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16:群青よ、歌え


 あのライブから二日後。


 ネット配信された瑠璃子のライブ動画と、〝群青〟のショートバージョンはしかし、さして再生回数やダウンロード回数を稼ぐことはなかった。学校の裏掲示板では、プロ並とか、神曲とか騒がれているが、その程度だ。


「ま、そんなに甘くはないかあ」


 俺はそう呟いて、ごろりと校舎内にある中庭の芝生へと転がった。見えるのは、葉桜に、青い空。校舎からは昼休みを満喫する生徒達の声が聞こえる。


 俺が何気なく手に持つスマホを見ると、まるで図ったかのように通知が鳴った。


 それは、美佳からの短いメッセージだった。


『あの曲、使わせてもらったし』


 そのメッセージにはURLが貼ってありタップすると、とあるSNS投稿に飛ばされた。


「これは……」


 それはフォロワーが何百万人といる美佳のSNSアカウントによる投稿動画だった。たった今投稿された、一分にも満たないその短い動画には――BGMとして〝群青〟が使われていた。


 見れば、ちゃんと〝ラピスラズリ〟の曲で、美佳の推しであるとハッシュタグで書かれており、ご丁寧にネット配信と〝群青〟ショートバージョンのダウンロードページのURLまで載せている。


 見ている間だけでも、その動画の再生回数がまるでバグったかのような勢いで増えていった。


『美佳様可愛い! ダンス上手すぎ!』

『これなんて曲? めっちゃ良いんだけど』

『ライブ動画見たら、歌ってるの高校生? プロみたい』

『ウチもこの曲使お!』


 その動画に付くコメントを見てまさかと思い、持ってきていたノートPCを開き、ネット配信動画とダウンロードサイトを見てみると――


「……こりゃ美佳に感謝しないとな」


 美佳の動画ほどではないが、再生回数が爆発的に伸びているし、曲のダウンロード数も増えている。予め、商用利用しない限りは自由に使って良いと書いたのは正解だった。


 これをきっかけに、〝群青〟がSNSで拡散されれば……あるいは瑠璃子の母親の下まで届くかもしれない。


「あ、涼真君、お待たせ」


 青く透明なその声を聞いて、俺はパタン、とPCを閉じた。


「どうしたの? なんか嬉しそう」


 そこには、いつも通り黒縁眼鏡の瑠璃子が立っていた。あのステージに立った瑠璃子とは別人のようだが、これはこれで俺は好きだった。


「そうか?」

「うん、ニヤニヤしてる」


 瑠璃子が長い丈のスカートを折りながら俺の隣に座った。


「瑠璃子に見惚れていたんだよ」

「はいはい。それ、違う女子に言っているのも知ってるんだから」

「どこからその情報を!?」

「深江さんが教えてくれた」


 彩那が!? いやいつの間にそんな仲になったんだ?


「秘密。あ、そういえばね、今週末に千絵さんと買い物行くんだけど、涼真君も来るよね?」


 どうやら姉とも良好な関係を築いているようだ。


「荷物持ちをさせられるだけなんだよなあ……まあでも行くよ」

「やった!」


 素直に喜ぶ瑠璃子を見て俺は、満足感を得る。


「涼真君知っている? 私の友達の谷町さんがね、南波君に告白してね……それで……そう……涼真君的にはやっぱり嫉妬しちゃうの?……あ、両刀いけちゃう可能性も……」


 嬉しそうに話す瑠璃子に、俺は分からないながら適度に相づちを打つ。


 俺の日常は変わらない。

 相変わらず、面白おかしい高校生活を送っている。


 変わったと言えば、可愛い彼女が出来たことぐらいか。


 こうしてバカ話をしている間にも電子の海では、瑠璃子の歌が指数関数的に増えていく。もしかしたらどこぞのプロの目に止まりデビューなんて事もあるかもしれない。


 最初はただ青いだけの音の欠片だったその歌は、重なりそして俺と瑠璃子の物語を奏でた。


 それらはやがて群青となって世界に響き渡るだろう。


 群青よ、歌え。


 その歌声は――確かに俺の退屈な世界に、輝きを取り戻したのだった。

というわけで、完結です。涼真と瑠璃子の物語はこの先も続くでしょうが、一旦ここで筆を置かせていただきます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] お疲れ様でした! まさに爽やかな風吹く青春の物語でした(#^.^#) 主人公がとてもカッコよくて 胸キュンでした! もう少し2人の恋愛感情が近寄っていく場面も じれじれ見たかった気持ちもあ…
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