表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/250

バカンスだよ大体全員集合

 忘れているかもしれないが、ユーキとニア、そしてサラは共同で持っている資産がある。

 簡潔に言えば不動産だ。サラが勉強がてら、と転がし始めたソレは、既に転がし始めてから数年が経過した。


「えー、という訳で。利益がこんな感じになりました」

「…………えっと、何倍?」

「……ザッと見積もって、10倍以上」

「何があったの本当に!? というか億単位で予算渡してたわよね!? えっ、それ10倍になったの!?」

「なんでか知らないけどそうなったのよ! なんか適当に買った土地が気付いたらとんでもない値段になってて泡吹くかと思ったわよ!!」

「俺達って何で金だけは何をどうしようが不自由しねぇんだろうな、ホントマジで」


 ユーキの言葉にニアが苦い顔をする。

 彼女はこの中で唯一自転車操業で火の車を経験してきた人間だ。既にそれも5年近く前の話になりつつあるが、あの頃の苦労は一度も忘れた事はない。

 しかし今は金が余って仕方ない。

 ユーキ、ニアの共同財産は3世代後の子孫すら満足に暮らせる程で、サラは2世代後程度にまで落ちるが、それでも子孫が困らない程度の貯蓄はある。

 それに加えて、2桁億の3人の共同資産だ。余程散財を意識しない限りこの金を使い切るのは難しい。


「ついでに白状すると、コソッとレイト名義でも金突っ込んでたんだけど」

「何してんだおい」

「あ、勿論金はあたしのポケットマネーよ? そしたらそっちも成功して5倍近く稼いじゃって……今頃レイトとカタリナの口座に身に覚えのない大金が送金されて泡吹いてるかも♡」


