラスの資産を持ってるやつもいるし。100億超えてないだけマシだ」
今まで稼いだ金が余裕で500億超えているのは言わないお約束だ。
「張り合わないでよそこで……」
「…………元アイゼン公国の領地を襲って星一個実効支配した後にそれを売れば、兆行けるか?」
「クソみてぇな闇落ちルート見つけんじゃないよ」
もうそこまで行くと普通に犯罪者なのでレイトがガチ戦闘の準備をする事になる。
流石にそんなクソみたいな闇落ちはするつもりないが。ジョークである。傭兵ジョーク。
「…………ねぇ、えっと、ミサキちゃん、だっけ?」
「はい?」
「後ろから聞きなれない単位のお金が聞こえたのは、気のせいだと思う?」
「…………気のせいと思いたいですねぇ」
なお、野郎共の少し前を歩いていたザ・一般人とただのメイド(ハインリッヒ機兵団・独立航宙部隊隊長)は、知り合い達の預金のスケールのデカさに恐れおののいていた。
ちなみにミサキに関しては、休日にズヴェーリ退治をしに行くだけで億は現実的になるし、なんだったら高給取りでもあるので実は貯金はとっくに3桁万後半に至っていたりする。
貧乏と毒親に嘆いていた少女はこんなにも立派になりました。
それを知らない役場の職員は自分よりも一回り歳も体も小さいメイドさんに親近感を抱いていた。
真実を知れば裏切られるとも知らずに。
「あ、サラ義姉さんサラ義姉さん」
「ん?」
「そのー……不動産転がし、このままお願いしてもいいかな? 予算1億で」
「いいけど、減るかもしれないわよ?」
「いいのいいの。上限は50億でよろしくね?」
「そう超えないと思うけど、まぁやっとくわ」
ちなみに5年で1億は50億に化けました。サラは己の不動産転がしの才能に恐怖し、それ以降、どうしてもという時以外はやらない事を誓った。




