ながいきしろねこ
おはよう諸君、ただ永く生きただけの猫わたあめだよ!
今日はご主人のはなしをしようかな、、、
ねむい、、、ひさしぶりに思いだしたよ。いい夢だった。
そうだ、わたしとご主人の話をしよう。まあ気楽に聞いて欲しいな。
わたしの名前はね「わたあめ」さ。
この国が成立する前から生きているんだ。
ふふっ信じられないって顔してるね。
それでいいよ、何でも疑えとは言わないがある程度は疑うことも大切さ。
、、、ご主人は困っていると聞いたらすぐに行動する、そんな人だった。
わたしとご主人が会ったのは雨の日だった。
生まれたばかりでね、食事を摂れずに倒れていたのさ。そこでご主人にあったんだよ。
「おや、こんなところで、、、可哀想に、私はこれでも偉いからね、少なくとも食事を摂れないということはない安心していいよ。」
(たすかったの、、、?)
「あら、安心したのかしら。大丈夫、少ししたら元気になるわ。」
(ごはんのにおいがする!)
「おや、起きたのか。焦って食べる必要はない、落ち着いて食べるといい。」
(あったかい、おやすみなさい)
「寝てしまったか、、、しっかり休めよ。」
(あかるくなってる)
「おはよう。やはり名前が無いと不便だな、、、『わたあめ』はどうだろう。最近、国に入ってきた菓子の名前でね、特徴を掴んだいい名前だと思わないか。」
「いいですねぇ。さ、わたあめちゃん、ごはんですよ。」
(おいしい、なんでわたしなんかに?)
「不思議そうな顔をしているな。目の届く範囲に君がいたそれだけだよ。」
「さすがですこと。世話は手伝ってもらいますよ、主様」
私はね、当時の国の最高権力者に次ぐ地位を持っていた公爵さまに拾われて生き延びることができたんだ。
このとき彼らが何と言っているか分からなかったのだけど、なぜか安心していいと思ったんだよ。
そうしてご主人と二年ほど暮らしていたんだ。その頃にはご主人様たちの言葉を完全に理解していた。
「ただいま、わたあめ。」
(おかえりなさい、ご主人)
「今回の出張で外国に行ったんだ、風習も食事も違っていて驚いたよ。話を聞いてくれるかい?」
(聞かせて!ご主人!)
「やはり理解できているような気がする、、、まあいい。まずはわたあめが知りたいであろう食事から話そうかな。この国は魚をよく食べるだろう?けどその国では海の魚は食べないんだよ。海は神さまのものだから、海のものは食べてはいけないらしいよ。不思議だよね、、、他にも、、、」
(そとのくにかぁ、せかいはひろいんだ!)
私は平和に暮らしていたんだよ。それも長くは続かなかったけどね、、、
何があったのかだって?
呪い、知っているかい?
ご主人は優しかったけど、それ故に嫌いな人もいたんだよ。
かけられた呪いはね、相手の心が聞こえてくるというものだった。
くだらないと思うかい?
ヒトはね、嫌われている嫌がられていると分かって相手に優しくすることはできないのさ。
聞こえた心が本心だったのかは分からないけどね、、、
これより公爵閣下の葬儀を執り行います。皆さまご起立ください、、、
(ご主人、、、なんで、、、)
ご主人はね、どんどん衰弱していったんだよ。そして亡くなってしまった、人の心が聞こえるというのは苦しいものだったのさ。
うん?なんで聞かせてくれるのかだって?似ていたんだよ、ご主人にね。
そうだ、忠告しよう。君もその力を持て余しているだろう?
完全に心がキレイな人なんていないんだよ。それに相手を完全に理解することもできないのさ。それを分かって生きていくのがいいと思うな。
ただ永く生きただけのねこからの忠告さ。