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36 石碑の内容

「誰も居なさそうだ……人の気配は全くない」

「そのようですわね。ほら、あれですわ! さっさと見て帰りますわよ!」


 ステイシーはそう言って王座の方を指差した。

 その場所には王座、その後ろでは大きな石碑が設置させている。

 ここからでも少し見えるが、文字が書かれているようだ。


 王座の横には大きな窓があり、そこは完全に開いている。

 イニシヤは少しその状況に引っかかっていた。


(人の気配がない……無さすぎる……)

「そうだな。すぐに見て帰るぞ」


 二人はすぐさま王座へと移動した。


「文字と……これは地図か?」


 イニシヤは文字を読み始めた。


・・・


「なぁ……ここには王都の在り方とか、歴史について書いているだけだぞ……」

「そうですわね。わたくしが見た時と同じですわ」

「いや、見た事あるのかよ! なら絶対これじゃないって分かるじゃないか……」

「でも……イニシヤ、裏を見て欲しいのですわ」


 そういってステイシーはイニシヤを呼んだ。

 

 石碑の裏を覗き込むと、別の文字が描かれていたのだ……。


――

かつての英雄、最後の言葉をここに記す。


王よ。魔物は日々強くなっている。

我々人類は上限レベル1000という業を背負っているが、それを解き放つスキルもまた存在していた。

そして、その解き放つスキルは私とzegerに秘められていたのだ。


これを記した後、すぐに聖地へと立つ。

このスキルは何が起こるか分からない。

もし半年経っても我々が戻らない場合……この聖地へと足を運んでほしい。


仮に死んでいたとしても……我々の装備は無駄にしないで欲しい。

王が相応しいと思う者に、託してくれ。


Darlos

――


「ゼガー……そしてダーロス……?!」

(この名前……闇の道化と同じ……こんな偶然があるだろうか)


「場所は……魔祖の山を指していますわ……」

「魔祖の山……?」

「ええ、童話にも出てくるほどの恐ろしい山……入った者は誰も生きては帰れないと言われていますわ」

「成程……ここからは遠いのか?」

「そうですわね……」

「ええ、ここからだと果てしなく南部に向かう感じですね」

「人里からどんどん離れて行く訳か……」


 イニシヤ達がいる、始まりの街という場所。

 名前にはしっかりと理由があった。


 この始まりの街から、北部に向かって進むと、どんどんと賑やかになり人も増えていく。世界の中心と言えるような都市へと向かう事ができるのだ。

 だが、この始まりの街より南部は一切開拓されていない。

 理由は魔物の他に、劣悪な環境にあった。


 南部へ向かって行くと、大きめの砂漠地帯が現れる。

 そこまでは良いのだが、その砂漠を越えるととんでもない量の瘴気が発生しているのだ。

 レベル300以上は無いと、瘴気の毒で死ぬと言われている。


 馬などももちろん耐えれない為、そこからは徒歩での移動となる。

 公的な資料にはそこまでしか載っていない。

 以降は完全に未知の環境なのだ。


 砂漠まで約2週間、砂漠を越えた後はどれだけ掛かるかは分からない……。


「とにかく、レベル300になれば皆で行けますわ! 時間はかかりますけど、頑張って上げ――」

「ステイシー! 隠れるぞ! 誰か近づいてくる……!」


 二人は最初に来た通路へと身を潜めた。


――バサッ……


 そいつは、真っ黒な翼をバサつかせ、開いていた窓から降り立った。


(魔物……それもとてつもない存在感の……!)


 真っ黒な瘴気を纏ったそいつはゆっくりと王座に着座した。


(見ているだけで震えが止まらない……何なんだこいつは……! これが王……?)


――キィ……


 扉が開く音がした。


「飛べるのは羨ましいデスネ」

「貴様はまだレベルが足りていないのだ。言葉も聞き取りにくくてかなわん。さっさとレベルを上げろ」

「スイマセン。ガンバッテハイルンデスガネ」


 扉から入ってきた奴には見覚えがあった。


(ダーロス……! どうしてここに!!)

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