オブジェです!?
◇◆◇オジサン◇◆◇◆◇◆◇セツメイチウ◇◆◇
「ーーそんな訳で、この兵士さんがスカーフを取り戻してくれたんです。全ては俺の、不注意だったんです。だから、どうか兵士さんを叱らないでやって下さい。頼んますっ!」
そう言って、何度も頭を下げるするおじさん。その話を聞いていた騎士様が一度目を瞑り、再び開くと穏やかな視線を私に向けて、言ってきた。
「そうか……君は身の危険をかえりみず、国民のために命を掛けてスカーフを取り返し、それを守ったという訳か」
「あっ……あのっ……(いえ……命ってそんな、私はただ無我夢中で……)」
何だかまだ、上手く言葉に出来ない。そんな私に騎士様は、周りにいる全ての人が驚くような行動をしてきた。
なんと、一般兵の私に向かって頭を下げてきたのだ。
「すまない。そんな理由があったとは知らず、叱責をしてしまってた事を許して欲しい」
「いえっ……あのっ……そのっ……(ひょえぇぇぇっ! そんな! 私ごときに騎士様が頭を下げないでくださいぃぃっ!)」
突然のことに驚きすぎて、オブジェになってしまった私。それはもう見事にカチコチで、息をすることも忘れてしまうほど、固まってしまったのだ。
そんな私に騎士様は顔を上げて、こんな事を言ってきた。
「僕は君のような志の高い兵士と同じ時期に、同僚として王宮に使えることを誇りに思う。これからも、共に国王陛下の為、国民の為に尽力しようじゃないか。よろしく頼む」
っと言って、フワリと微笑む騎士様。その笑顔が優しすぎて、その言葉がありがたすぎて、心臓までも無機物になりそうだった。
そんなオブジェな私から視線を外し、サリッシュ隊長と会話を始めた騎士様。どうやらモンスターの後始末を指示してるみたい。
実は、この世界のモンスターには、額や胸辺に魔法鉱石がはまっている。その魔法鉱石を砕くと、モンスターは粒子となって消滅していくのだ。
逆に言えば、倒したモンスターをそのままにしておくと、自然に治癒してしまい、再び動き出してしまう。そんなわけで、モンスターを倒した後は、魔法鉱石を砕かないといけないのと言うことなのだ。
サリッシュ先輩との話を終えた騎士様は、私の方に向き直った……かと思えば私を通り越して、後方に視線を送り、声を出してきた。
「では勇者殿、一度宮殿に戻りましょう」
ーーふぇっ? 勇者……殿? えっ? ……えっ?
そう言えば、勇者様の召喚に成功したという報告があったのを思い出す。そこで私は振り向くと、目の前には戦場を駆け回っていたお方が立っていたのだ。
よく見れば、私と同年代くらいで、身長は私よりもちょっと高いくらい。自信に溢れたような眼差し。小顔ながら、筋の通った鼻に唇は右端をニッと上げ、私に笑顔を向けていた。
一目見ても、快活そうなのが分かる顔立ち。母性をくすぐられる様な、幼さが垣間見える笑顔で私の事を、見つめていたのだ。
――ふえっ!? ふぇぇぇぇぇぇっ!? ゆっ、勇者様と目が合っちゃったっ! どどどどどうしょぉぉぉっ!
とは言え仮面に阻まれ、勇者様からは私の目が見えていないないのだけど。
そんな勇者様は、突然大きく鼻から息を吸い込み、そしてゆっくりと吐き切った。その後、再び笑顔になり、短く言ってきた。
「いい、フレグランスですね」
その笑顔が眩しくて、軽く意識が飛んでいきそうになってしまう。初めて聞いた声だけど、たったそれだけの言葉だったけど、何だか元気を貰えそうな印象があった。
でも……
――ふれぐ……らん……す? って……何?
聞いたこともない言葉に、戸惑う私。きっと、勇者様の世界の言葉なのだろうけど、どう返せばいいのか分からない。
再びオブジェになった私に、じゃぁと言って右手を上げ微笑む勇者様。その笑顔がとっても眩しくて、ステキだった。
その後、騎士様達と一緒に王都に戻って行く勇者様を、固まったまま見送る私だった。
※ちょこっとトーク※
「しかしだ、よくヒヨリは、あの炎の中に飛び込めたな」
「えと……無我夢中だったから」
「うぅむぅ。あの勇気はなぁ、見習わなければなぁ」
「おじさんの大事なスカーフみたいだったからね」
「それで、暑くは無かったのか?」
「おぉぉっ。私もぉ、知りたいぞぉ」
「ちょっと息苦しかったけど、全然暑くなかったよ」
「そうか、暑くないのか。ならば次は私も飛び込んでみよう」
「だなぁ。何事もぉ、経験だぉ」
「やめとこうね、二人とも。怒られちゃうから」
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