4.悲しませない
「どうしたの?」
無知なふりをしてフォリアが聞いた。レテの瞳は冷たく、儚げで、それでも慣れているような、強い、悲しそうな瞳をしていた。口にも表情にも出すことがないレテは、瞳でしか表すことができない。
「……知らないほうがいいよ。特にリネは感情移入しやすいから……」
「なら、レテも……」
「……慣れてる」
レテの手が固く握られる。レテはネヴィと共に部屋を出て行ってしまった。フォリアは心配したような顔で扉を眺めていた。
散歩をしながら2人が駄弁っている。
「私は知ってもいいんだ?……別にどうでもいいんだけどね」
ネヴィは呆れたように肩をすくめた。
「……あの人、おかしかったよね?」
「唐突だねぇ、でも私もそう思うよ」
「……自分の話みたいに物語を語ってた、気がする」
うん、と相槌を打つネヴィ。
「あと理由を聞いたとき。あの時も変だった。わ、私の……って感じでその場で対応したみたい」
「……白い村。あの村にあの話があるのか調べてみようか」
「でも、フォリアが言ってたように、白い村については何もわかってないから、調べようにも……」
「白い村はね、何にもわかっていないの」
皆でガクッと喜劇のような動きになった。
「でもね、ただ一つだけ。その村に行こうとした人は、必ず体のどこかを忘れて行ってしまうの」
「ということは、無くなる……?」
リネが吐き気をもよおす。
「そう。ひどい人は体自体をなくしたり、記憶をなくしたり、不死身……ゾンビになってしまったり……」
リネが気絶しかける。
「もうやめてあげて!?」
ネヴィが止めに入ったところでフォリアが話すのをやめた。
「……の文献にあって――」
「……フォリア」
レテに止められたところで誰も聞いていないが、フォリアがハッと正気に戻った。
「って言ってたから」
「……ならだめか」
「どうしよ」
ネヴィが笑顔で絶望した。
「……まず、レナが何者なのか調べよう。明日は別行動だな」
「”亡霊”でいい?」
「……うん。フォリアに許可もらわなきゃな」
だるそうにレテがため息をついた。