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最期の冒険譚  作者: 蒼幻
プロローグ
3/8

3.声

 不審がるレテ。はっと現実へ戻されたように、微かに動く女性。フォリアとリネは首をかしげているがネヴィは、何かに気づく。そして、フォリアとリネが見ていない間にそっとレテに耳打ちした。

「殺したのに、両親は……。少女はそれを見てどう思った……?」

レテが目を細めた。

「っ……何でしょうか」

喉から言葉が出てこない女性。

「……何でもない。続けてくれ」

「そう……ですか」

明らかに警戒されている。そのことは両者、感じていた。フォリアとリネだけ、不思議そうに顔を見合わせた。ただ、フォリアもフォリアで、気づかなくていい問題だと察していた。リネの方は恐らく……何も気付いていない。

「理由とか聞いてもいいですか?」

どうにかして話題を変えようとネヴィが身を乗り出した。迫真の演技といっていいだろう。

「わ、私の故郷に伝わっているんです。私が初めて覚えた物語なので、皆さんにも覚えていてほしいな~って」

ネヴィは肩をすくめた。明らかに違う。目が泳いでいる。手に力が入っている。汗を少しばかりかいている。

「そうなんですね。故郷はどちらですか?」

「正式名称はないんです。ただ、母からは、”白い村”と……」

フォリアが”白い村”という単語にだけ、反応した。

「”白い村”……!?」

「どうしたの?」

リネが尋ねた。

「”白い村”っていうのはね――」

フォリアが得意げに笑った。


「あ、もうこんな時間。そろそろお暇します」

 数時間後、女性は急いで立ち上がった。

「本当だ。もうこんな時間」

外はもう黒い幕がかかり始めている。

「では、もう行きますね。さようなら」

女性がドアノブに手をかけた時。レテが立ち上がった。

「待って。……最後に。名前を、聞きたい。」

珍しくはっきりとした口調だった。

「……レナ、とお呼びください。」

レナは息をする間もなく、扉の前から姿を消した。

「嵐みたい……」

部屋にはレナのほんの微かな汗のにおいが残った。


「……ネヴィ、ちょっと来て。」

 レナが去って間もなく、レテがネヴィを手招きした。

「……ちょっと散歩しない?」

わざと声を高めて、しかし真面目にレテが言った。

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