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SECOND WORLD 〜受験ガチ勢によるVR生活〜  作者: 久方優那
受験ガチ勢がVRMMOに手を出したワケ
1/6

01.キャラクターメイキング

はじめに。

作者は豆腐メンタルです。

普通に勉強しろと言われたら本当に主人公を普通に勉強させるかもしれません。うそです。

ツッコミどころが多々あるかもしれませんが、あえて胸中にしまって、あるいは頭空っぽにして読むことのできる方以外はブラウザバックをお願いします。

都合の良い感想しか受け取らないので、ご了承ください。

それでも良いという方のために書いております。


 ネクタイを解く。制服をハンガーにかけて私服に着替えれば、すぐにベッドで横になる。

 時刻は夕方。放課後の自宅。待ちわびた瞬間に心は躍り、鳴り止まない鼓動が早く早くと囃したてる。

 昨日のうちに設定を済ませた新品のヘッドギアを用意すれば、この時のために買った専用の枕を出してセットオン。

 寝違いがないよう細心の注意を払いながら、閉ざされた視界に夢の世界を期待して、いざ出発。


 ピコン、と音がして、目を開ければそこは異世界。


【ようこそ、〈セカンド・ワールド〉へ】


 光で構成された空間に、僕は今日、足を踏み入れる。

 すべては、約束されし――勝利のため。

 絶対に負けられない戦いを制するために、この世界で強くなると誓ったのだ。






 £






 フルダイブ型VRMMOが世間に登場してから十年が経ち、技術者たちの不断の努力の末に積み重ねられてきた進歩は今や現実とほとんど遜色のないレベルまで達していた。

 特にここ数年ではゲーム内における時間加速システムの導入によって顧客たちを増やし、その価値をさまざまな分野で示してきた。

 医療、学問、ビジネス、アトラクション、エトセトラ。

 今やVRとは情報化社会の象徴として、なくてはならないツールとなっている。

 健全性のために時間加速は最大で10倍、現実時間にして12時間(ゲーム内時間5日間)までなどいろいろと制約があるものの、利用価値は計り知れず、特に1秒でも多く時間が欲しい受験生たちにとって値千金の秘密兵器となり得ていた。


 もちろん、僕もそれを目的に購入した。

 それも他の人のように遊ぶ時間欲しさからではなく、受験戦争のためだ。

 勉強ガチ勢たちが愛用する伝統的な『VR学習塾』を利用して、本格的な高校受験が始まる来年に備えようとしていた。


 だが、とある新作VRMMOゲームの登場によって、計画は変更することになる。


 そう、ゲームシステムの革命が起きたのだ。

 今までのゲームでは時間加速に合わせた能力でしかプレイングできないのが常識だったが、VRの元締めとも言える大企業シルキーコーポレーションが大々的に発表したゲームには、ゲーマーたちの夢である『ステイタス』の導入に成功したのだ。


 誰でも、ゲーム内でのポイントを使うことで現実ではありえない動きを可能にする――超常のプレイングを開発した。

 これまで脳負荷がどうたらで完成しなかったリミッターの解除を、ついに成功させたのだ。


 前作、現実世界を模倣した等身大のファンタジー作品〈アナザー・ワールド〉に続いたセカンドタイトル。

 衝撃的な発表からかれこれ半年も待ち、今日この日、ようやく第二の世界が解放されることになった。


 受験ガチ勢を自認する僕が計画を変更することになった発端はゲーマーたる友人たちの強い勧誘があってこそのものだったが、僕はこの〈セカンド・ワールド〉にこそ、受験戦争を制する勝機を見た。


