5 それを知ったのは
「ま、待てノティア! レベル10じゃ1ダメージも与える事が出来ない……!」
なんて腰抜けなんだ俺は! こんな状況でも立つ事が出来ない。俺が何とかしねえと……。
「お前がッ!! みんなをッ!! 許さない……ゆるさない!!!」
ノティアは驚くほどに大きな声で道化を棒で殴り続けている。
そのノティアの姿を見て、俺は畏怖してしまい、道化の怖さを忘れていた。
「ググ……コムスメが……! ガァッ!」
ノーダメージのはずなのに、道化は苦しんでいる。レベルが大きく離れていてもダメージを与える事が出来るのか?
俺は思わず、クイックサーチでノティアを見た。
――――
名前:ノティアlv10
クラス:バーサーカー
ステータス平均:13
スキル
・スルースラッシュ
武器で攻撃する際、全ての防御要素を無視し、自身のSTR分のダメージを与える。
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なんだよこのスキル……! 言ってしまえば、防御無視の攻撃か! 強すぎないか!? いや、それよりもノティアってナイトなんじゃないのか? どうみてもバーサーカーなんだけど……。
てか、防御ってのはステータスのどれに当たるんだろうか。
VITは体力……HPの数値でもあり防御値の役割もあるのかな。
「ぐう……我が分身を倒すとはな……ここで死ぬと本体にこの事を伝えれないのは痛いが……カナラズ、ダンジョン最奥に居る我本体が、コロシテヤルゾ……ガキどもガ!!」
――シュゥゥゥ
――――
レベルアップ
イニシヤ
197 → 223
――――
――ガンッ! ガンッ!
ノティアは灰となった道化を叩き続けていた。
こんなノティアを見るのは初めてだ……。
「ノティア! もう死んだよそいつは……」
「こいつのせいで! こいつのせいでッ!!」
「ノティア落ち着けって!」
俺はノティアを後ろから強く抱きしめ、叩くのをやめさせた。
「イニシヤ……許せない……こいつらゆるせないよ……皆居なくなっちゃったよ……」
ノティアは棒を落とし、大粒の涙を流した。
「仇を討ってやる……俺が必ず……!」
「うん……」
親しい者がこんなに悲しんでいるのを放ってはおけない。
俺自身もこの魔物どもには憎しみと怒りを覚える……父さん達にはもう会えない。そう思うと俺も涙で視界が滲んだ。
この瞬間、俺は道化を殺すためにレベルを上げ、仇を討つと決めた。
俺から全て奪ったこのダンジョンを必ず制覇する……。
そして、それから数週間の時が経ち、気が付けば秋季3刻の月末になっていた。
俺もノティアも少しだけ落ち着いてきたころだった。
「明日からは冬季1刻か。寒くなってきてたもんな……」
この世界は春夏秋冬季があって、それぞれ3刻まである。12か月が1年だから、前の世界と同じ感じだな。
秋季3刻の初日が俺の誕生日だ。10歳になって初めて月を跨ぐのだ。まぁ、あえて言う事でも無いが……
「ねぇイニシヤ、知ってる?」
「うん?」
「ステータス画面に、ランキング開示って項目があるでしょ?」
「おお、そういえば10歳になってから増えてたな。押せないし何だろうって思ってたけど」
「これは月の始めの1日だけ開示されるんだよ! 種族問わず、全世界の人達のレベルランキングが表示されるんだよっ! 皆が見れるのは5000位までだけどね!」
「へえ……そんな情報は開示されているのか……」
「皆大体1000位くらいまでしか見ないと思うけれど、自分のランキングは別項目で見れるから安心して!」
俺は現在レベル290まで上がっていた。
自身のランキングってのは少し興味があるな。上位が何レベルなのかとか……でもそんな情報、誰が調べているんだ……?
「私達は何位くらいかなー? 結局イニシヤはレベル教えてくれないし……」
「あはは。ランキングに乗ってる自分を探して見せてやるよ」
「本当? 絶対だよ!」
そんなやり取りをしている中、時刻は12時を回ろうとしていた。
「12時ちょいくらいから見れるんだよな?」
「そうだよ!12時頃時点でのレベルがランキングに反映されるよ!」
そして、12時に回る頃、突然俺の身体が光り始めた。
「え……? なんだこれ……?」
「イニシヤ!? なんか光ってるよ?!」
「クラスが決まった時の光に似ているけど何だこれ……!」
――シュゥゥゥ……
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名前:イニシヤ(10歳)
LV:1
転生特別効果
・経験値9910倍
クラス:クイックキャスター
即時詠唱に長けた職業。
ステータス:数値(補正値)
STR:100(x15%)
DEX:100(x45%)
VIT:100(x30%)
INT:100(x100%)
AGI:100(x90%)
使用可能スペル
無し
特殊スペル
・クイックサーチ(相手のステータスを参照できる)
・カウントジャッジメント(自身と相手のINTを参照する。INTの差分、低い方がダメージを受ける)
→手で円を作り、その円に15秒間収めることで発動する
――――
「あれ……俺……」
「あ、イニシヤ! ランキング見れるよ!!」
俺は信じる事が出来なかった。
9歳ごろから頑張ってあげてきた自身のレベルが今、突然1になっているという現実を。




