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戦闘開幕

 ティウス王国とアイゼン公国の戦争は勃発した。

 兼ねてより噂となっていた二国間の戦争。表向きには外交問題。アイゼン公国側からの難癖を基に宣戦布告は行われ、ティウス王国はこれを受け入れるしかなかった。

 それが、今から1時間ほど前。

 既にアイゼン公国軍のアブファルとグラーフが率いる艦隊はティウス王国の防衛線に対する攻撃部隊として組み込まれた。


「密偵からの情報によると、ティウス王国側の戦力は船が110隻。その内、王国軍は30隻程度。他は周辺の有力貴族が戦力を出したようだな。ネメシスの数は不明だが、1隻10機のネメシスを積んでいると考えれば、1100機か」

「対してこちらの戦力は船が83隻。対してネメシスは約700機。まともに戦えば勝機はありませんな」


 アイゼン公国軍は多方面からの侵攻を目的として部隊を配置したため、この一番防衛が厚い宙域における戦力比はあまり考えたくない状態となっていた。

 普通に戦えば間違いなく負ける。核兵器でも使えば話は別だが、そうなればこの銀河中の国から制裁を受けるのは確実であり、それにより国が弱体化すればハイエナ共が群がってくるだろう。

 そんな絶望的とも言える戦力比。

 だが、相手の裏から攻撃を仕掛け、戦力を一気に減らせる手札があれば別だ。

 

「お前の仕事は分かっているな? 奴等のど真ん中にハイパードライブし、そのまま敵陣をかき回せ」

「……わかってる。言われずともやってやる」


 ユニバースイグナイターのスペックは捕まったその日に開示させられている。

 故に、ユニバースイグナイターが単騎でハイパードライブが可能な事はバレているし、この作戦とも言えない作戦はその機能を基に組まれている。

 だが、やらねばならない。

 

「補給は、そうだな。奴らの戦力を100機は削るか、推進剤が残り1割。こちらに戻ってくるための最低限の推進剤のみになったら許可しよう。お前が居なければ戦線が瓦解するかもしれんからな」

「……チッ、やってやるよ」


 概算でも敵戦力の1割を単騎で削って来いとアブファルは言う。

 普通であれば無理だが、トウマはやれる。やれてしまう。

 実際に、内心では慎重に戦えば100機はやれるな、とも思ってしまっている。

 

「では、作戦は今から10分後だ。それから1分後に我が軍は攻勢を仕掛ける」

「その間にかく乱して来いってんだろ。やってやるよ」

「うむ、では、働きに期待しているぞ」

「……健闘を祈る」


 アブファルの声に対して殺意を抱き、グラーフに対しては何も思わず、トウマは一人作戦会議室を出て行った。

 それを見送ってからアブファルも席を立ち、ブリッジへと向かう。グラーフも、自分の船に戻るため、連絡船の方へと急いで向かう。

 最早アブファルは言葉で言っても止まらない。既に奴の頭にあるのは、自分の華々しい出世街道だけだろう。

 グラーフは生贄同然の扱いをされるトウマに対して心の中では謝罪しながら、しかし表面上は軍人としてのソレを張りつけ、自分の船に戻る。

 そしてトウマは一人、格納庫へ向かってユニバースイグナイターに乗り込んだ。

 周りには可哀想な物を見る目でこちらを見る整備兵や、にやにやとトウマの死に様を期待する兵士がいる。

 ティファの姿は、無い。

 

「……クソッ、落ち着けよ俺。生き残ればいいんだ……キングズヴェーリん時よりもマシだろうが……!!」


 無意識に震える右手を左手で抑え込む。

 ティファとは、部屋を出る際に言葉を交わした。

 絶対に帰ってくる、と強がった言葉を投げかけて。そしてティファは、待っていると涙を浮かべながら頷いた。


「男だろ、俺……! 振り向くな、前向け……! 女の子の心一つ守れず、パイロットが務まってたまるか……!!」


 一人言葉を漏らして己を鼓舞する。

 未だ震えが収まらぬ手で操縦桿を握ると、通信が来た。どうやらこの船のオペレーターからのようだ。

 それに出ると、メインモニターの片隅にこちらを可哀想な物を見る目で見ている女性のオペレーターの顔が映された。

 

『作戦開始まであと1分です。その……』

「いい。それ以上の言葉はいらない」


 このオペレーターとは模擬戦の時にこちらの管制をしてくれたため、一応少しだけ会話をしたことがある。

 だが、そんな人物との会話なんて必要ない。

 だが、言う事はある。

 

「ティファとロールさんの身柄には細心の注意を払うんだな。何かあったら、俺はこの船を落とす」

『そ、そんな……』

「恨んでいる対象がアブファルだけかと思ったか? 違うね。俺はアイゼン公国軍そのものを恨んでいる。もし俺から首輪が無くなったら、アブファルも、アンタも、この船に居る全ての人間も。この戦場にいるアイゼン公国軍の人間をみんな纏めて殺してやる。だから、人質に扱いには常々気を付けろ。掠り傷一つでも見つければ、俺は容赦しない」


 そのための力は、隠している。

 アレはティウス王国に対して向けたくない。

 レイトとサラが敵に出てきたら、ちょっとどうなるか分からないが……

 少なくとも、この戦場にハインリッヒ伯爵家とビアード男爵家の人間が居ないことを祈るしかない。

 

『さ、作戦時間です。発艦、どうぞ』

「…………トウマ・ユウキ。ユニバースイグナイター、出るッ!!」


 そして、ティウス王国がネメシスを展開して敵襲に備えて、アイゼン公国軍が攻撃に出ようとしている中。両軍の射撃の有効範囲外でユニバースイグナイターが発艦した。

あとがきになります。


Q:トウマがこの戦闘で死んだらどうなる?

A:ティファが大人しくアイゼン公国に従うフリをして裏でパイロットAI(名前はトーマ)を組んでロールの事もお構いなしに脱出、その後はアイゼン公国の星やコロニーを無差別に核よりヤバい物で爆撃する壊れた殺人マシーンになります。

しかもアイゼン公国の戸籍データとかにアクセスしてアイゼン公国の人間を探して宇宙の果てまで追って皆殺しにして、全部終わったら自害します。

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