38 撃退
――月末
イニシヤは瞑想し集中力を高めていた。
「……イニシヤ、もうすぐ1時間前だよ」
「……分かった。そろそろやってみるよ」
1時間前にこのスキルを使用するのはもちろん初めてである。
一気に時間を伸ばしている為、皆かなり緊張している。
「ふう。よし、始めるよ」
イニシヤは手を合わせ軽く目を瞑った。
――極地・解放!
視界がどんどんと暗くなっていく感覚……
心と感覚が重い水に沈んでいくような……そんな感覚がイニシヤを襲った。
(ここまで……同じ感覚……ダ)
その感覚はまた、イニシヤの頭の先まで埋め尽くしていた。
・・・
ふと目が覚めると、イニシヤは真っ暗な沼のような場所に立っていた。
足元から徐々に沼に沈んでいく身体を、イニシヤは一切動かす事が出来なかった。
「ここは……前にも来たような気が……」
周囲を見渡していると。
突然目の前に自分と同じ姿の少年が立っていた。
「君、どうナッテイルノ?」
「それは俺自身が聞きたい。お前は誰だ? 俺の姿をしているが……」
「オレは、キミダヨ。1001レベルからのネ」
「……は?」
そう言いながらもう一人のイニシヤはナイフを取り出した。
依然としてイニシヤ自身は身体を動かす事ができない。
「どうするつもりだ……!」
「交代ダヨ。君の番はオワリ」
ゆっくりとナイフの先が胸に触れる。
「ぐ……!」
そのまま胸に刺さりそうになった時だった。
――キンッ
「ナンダ……!?」
(これ……は防御膜!? ノティアのディフェンスオーラだ。身体の重みが軽減された……!)
――ググ……
「ナンダト……チッ!!」
そういうと、もう一人のイニシヤの姿だったそいつは、突然瘴気を纏い、クイックボールファイヤを放とうとしてきた。
「くそ……うご……け!!」
――バシャ!!
頭部にめがけて飛んできたクイックボールをイニシヤは膝をつく形で、結果的に避ける事に成功した。
「さぁ偽物、覚悟しろ。反撃開始だ!」
イニシヤはすぐさま指で円を作り、偽物を囲った。
「フフ、我々は全く同じステータス……相殺するダケダゾ」
「それはやってみないと分からない!」
偽物はその場から動かない。効果が無い事は十分に分かっているからだ。
だがイニシヤはそのまま囲み続けた。
――エンチャント・マジック
「!?」
「最高のタイミングだ……ステイシー!」
――クイックジャッジメント!
「グガァァァ!!」
偽物から光の柱が発生した。
「グ……ナゼダ……」
「ここは多分、意識の空間なんだろうけど……外のバフは有効みたいでな。さっき、ノティアが試してくれた……次はステイシーも試すだろうと信じていたんだ」
「INTを上昇させるスキルカ……しかし、同一INT値から多少上昇しただけでこのダメージ……」
「30%上昇を舐めるなよ偽物。1900は2470になる。570差だ」
「ダガムダダ……ここは聖地ではナイ。オレハまた蘇ル……」
――シュゥゥ……
偽物はそう言いながら粒子となり消えていった。
消えた場所には真っ黒の水晶玉が一つ転がり落ちていた。
・・・
・・
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