8 冒険者登録!
「冒険者ギルドってそういう買取もしているんだな……」
「そうですよ? というか、冒険者ギルドで素材を売るのが基本です! お父さんは何も教えてくれなかったんですか? 素材に関しても、あれだけの物を持って行って、たった50万ゴールド程にしかならないなんて、ありえないって分かると思うんですが!」
「そうなんだな。父さんは基本狩りに出かけてて家に居なくてさ……そこまで関与してないからこの事を知らないと思うんだ……」
「……そうでしたか」
「でも、今日教えてもらったから本当に助かったよ。次回から冒険者ギルドで売る事にするよ!」
「是非そうする事をお勧めします! にしても貴方達のお父さんはとても強いのですね! 素材の平均レベルが300程ってランクAの冒険者より強いですよ!!」
「ランクA?」
「ランクの事も知らないんですか?」
冒険者にはランクが存在し、
C 平均レベル50
B 平均レベル100
A 平均レベル250
S 平均レベル400
レジェンド 平均レベル650
「という具合にレベルが分かれているのです!」
「へー……」
「レベル300の魔物を狩るなんて並の人間じゃないです! 間違いなくランカーですね……! 宜しければお父さんのお名前を教えて頂けませんか? フフフ、あわよくば騎士団に勧誘を……」
ミーナの目が輝いている。どうしよう……実在しないんだけどな……。
「駄目だよっ! お父さんは目立つのが嫌いで、名前なんて教えたら怒られちゃうんだよ!」
ノティア、ナイスフォローだ!
「おっと、そういう方もいらっしゃいますよね……それは失礼いたしました!」
そんなこんなで冒険者ギルドへと到着した。
見た目は何というか……コンクリートの様な壁や屋根で出来た、役所の様な建物だ。横には木造建築酒場が併設されている。
「ここが冒険者ギルドです!」
「おお、初めて来たよ。本当に有難う! ミーナ!」
「いえいえ! 困っている人が居れば助けるというのが騎士団のモットーですから! ところで……」
「うん?」
ミーナはそういうと自身のステータス画面を出し、その画面の一部を掴むと、カードサイズ程の大きさで外れた。
そのカードを俺の方へ手渡そうとしてきた。
「宜しければ、連絡先を交換しませんか? 何か困ったことがあればメッセージでもコールでもして頂いていいですよ!」
「本当か! それはすげえ助かるんだけど……どうやるの? それ」
「ええ! まさか連絡交換もしたことがないとは……やり方はですね……」
そういって俺はミーナの指導の元、連絡先の交換方法を学んだ。
連絡先を交換すると、連絡を取りあう事が出来るようになるようだ。
相手にわかる情報は名前とクラスだけ。レベルが見えなくて本当に良かった……。
「クイックキャスター……? クイックキャスター何てクラスは初めて見ました……」
「そんなに珍しいクラスなんだな!」
「そうですよ! 一体どんな技が使えるんですかイニシヤ君!」
ミーナは食い気味で俺に技を聞いてきた。強い人や珍しいクラスにえらく食いつくな……
「そんなのは内緒だよ! どこから漏れるか分からないし!」
「むむ、それはその通りですね……残念ですが今は! 聞かない事にします……」
「今はって……」
「はっそろそろ戻らなければ……では私はここで! これからは変な詐欺には気を付けるんですよ!」
「有難うー!」
そういって俺達はミーナと別れた。
「よし、ノティア! 早速冒険者ギルドに入ろうぜ!」
「うんー!」
中に入場すると、カウンターのような所が並んでいて、その中に素材買取窓口と言う場所があった。
俺達はとりあえずそこの受付の方に話しかけた。
「いらっしゃいませ! 冒険者カードを提示してください!」
「ぼ、冒険者カード?」
「あ、ご利用は初めてですね! では冒険者カードの説明からさせて頂きます!」
「お……おう」
・冒険者ギルドにて依頼受注や物品売買を行う場合、冒険者登録が必要
・自身の連絡先カードを提示すれば即時に発行され、次回からカードの名前の横に自身の冒険者ランクが表示される
「とりあえず依頼とかは受ける気はないですね?」
「そうだね……素材を売りに来ただけだ!」
「では説明は以上です! 発行なさいますか?」
「もちろんだ! 二人ともお願い!」
「二人……? とりあえず、連絡先カードを提示してください!」
そういって俺達は連絡先カードを提示し、カードの発行を行った。
一応これで冒険者になったと言う訳だ。
「では品物を拝見しますね!」
受付の方はその場で素材を確認し始めた。
「全部で1200万ゴールドですね!」
「ほう……1200万……せんにひゃくまん?!」
「素材自体の品質も凄く良いのですよ。全然傷がついてないんです!普通に戦えば大体素材にも傷が行きますからね」
「確かに……売る部分を剣で斬ったら傷とか入るか……」
クイックジャッジメントは切り傷とかはつかない。発動したら、爆発してるような見た目だけど、焦げ付いたりはしてないな。今まであまり気にしていなかったけど……。
「全部文句なしの超高品質素材です! 本当に売却しますか?」
「あ、じゃあお願いします」
「この量のゴールドを持つのは大変ですから、君のホルダーに振り込んでおきますね」
「ホルダー……?」
「ホルダーは君がステータスを見たり、連絡先カードを出したりランキング見たりするあれの総称ですよ!」
「へー……名前は知らなかった……」
「とりあえず……ノティア、半分づつ入れてもらっておこうか」
「ええー! めんどくさいからイニシヤの所に全部入れておいてよ!」
「そ、そうか。じゃぁ全部俺に入れておいてお姉さん!」
「ええ……かしこまりました!」
そういってすぐにステータス画面の0Gってなっていた所が1200万Gの表記へと変わった。
「すげえな。電子マネーみたいな感じか……」
「でんしまねー?」
「あ、いやこっちの話だよ!」
「にしてもこれだけあれば色々買えちゃうぞ! この後市場を見回ろうぜ!」
「あ、いいねいいね! でも使い過ぎないように気をつけようね!」
「おう!」
そういって俺達は冒険者ギルドを後にした。
今までどれだけ損してきたのだろうか……それは考えないようにした。