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キュンする勇者様!!  作者: 葉月いつ日
第一章:勇者様、召喚です!
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キュンする勇者様!?



 ふたつの輪っかがある太陽が西の空に傾き、世界が優しい朱色に染まり始めた今は夕刻。


 家路を急ぐ人や、これから仕事に出向く人が行き交うここは、コスドーリア王国の王宮前にある噴水広場。


 その中心にある、噴水の縁に座る私の横で、夕刻の優しい光に照らさた勇者様が、話を聞かせてくれている。




 ◇◆◇ユウシャサマ◇◆◇◆◇◆◇カイソウチウ◇◆◇




 その日、俺はサッカーの大事な試合があったんだ。


 あぁ、サッカーってのはな、人の頭よりも大きいボール……球? を蹴って、ゴール? ……は分かんねぇや。そこに球を入れて、得点を争うスポーツ? 競技だな。


 俺の高校……えっと、チームはその競技で有名な所だったから、負ける訳にはいかなかったんだ。


 まぁ、結果は俺のゴール……んん……得点とアシスト……手助けで、何とか勝つことが出来たんだけどさ。


 それでも、大変な試合だったのは間違いなくってよ、試合が終わった後の疲労感は、ハンパなかったなぁ。


 その試合の帰りのことだ。家の近くの交差点で、信号待ち……えと、信号……ん〜〜〜っ……なんて言ったらいいか分かんねぇからいいや。


 とにかく、俺はそこで考え事をしていたんだ。もっと強くなりたい、もっと皆んなを助けたい、もっとチームの力になりたい……ってさ。


 そう強く思った時だった、どこからか、くぐもった女性の声が聞こえてきてんだ。


 ――力にぃ、なってぇ……くれないかぁ。


 次の瞬間だ。突然地面から魔法陣が……えっとな……こう、ブワァァァッて現れた後で、青白く光ってさ。それから直ぐに、視界がぼやけてしまったんだ。


 するとだ、その光が俺を中心にグルグルって回り始めてさ。なんつうかこぅ……ブワッと上昇してな。


 気が付けば宮殿の、″召喚の間″に立ってたってわけだ。


 そりゃぁ、最初は理解できなかったさ。さっきまで近所の交差点にいたのにだぜ、光に包まれた後に、あの光景だろ?


