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4 6年前の惨劇③

 イニシヤはそのまま駆け足で村の方へと向かった。


「まてイニシヤ!!」


 突然家の陰から人の手が伸び、イニシヤは引っ張られた。


「と、父さん!」

「よかった無事だったか! ノティアはどうした?」

「ノティアは丘のところで隠れているよ!」

「そうか。今はそっちの方が安全かもしれないな……とにかくイニシヤ、こっちへ来るんだ」


 イニシヤは父さんに連れられ、家の裏にある地下への入り口にやってきた。


「村にこんな所があったんだね……」

「ああ、こういう時の為にある隠した地下部屋だ。今鍵を開ける。待っていろ」

「父さんどうなってるの? なんでこんな事に……!」

「村のど真ん中に突然ダンジョンが現れやがったんだ……そんじょそこらの難易度じゃない……最上級のな……」

「最上級……!」

「だが安心しろ。精々レベル150位だと見た。父さんはそれよりかなり高いからな! 何とかなるだろう」


 イニシヤはこの時、父親のステータスをこっそり見ていた。レベルは155……村に150が多く出現していたのなら、かなり苦戦していたに違いない。

 緊急事態という事もあり、イニシヤは自身のレベルを伝え、共に戦う事を考えていた。


「……開いている。確かに閉めたはずなんだが……まさか!!」


 そういうと父さんは扉を開け、中へと駆け下りていった。


「ちょ! 父さん?!」


(早い……!)


 筋肉が出来上がっていない子供の走力では限界があり、父さんはあっという間に地下部屋の通路の奥へと消えていった。


「俺も……俺も戦わなきゃ皆死ぬ……!」


 イニシヤはそう思いながら全力で走り、その先の角を曲がった。


「おや? マダだれかイマシタカ」

「なんだこいつは……」


 闇の瘴気に纏われているそいつは2.5m程の身長があり、父さんを片手で持ち上げていた。

 一見、木の枝の様に細い手だが父さんはその持ち上げられた手から逃れる事が出来ていない。


「に、逃げろ……ここは父さんが何とかする……!」


――――

名前:闇の道化(分身)lv178


ステータス平均:180


スキル

・シャドウスパイク

瘴気の槍を身体のどこからでも出現させる。

――――


「父さん! 無理だそいつは……!」


――ザシュッ!!


「あ……ああ……!」


「手ごたえがナイデスねぇ。私の分身を出すマデもありませんデシタネ」


 父さんは闇の道化の細い腕で真っ二つにされ、俺の目の前で絶命した。


「にしても、ここで強い成長反応をミタと言っていマシタガ、そのように見える奴はイマセンデシタねえ」


 闇の道化はそんな独り言を話しながら俺には見向きもしない。後ろで死んでいる村人たちの遺品をあさっている。

 イニシヤはそいつから目を話す事が出来なかった、ただ恐怖で怯え動く事さえできなかった。


(父さん……母さん……皆……!)


 その瞬間、頭の中に黒い霧がもやつく様な最悪な気分になった。脳に霧がかかったような……。

 だがその違和感のおかげで無理やりにでも頭を回転させ考えようという意識が生まれた。

 その間も体の震えが止まらなかったが、道化は後ろを向いている事はチャンスだと思った。


(やらなきゃ……今しかチャンスはない……)


 イニシヤは震えた手で円を作り、道化にそれを向けた。


「ううン。とにかく……ずっと見られていてうっとしいデスネ。先に裂いてあげましょうカ」


「……ッ!」


「おヤ? なにをしているのデスカ? おまじないですカ?」


 道化が振り返りこちらを見てきた。

 顔には大きな目が一つだけ、その姿は恐ろしく異形なものだった。


(後8秒……!)


 さっきの比ではない。一秒一秒が永遠に感じる程に恐怖していた。


「フフ……恐怖におびえる目、イイデスねえ。ゆっくりと殺してあげマショウか……」


 道化はゆっくりとこちらへとやってくる。

 イニシヤはそいつを円越しにひたすらに見た。


 気が付けば恐怖も薄れ。ただゆっくりとそのまま近づいて来いと……そう考えるようになっていた。


「びくともしませんネ……ホラ? てが届きますヨ?」


「ゼロ……!」


「ン……?」


――ドンッ!!


「グギャァァァ!!!」

「や……やったか!?」

「うぐぐ……イタイ……よくモ……!!」

「し、死んでない……!」


 イニシヤは立ち上がろうとしたが足が動かない。


「くっ……腰が抜けて……ッ! なさけねえ……!!」

「ハァ……ハァ。コロス……殺してヤル……!」

「くそ……!」


 ボロボロになりながらも吹き飛ばされた道化はゆっくりと近づいてきた。


「これでオワリデス……!」


――ザシュッ!!


「ぐ……グガ……」


――ズゥゥン……


「え……? ノティア?!」

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