43 真実
人々は神の加護を受けておりました。
それ故、習得できる経験値も今より何百倍も多く、1000レベルに達する方は
今よりは多く存在していました。
そして私達は1000レベルに達した者に対し、上限を引き上げる役目を神より授かっておりました。
人々の生物としての限界値は1000レベルなのです。
ですが約2千年前……急激に力をつけていた魔物達が人を滅ぼす為の戦争を始めました。
人々は神の元、必死に抵抗しましたが、圧倒的な数を誇る魔物の前に成す術がありませんでした。
魔物の生物としての限界値は1000レベルを超えています。元より勝ち目は薄かったのです……。
そして、人類が疲弊しきった所で、魔物はある提案を当時の王にしたのです。
世界を半分渡し、神を殺せば我々は引く……と
王はその言葉を信じ、その恐ろしい条件を呑みました。
そして……あろう事か人類はその時、神に反逆したのです。
しかし、神は辛うじて生き残りました。
悲しみに溢れた神は自分勝手で愚かな人間に絶望しました。
人々への神の加護は消え、神の悲しみはやがて呪いとなり、我々もその影響を受けてしまいました。
1000レベルになった人を……魔物に変え、魔の戦力にするという呪いを……。
そうして……人類の知識を得た魔物は、より強くなっていきました。
・・・
・・
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「……いやでも待てよ。神と魔物は敵同士だよな? わざわざ魔物が強くなるようなことをしなくても……」
「神の名はレゼス……今は闇の君主として君臨しています」
「……!」
「魔物は狡猾でした。絶望に満ちた神をも誘惑し、堕としたのです……」
「そんな……というか貴方はそんな事まで何故知っているんだ?」
「今は低級魔物の上限レベル開放に使われています。500レベルなどで止まる魔物もいますから……そんな事をしていれば、嫌でもそういった情報は流れてくるのです」
「つまり、今や貴方も魔物の仲間……俺にそんな話をしてどういうつもりだ……?」
「ええ、我々は人類については十分に理解しています。そういった異常な人も現れますが……それだけではありません。我々は人類を愛しています。全滅はしてほしくないのです」
「……」
「ですが、助けようにも呪いを受けた我々は何もする事が出来ませんでした。それも今日で終わりです」
「……!」
「水晶玉よ、これからどうするんだ?」
「そして……我々がレゼスを撃ち滅ぼします」
「水晶玉が!? そんな事が可能なのか……?」
「もちろんこの姿ではありません。まずは、呪いによって封印されていた我々の本体を目覚めさせます」
「本体……」
「我々は全部で三人……その昔は神器三人衆と呼ばれておりました」
「……すまない。聞いた事が無いな……3人に名前はあるのかい?」
「ええ、無理もありません。もう何千年も前の事です……」
私は神の水晶を司る[クォグ]
そして、
神の杖を司る[ウォグ]
神の盾を司る[ソォグ]
「我々は皆人類の味方です。必ず我々3人で魔に落ちたレゼスを討ち滅ぼします……」
「そうか……それなら安心、か……」
「貴方には感謝しています……小さなお礼ですが……貴方の呪いも解いておきましたよ」
「!? 本当か!」
「ええ、ここから戻った時……その目で確かめてみてください」
そう言った後、ぼやける様に水晶玉は徐々に消えていく。
「では、イニシヤ……また会いましょう……」
「あ、クォグ……!」
イニシヤが言葉を言い切る前に水晶玉は消えていった。それと同時にイニシヤの視界も真っ白になっていった。
・・・
・・
・
――バシャ……
「ここは泉――ッ!?」
イニシヤは驚いて泉から飛び出した。
というのも、泉の水は真っ黒のヘドロの様に変色していたからだ。
「水が真っ黒に……呪いの残骸か何かか……?」
その瞬間、クォグの水晶玉が泉の中心に現れた。
――シュゥゥゥ……
水晶玉は直視できない程光輝き、泉の水を瞬く間に元の澄んだ水へと戻していった。
「クォグ……」
水晶玉は何も言う事は無く、超高速で遥か上空へと消えていった。
「……レベルの上限表示がなくなっている……」
イニシヤは泉に背を向け、歩きはじめた。