 ただまぁ、俺もラノベ……えぇっと、物語が好きでさ。異世界召喚……は通じるのか。とにかく、そんなのに憧れるとこがあっただけにな、状況は何となく把握はできたんだ。


 そこから先は早かったな。そこに居た全員に勇者って言われ、王様からカッコイイ剣を貰ってさ。


 まんま、″勇者の剣″って言ってたし。それに、どうやら俺は召喚された時に、魔力も得たらしいんだ。


 それから魔法の使い方や、呪文の種類も教えてもらってさ。まぁ覚える情報があり過ぎて、さすがにまいっちまったんだよなぁ。


 色んな説明を二時間……んんんっ……二刻間? で、一旦切り上げて休ませて貰い、そこで気持ちを整理することができたんだ。


 翌日……って、今日のことな。昼食……昼刻食の時に、近くでモンスターの群れが現れたと聞かされてさ。


 騎士団団長のハイルドライドさんに、小手調べにどうだろうと討伐の提案を受けたんだよ。もうこの世界で生きてかなきゃならないからさ、とりあえず行ってみるかと思ってな。


 それに、この世界に召喚されて、魔力を得たと言われても、サッパリだったし。だからその提案に乗って、王宮を飛び出したまでは良かったんだ。


 ただそこでだ、俺は自分の身体に異変を感じたんだよ。いい意味でな。


 俺が召喚されて得たのは、魔力だけじゃなかったみたいでさ。走るスピードは異常に早いし、高い城門も軽々超えれるほどの、ジャンプ力もあったんだ。


 おかげで騎士団よりもかなり早く、兵士がモンスターと戦っている場所に着いたんだ。


 そこで王様に貰った剣をな、こぅ……ビュンッと振ったらさ、五体の爪の長いクマ……クロウベアだったか? それが一瞬でバラバラッてなってさ。


 ちょっとばっかし興奮したんだよなぁ。


 ついでに教えてもらった魔法をさ、ドォォォンって出したらモンスターがさ、こう……バァァァンッて吹き飛んじまってな。


 そこでだ、俺はそこにいるモンスターを一掃しようと思って、群れから距離をとってな、昨日教えて貰った炎系最大の魔法を、ぶっ放したんだ。


 この魔法がまた凄くってさ。飛び出した炎はあっという間に、ブワァァァッとなってモンスターの群れをさ、こう……ボワァァァンッて飲み込んでな。


 ただな、そこで驚くべきことが起きたんだ。突然、俺の放った炎の魔法に向かって、ひとりの兵士が飛び込んで行ったんだ。


 鎧の胸部分が膨らんでたから、女性兵士って分かったけどな。


 その女性兵士さんがさ、炎の中で舞い上がるスカーフを掴んで直ぐに、(うずくま)ったんだよ。もぅ、本当にビックリしたんだ。


 召喚されて早々、やっちまったと思ったしな。慌てて魔法を引っ込めて声を掛けたけど、聞こえなかったようでさ。


 その後で女性兵士さんは素早く立ち上がって、手に持ったスカーフを駆け寄ってきたおっちゃんに手渡したんだ。


 娘さんに貰ったスカーフがどうのって会話が聞こえてさ。その言葉を聞いて俺はな、さらに驚愕したんだよ。


 いくら頭までの完全防御型の鎧を着ていても、炎に飛び込むなんて、よっぽどの勇気が無いと出来やしない。


 なのに、あの兵士さんはスカーフを取り戻すためだけに、飛び込んだらしくてさ。


 仮面で顔は見えないけど、きっと凛々しくてキリッとした面持ちの、上品な女性なんだろうなぁと勝手に妄想してた、その時だ。


 おっちゃんに何度もお礼をされてた女性兵士さんが、コテンと小首を傾げたんだよ。




 ◇◆◇ユウシャサマ◆◇◆◇◆◇カイソウオワリ◇◆◇




 その時のことを思い出し、興奮しはじめる勇者様。時に身振り手振りを加えて話をしてくれる。


 私の知らない言葉には、一生懸命考えながら説明してくれて、何だかとっても楽しそうで微笑ましかった。


 それに、私も勇者様のお話を聞いてて、とっても楽しくて。勇者様の世界は知らないことばかりで、聞いててワクワクしてしまう。


 だから、もっとお話を聞かせて貰いたいと思った私は、勇者様に尋ねたのだ。


「あの、勇者様。勇者様の世界って……」


 そこまで言った、その時だった。


 勇者様が嬉々として、再び語り始めた。ただその内容は、私の想像のかなり斜め上をいくものだったのだ。


「多分だけどさ、俺の脳内ビションでは、あの兵士さんは気の強いクラス委員長、もしくは細い眼鏡を掛けたビジネススーツのお姉さんの様な、整った顔つきだろうと思うんだ」

「ふえっ? (びじょ……ん? それに、くらすいいんちょう? って何ですか? びじねす……すうつって?)」


「クールで超美人な兵士さん。それがあんなに可愛らしく、小首を傾げて笑顔で応じるなんてさ。本当にビックリしたぜ。なっ? お前も分かるだろ?」

「ふえっ!?!? えと……はい……」


「だよなぁ。いやまぁ、仮面で顔は見えなかったんだけど、あの笑顔は可愛すぎて超違反でさ。ギャップ萌えだよ、ギャップ萌え。もうさ、すんげぇ、キュンキュンものでさっ!」

「(ふぇぇぇっ!? ぎゃっぷもえって何ですかぁ!? きゅんきゅん……って何ですかぁぁぁ!?)」


「もう破壊力があり過ぎて、キュンキュンが止まんなくってさぁ!」

「(言えないっ! 勇者様の妄想が暴走し過ぎて、私がその兵士だなんて、とても言えないっ!)」


 興奮気味で、とっても良い笑顔で語る勇者様。楽しそうだけど、言ってる意味は全く……ホントに全く分からない。


 そんな勇者様は、私の横で両腕を高々と上げ、夕刻時で賑わう噴水広場で、大きく叫ぶのだった。


「キュンキュンしちまったぁ━━━━━━━━っ!!!」

「ふぇぇぇぇぇぇっっっ!!! (だから、きゅんきゅんって何ですかぁぁぁ!?!?) 」




 時はその日の朝に遡る。




※ちょっことトーク※


「あの、キュンキュンってなんですかぁ?」

「口で説明するのって難しいんだよなぁ。じゃぁ、やってみるか?」


「はい、やってみたいです」

「まずな、両脇を締めて口元に拳を持ってくるんだ」


「こうですかぁ、勇者様」

「そうそう。そしてな、首を左右に傾げるんだ。こぅ……キュン、キュンって感じ?」


「えっと……キュン、キュン! で、合ってますかぁ」

「おっ……おおぅ……///」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



貴重なお時間を使ってお読み頂き、本当に有難うございました。


興味を持って頂けたならば光栄です。


・面白かった!

・ヒヨリ、頑張れ!

・次はどうなる!?


と思って下さった方は、ぜひとも画面下の☆から作品への応援をお願いします。


うん、いい!と思っていただけたら★5つ

いやぁまだまだ!と思っていただけたのなら★1つ、素直な気持ちで大丈夫です。


ブックマークを頂けると最高です。


なにとぞ、よろしくお願いします!

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