 その白状の代償としてユーキとニアのゲンコツがサラの頭に突き刺さった。

 何も入ってない物を叩いた時特有の音がした。


『謝ってこい』

「うっす」


 知らない内に資産転がされて知らない内に大金が口座に送金されているとかどんなホラーだ。

 というかコイツはなんでレイトの口座を知っているんだ。給料振込用か。権力でチラ見したか。

 真実は分からないが、すぐにサラはレイトとカタリナに通話を繋げ、全てを白状。

 レイトはドン引きしてたしカタリナは絶句してたが、まぁタダで金が貰えるんなら……と受け入れてくれた。

 ちなみにこの金の一部はレイトとカタリナがメルを本格的に引き抜いて専属のハウスキーパーにする予算として使われたとか。


「さて。じゃあ……この資産、どーする?」

「どうするって言われても……」

「貯金か……?」

「そうよねぇ。けど、あんまし貯め込んでもいいことないかもしれないわよ? 金の匂いに釣られて変なのが来ないとも限らないし」

「いやいや、まさか」

「あたしはまだしも、あんたらの経歴って驚くほど真っ白なのよ? そっから勘付かれて変なのが寄ってくる可能性が……」

「もー勘弁してよぉ……また名前変えたくないわよ、わたし……」

「俺も……せめて姓名だけでも残してぇわ……」

「親からもらった名前だものねぇ……」


 ユーキは元の名の姓名の方を残し、ディッパーの名は北『斗』七星→ビッグディッパー→ディッパーという連想ゲームから。

 ニアは元の名の、あまり呼ばれなかった愛称の方を残し、フローレスは元の姓名を少しもじっただけ。

 そうやって何とか元の名前を残しながらも新しい名を得たのに、それすら失うのは勘弁してほしい。

 ならば増えすぎた資産は減らすに限るのだが。


「流石にネメシスのパーツとか船とか買って散財は違うだろうし……」

「現物残るのはなー。それで目ぇ付けられるかもしれないしな」

「んー…………寄付とか……いや、無理ねぇ。どうすれば……パーッと使っても不思議じゃない上に現物が返ってこない場所なんて…………」


 うんうんと3人で悩む。

 が、サラが最後に零した言葉で、ふとユーキとニアが視線を合わせた。

 そういえば自分達……というよりもサラが唯一金を増やせず、散財する才能を見せた場所が1個あった。

 あの時はまだ今ほど金は無かったのでのめり込む前に辞めたが、今なら泡銭を使い切るという大義名分がある。

 ならば。


『そうだ、カジノ行こう』

「へ?」


 こうして、急遽リゾートコロニー行きが決定したのであった。



****



 ユーキは通算3回目、ニアとサラは2回目のリゾートコロニー。

 かつて来たときと比べてどこかが大きく変わったという事は無いが、久方振りのリゾートコロニーにはどうしてもテンションが上がってしまう。


「いやー、久しぶりに来たわね」

「だな。最近はスローライフばかりで遊びに行くこともしてなかったし丁度よかった」

「カジノで負けたいから来るなんて馬鹿、あんたらくらいよ」


 そこはまぁ、ほら。金の魔力は怖いということで。

 傭兵時代とは違い、ニアは最近ココノエで買った麦わら帽子を被り、服もちょっといいブランドの白ワンピースを着ておしゃれしている。

 ユーキの方もちょっといいブランドのシャツとズボン、ついでにそこそこ高級なサングラスをかけてリッチ感をアピール。

 サラもサラで貴族時代の服を引っ張り出してきての、場所に負けない雰囲気を作っている。

 そして。


「ね、ねぇティファちゃん!? 私、なんで連れてこられたの!? 昨日まで何も知らずに仕事してたんだよ私!!?」

「おっとロール。わたしはニアよ。そこは間違えないように」

「あ、ごめんね……じゃなくて!?」

「散財に協力してもらうだけよ。滞在費も食費も全部わたしが出すからモーマンタイ」

「そんな問題じゃない気がするんだけど!?」


 ニアとは関係無い筈の一般人、ロール参戦。

 彼女は昨日まで仕事を普通にしており、いつも通り帰って安酒一杯……と思ったところをニアに拉致られた。

 職場はサラから連絡を受けたミーシャの権力でどうとでもなった。

 ついでに。


「まだロールさんは分かるけど、僕達までお金出してもらってよかったの? 別に出すのに」

「そ、そうだよ。この間、サラ義姉さんからとんでもない量のお金を送金されたのに、リゾートコロニー代を出してもらうなんて」

「いーのいーの。散財が目的だからさ。急に大金が送られた事の迷惑料だと思ってくれ」

「お金貰った迷惑料is何……?」

「俺も分からん」


 レイト&カタリナのムロフシ夫妻も参戦。

 2人に関しては、サラがカタリナを拉致り、何事だと付いてきたレイトの肩にユーキが手を回してそのまま拉致った。

 ムロフシ夫妻の貯金も相当な量だが、ディッパー夫妻は彼等に金を出させることを許さなかった。

 ──ちなみに、結婚した事でニアの名前はニア・F・ディッパーとなり、カタリナもカタリナ・B・ムロフシとなっている──

 さらにさらに。


「そっちの3人はわかるけど、なんであたしまで連れてきたんです!? あたし、ミーシャ様から連絡船に荷運びするように仕事受けてたはずなんですけど!? なんで気が付いたらコンテナの中にぶち込まれてリゾートコロニーに拉致られてるんですか!?」

「騙して悪いけど散財のためよ」

「真正面から言ってくださいよ!? あたし、そこら辺は図太いんで言われたら喜んでついていきましたよ!? コンテナの中にぶち込まれた時割と怖かったんですよ!?」

「喜んでついてくるんだ……」


 一端のメイドとしてしっかりと成長してきているミサキも参戦。

 ミサキは今年で15歳。体の成長は幼少期の栄養失調によって順調とは言えないが、最近はカタリナよりも少しだけ背が大きくなった。

 どことは言わないが、一部のサイズもこのメンツの中では一番大きい方だ。それでも巨、普、貧の中では貧に分類されてしまうが。

 そんな彼女はサラの私怨によってコンテナに後ろから蹴られて放り込まれ、リゾートコロニーに拉致られた。

 何も最近実家の風呂に一緒に入ったときに可哀想な物を見る目で見られたからでは断じてない。その視線が胸に向いてたのも決して関係無い。

 メイド教育により身につけた敬語を使って怒鳴り散らかしていたが、サラは適当にスルー。メイド服の彼女に、取り敢えず侍女ヨロシク、とだけ告げて彼女の意見はガン無視した。

 ちなみに彼女はユーキ達の件が終わってから1月後あたりに雇い主であるミーシャからの命令で学校に通い始めている。

 やはり学校で学ぶべきことは学校で学ぶべきだと、前当主のミハイルから言われたためだ。

 そんなわけでこのメンツが、今回のリゾートコロニーを楽しむメンツとなった。

あとがきになります。

 今回からはリゾートコロニーでの楽しい一幕の後日譚となります。

 一部未回収だった伏線(不動産転がしの結果)とかを簡単に回収しながら明るい話を続けていく予定です。

 今回は8話を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