 アナウンスに沿って現れるウィンドウはほぼ現実そのままだ。造り込みの良さに期待値は爆上げ中だ。


【設定を開始します】


【プレイヤーネームを教えてください】


 文字パネルを仮想世界の仮アバターを使用して操る。

 友達とも会うことがあるだろうし無難に名前をそのまま入力。


【『マナブ』でよろしいですか?】


 YES。


【『マナブ』のアカウントを作成します】


【『マナブ』のキャラクターメイクを開始します】


【種族を選択してください】


 ヒューマンで。エルフやドワーフ、獣人などでは種族値が特化型になるが、シンプルイズベスト、オールマイティなデフォルト族だ。


【ヒューマンでよろしいですか?】


 YES。


【容姿の設定をしてください。現実の身体と大きくかけ離れている場合、システム補助を行います。ご注意ください】


 なら、現実通りで構わない。


【記憶データをスキャンします。スキャンされた記憶データは容姿の作成後、破棄されます。他目的の利用のため使用されることはなく、データの送信も行われません】


【記憶データをスキャンしてもよろしいですか?】


 YES。


【容姿を作成しました。スキャンされた記憶データは破棄されます。容姿の設定を続けます】


 顔バレは正直気にしてないので、目の色を赤くしたり軽く修正して完了ボタンを押す。


【容姿を設定しました】


 仮アバターから、容姿の設定を反映させたアバターに変わった。違和感なく、再設定の必要もない。


【職業を選択してください】


 これはもう一択だ。

 ゲーム上究極のオールマイティ、器用貧乏にして多彩なスキルを獲得できる職。


【冒険者でよろしいですか?】


 YES。


【ビルドポイントを100付与しました。お好きな項目を選択して割り振ってください。レベルアップ時の成長率に影響します。レベルアップ時に振り分けるステイタスポイントは別で付与されます】


 きた。ここが一番のキーポイント。僕が受験戦争の勝機を見出したステイタスのカスタムだ。

 ベーターテスターと呼ばれるテストプレイヤーたちの情報から、10ビルドポイントにつき成長値が定数1になることは判明していた。下手に少数を使う意味は感じられないので割り振りは10ごとと決めている。



 HP…10

 MP…10

 力…10

 耐久…10

 敏捷…10

 器用…10

 運性…10


 残りビルドポイント…30



 極振りなんて無謀な真似しない。

 そういうのはマゾプレイが好きな人間が楽しむためだけにやればいいし、冒険者を選択して確実に強くなるためにはオールマイティさがなによりも重視されてくる。

 個性を出すのは、すべて均等に割り振ったそのあとだ。

 ここで余ったすべてのポイントを使い切る。



HP…10

MP…10

力…10

耐久…10

敏捷…10

器用…40

運性…10


残りポイント…0



 そう、この一見して意味の無さそうな器用こそ、僕が求めていた秘密兵器だ。より成長することを考えて極振りすることは出来なかったが、最低限の成長率を確保した以上、もはやレベルアップ時のステイタスポイントはすべて器用に割振るのも決まったようなものだ。この器用とは、ようはステイタスやスキルの制御能力を言うのだが、これが受験勉強ですごい役立つのだ。


 笑いそうになるのを若干殺しきれずニヤニヤしていると自覚しながら完了のボタンを押す。


【これでよろしいですか?】


 YES。


【獲得する初期スキルを2つ選択してください】


 ウィンドウに大量のスキルが出されるが、それは冒険者特有と言っていいだろう。すべての職のスキルを取得できるため、すべて職の初期スキルが表示されているのだ。

 これも想定済みで、予め決めていたスキルを探し出して選択する。


【『ヒール』と『瞑想』でよろしいですか?】


 ヒールは神官、瞑想は格闘家の初期スキルでどちらも回復系統のスキルだ。もう一つ選択できるなら強化系のスキルを入れておきたかったが、二つと決められているので仕方がない。


 スキル構成的にサポート系かと他のプレイヤーには思われるだろうが、あいにく、サポート対象が自分だった。

 僕は決めたのだ。この世界で強くなると。具体的には来年までに。そして、盤石の体制をもって高校受験に臨むのだ。

 そのためにはソロプレイでも大丈夫なように備えておく必要がある。アイテムで回復するという手段もなくはないが、ある目的のためにお金を貯める必要があるので消耗品は避けたかった。


「YES」


 レディパーフェクト。

 準備万全。待ち焦がれた第二の世界へ思いを馳せる。


 そこでは数多の冒険が待っているだろう。そして、その悉くに立ち向かい、僕はいずれ来る受験戦争のために強くなる。


【『マナブ』の設定を完了しました。これより〈始まりの街〉へ転移します。合言葉を唱えてください】


 堅い決意を胸に、僕は今日この日、第二の世界へ足を踏み出した。


「ハロー・ワールド」


【認証しました】


【ようこそ、マナブ】


【世界はあなたを歓迎しています】

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