6.不穏
やる気が起きずにサボり続けた結果です。すみませんでした
高等呪術のほかに言い方があったような……?
外灯に向かった時、男はその場を立ち去ろうとしていた。レテは鋭い目で男を睨み、行く手を阻んだ。夜だったからか、舌打ちが響くのがわかる。
「そう怖い目で見るなよ、俺だってこんな仕事引き受けたくなかっんだぜ?」
男は余裕そうにジェスチャーをした。
「ただ、雇い先の金の払いがいいもんでな、仕方なくやってあげたんだ」
利用できそうだったので、レテは静かに話を聞いている。
「ただ尾行するだけで金がもらえるからな、ちょろいもんだぜ」
ふーん、と頷くレテ。
「……で?何故追っていた?」
「知らねぇけど、お前らじゃなくて女の方を尾行しろとしか言われてねぇし。大罪人らしいよ」
レテははっと目を開く。が、表情は直ぐに元に戻った。
「……協力感謝する。陰で手間が省けた」
「?」
「……」
レテは、トンっと男の首を叩いた。男は外灯に頭を強打しつつ倒れる。それを見届ける間もなく、レテは宿の中に戻って行った。何かの気配に気づく様子だった。
時刻は寅一つ時。宿泊している部屋の鍵を開け、少女達に忍び寄る影が1つ。2つ。2人とも男で、レテがまだ男と話しているときのことだった。男たちは3人が眠るベッドに近づく。先ず布団をはぎ取ろうとしたのは、ベッドに1人だけで寝ているネヴィだった。後の2人は1つのベッドに2人同時に入っていたからである。男は布団に手をかける。と、その時。先ほどまでぐったりとしていた椅子が男たちの首を強打する。そして音がしないように2人を受け止めると床にそっと置いた。すると椅子はまた定位置へ戻った。数秒後、音に気付いてしまったネヴィが目を覚ます。
「レテちゃん……?」
その時にはまだレテはいない。気のせいか床に倒れている影が視える。そしてまた寝ぼけながら2人のほうに目を向けるとオーブ的な何かも視える。重い頭を覚ますため目を擦る。……消えてる。
「怖」
そんなことを言っているとレテが扉を開いてきた。
「……何があった?」
戸惑い気味のネヴィに尋ねるレテ。ネヴィが首をかしげる。と、足元の男たちに気づく2人。
「……ああ、気配は――」
頭を抱えたレテは直ぐに男をこれでもかというほど縄で縛りつけた。
「動く物を縛り付ける用の縄を持っててよかったね」
レテは溜息を吐きつつ頷く。縛り付けた後、
「……忘却魔法使える?」
と尋ねる。
「じゃあそこにある呪術杖取ってくれる?」
と小さめのバッグを指差す。
「……鍵かかってるけど」
「あーじゃあそのまま持ってきてくれる?」
「……ん」
バッグを手渡した。すぐさま鍵を解く。これもまた魔術のようだ。そこから杖を取り出すとにこっと微笑む。
「ありがと」
忘却魔法など、精神系の魔法は呪術と認識されるらしい。そのような魔法も扱える4人は何者なのだろうか。
「んーこいつらに高等呪術を使うのも惜しいし簡易的な呪術でいいかな?」
「……頼む」
ネヴィは杖を男の頭に突きつけた。