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――夏季3刻 月末 ブラッドゾーン後……


「日が変わるまであと1時間ちょっとか」

「今日も30分前でやるのっ?」

「いや、今回は1時間前にやってみるよ。何となくだけど……一線越えれば何か見える気がしてて……上手く説明できないんだけども……」

「ならぼくたちもまた近くで……」

「いや! 今回は一人でやらせてくれ……!」

「えー? 大丈夫だよ! いつも何もないしっ!」

「そうですわ! むしろ一人にしては心配ですわ……!」

「いや、その気持ちが油断を生んでいるんだ。頼む! 12時回ったら様子を見に来て欲しい!」

「……そこまで言うならしょうがないねっ」

「ありがとう!」

「異変を感じたら12時回ってなくても様子を見に行きますわ!」

「ああ! じゃぁちょっと行ってくる!」


 そういって俺が目指したのは、リセットの時にいつもすごしていた丘だ。

 最近は家でリセットばかりだったが、ここは静かで集中できる。


 それに……。

 俺が二人に何かしているのは間違いない。

 感覚的にそれは理解できているのだが……頑なに話してくれないのだけはもやっとするな……。


「さて……さっさと始めよう」


――極地・解放!


「ぐ……だめだ……マタ、ノミコマレ――」


 視界がどんどんと暗くなっていく感覚……

 心と感覚が重い水に沈んでいくような……そんな感覚がイニシヤを襲った。

 いつもはそれに埋め尽くされる前にリセットされていたが……

 今回は1時間、その感覚に耐えなければならない。


「……アア、この堕ちる感覚……抗いガタイ……」


・・・

・・


「ここは……」


 ふと目が覚めると、イニシヤは真っ暗な沼のような場所に立っていた。

 足元から徐々に沼に沈んでいく身体を、イニシヤは一切動かす事が出来なかった。



「頭は冴えている……夢なのか……?」


「夢じゃないよ」


 突如、目の前に自分と同じ姿の者が現れた。


「やっとここまで来たね。レベル1000おめでとう。ここからはオレニマカセテ」

「え……?」


 もう一人のイニシヤはそう言うと、突然手を突き出し、胸を突き刺した。


「ガッ……!」

「フフ、これでオレモ、魔王様の……ナンダッ!?」


 その瞬間、空間が突然バラバラに破壊され、消えていった。


・・・

・・


「ん……ここは……」

「イニシヤ! 大丈夫だったの!」

「え……?」


 目が覚めると、そこは家のベッドだった。

 胸には包帯が巻かれており、ズキズキと痛む。


「いてて……一体何が起こったんだ……」

「分かりませんわ……突然大きな音が鳴ったと思ったら、イニシヤが胸にぽっかり穴が開いた状態で倒れてましたの……」

「いまは元に戻ってるよっ! 本当にビックリしたんだから……穴が開いているのに血も一切でてなかったよ」

「何がどうなったんだ……」


 また……思い出す事ができない。

 でも今までにない……何かがきっと起こったんだ。

 俺はそれを、試していかなければならない。


「おはようございます皆さん!」

「あ、ミーナおはようっ!」

「うわ、イニシヤさんその傷……大丈夫なんですか?」

「ああ、多少痛いけど問題なしだよ」

「今日は早いわね。急用ですわね?」

「ええ、そうです! すぐに伝えたいことがありまして……」


 ミーナはそう言って、かなり古そうなスクロールを丁寧に広げていった。


「なになに……消えた英雄たち……?」

「ええ、騎士団の宝物子で見つけたのでこっそり持ってきました!」

「ミーナ……大丈夫かよそれ……」

「後でちゃんと元の場所に戻しますよ! それより見てください」


 そう言われ、スクロールを見始めた。

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