6 戻り続ける
「イニシヤはどこかなーっ?」
ノティアは俺がランキングに乗っているのではないかと、うきうきで探しているが、絶対に乗っていないと言い切れるぜ……。
だってレベル1だもの!!
「てか、1位はレベル620か……凄いな……」
「本当ね! 一体いつになればそんなレベルになれるんだろうねっ」
「俺は……一生無理かもしれない」
「そんなことないよっ!! 一緒にがんばろーよ!」
たしかにノティアの言う通りだ。たまたま今日、何かの間違いでレベル1になっただけかもしれない。
とにかくレベル上げはまた頑張ろう。俺には経験値が超絶に倍になってるんだ。
諦めるには早い! だが、レベル1になったことだけは伝えておこう……。
「ノティア……俺のこのランキング画面を見てくれ」
俺は自分のステータス画面の、自身の順位を書いている所を見せた。
「え……?! レベル1ってどういう事!? ありえないよっ!」
「いや、事実だ。さっき謎に光っただろ? 俺……どうやらあの時にレベルが初期化されてしまったみたいだ……」
「そんな……!」
「でも仇を諦めたわけじゃない。俺には経験値9910倍の特殊効果がついている!」
「うんうん! 経験値……9910倍!?!?」
「ああ……実は昔からこんな感じだった……レベルが下がる前は290だったんだ」
「すごい……」
自分でそう言った瞬間、一気に滅ぼされた村の事を思い出した。
「そうだ……俺がこの事を隠さずに事前に皆に言っていれば……! 俺も一緒に戦ってればこんな事には……!」
自分の不甲斐なさに俺は地面を叩く事しかできなかった。
「自分を責めないでイニシヤ! ぼくはイニシヤが居ればそれで充分! 二人でこれから頑張って生きていきましょ! ずっと一緒に!」
「あ……ああ……」
両親が死んで間もないのにそんな笑顔で……逆に怖いんだけどノティア……!
「それに、ぼく達が両親を殺した本体を粉々にすれば、両親たちも報われるんだよ!」
「粉々って……まぁそうだな。とりあえず今日はもう寝よう。明日からレベル上げだ!」
「うん!」
ノティアは超かわいいんだ。でもたまにすげえ怖い……昔から大切な人が傷つけられるような事になった時、人が変わったかのように怒りその姿に俺は恐怖を覚えたもんだ。
この前の道化を殴ってるときほど、きれてたのは初めて見たけどな……。
まぁそんな事はどうだっていい。俺はノティアと一緒にレベルを上げて村の真ん中に現れたダンジョンに行き、道化を殺す。
――1か月後
――――
名前:イニシヤ(10歳)
LV:1
転生特別効果
・経験値9920倍
クラス:クイックキャスター
即時詠唱に長けた職業。
ステータス:数値(補正値)
STR:100(x15%)
DEX:100(x45%)
VIT:100(x30%)
INT:100(x100%)
AGI:100(x90%)
使用可能スペル
無し
特殊スペル
・クイックサーチ(相手のステータスを参照できる)
・カウントジャッジメント(自身と相手のINTを参照する。INTの差分、低い方がダメージを受ける)
→手で円を作り、その円に15秒間収めることで発動する
――――
――――
名前:ノティアlv15
クラス:ナイト
ステータス平均:18
スキル
・ディフェンスオーラ
自身と自身の近くに居る仲間に対して、防御膜を貼る。
――――
「そんな……イニシヤ……」
「またかよ……それもまたちょうど一か月でリセット……なんでだよ……!」
「イニシヤ……」
案の定と言うべきか。1か月後のランキング発表前、俺はまたレベル1に戻っていた。
違いと言えば経験値の倍率。これが少し上昇していた。
あとノティアは今見ればやっぱりナイトになっている。ただ、時折ピンチで切れた時に見るとバーサーカーになっていた。
本人にその自覚は無いみたいだが、二つのクラスを保持しているようだな。
「明日、ダンジョンの3階に行くのは中止だな……」
「またがんばろ! きっと次は大丈夫だよっ!」
「そう……だな! 3度目の正直だ! 頑張るよ!」
だが……それからも俺のレベルは毎月1日にはレベル1に戻った。
上げても……上げても……1日になればレベル1に戻りつづけた。
最終的なレベルによって、経験値倍率は下がったり上がったりした為、せめて倍率は上げていこうとレベルは上げることにしたが、虚しさは募るばかりだった。
こんな状況で俺は次第に仇を討つという気持ちも薄れてしまい、いつしか惰性でレベルを上げるようになっていた……。
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