【詩】エレベーターのボタン
エレベーターの、二つ目のボタン
車椅子のマークのついたボタン
ぼくはたぶん、そのボタンの意味を知らなかった
意味とゆうと、ちょっと違うかもしれない
ボタンのある理由を知らなかった、とゆったほうが正確かもしれない
そのボタンのある、優しい理由
そしてそのボタンを押す人たちの、身勝手な理由を
たぶんぼくは知らなかった
そのボタンを押す人たちとゆうと、ちょっと違うかもしれない
ただ自分が急いでいるという理由で
そんな恣意的で、怠惰で、想像力の欠如した理由で
なんの悪びれた様子もなく、さも当然のように、
このボタンを押している人がいるだなんて、
たぶんぼくは知りもしなかった
でも
知っていたら
何かが違っただろうか
もし知っていたとして
そのボタンを押す人たちに
何かかけてやれる言葉があっただろうか
きっと、ぼくもおなじだ
人に嫌われることを恐れる
責任を負うことを避ける
主人公になることを嫌う
薬にも毒にもなれないぼくは
無害で、小市民で、大河の流れの一滴にも満たないぼくは
彼らとなんら変わらない
いっそ何の考えもなく、
エレベーターのボタンを二つ押すくらいの図太さを持った方が、
きっと生きやすいだろうに
断言をしないことに、いったい何の意味があるだろうか
心はこんなにも叫んでいるというのに
たぶん、やさしくなりたいだけなんだ
きっと、誰もきずつけたくないだけなんだ
ただ、それだけなんだ
たぶん
きっと