33 失敗
――夏季3刻 月末 ブラッドゾーン後……
「日が変わるまであと1時間ちょっとか」
「今日も30分前でやるのっ?」
「いや、今回は1時間前にやってみるよ。何となくだけど……一線越えれば何か見える気がしてて……上手く説明できないんだけども……」
「ならぼくたちもまた近くで……」
「いや! 今回は一人でやらせてくれ……!」
「えー? 大丈夫だよ! いつも何もないしっ!」
「そうですわ! むしろ一人にしては心配ですわ……!」
「いや、その気持ちが油断を生んでいるんだ。頼む! 12時回ったら様子を見に来て欲しい!」
「……そこまで言うならしょうがないねっ」
「ありがとう!」
「異変を感じたら12時回ってなくても様子を見に行きますわ!」
「ああ! じゃぁちょっと行ってくる!」
そういって俺が目指したのは、リセットの時にいつもすごしていた丘だ。
最近は家でリセットばかりだったが、ここは静かで集中できる。
それに……。
俺が二人に何かしているのは間違いない。
感覚的にそれは理解できているのだが……頑なに話してくれないのだけはもやっとするな……。
「さて……さっさと始めよう」
――極地・解放!
「ぐ……だめだ……マタ、ノミコマレ――」
視界がどんどんと暗くなっていく感覚……
心と感覚が重い水に沈んでいくような……そんな感覚がイニシヤを襲った。
いつもはそれに埋め尽くされる前にリセットされていたが……
今回は1時間、その感覚に耐えなければならない。
「……アア、この堕ちる感覚……抗いガタイ……」
・・・
・・
・
「ここは……」
ふと目が覚めると、イニシヤは真っ暗な沼のような場所に立っていた。
足元から徐々に沼に沈んでいく身体を、イニシヤは一切動かす事が出来なかった。
「頭は冴えている……夢なのか……?」
「夢じゃないよ」
突如、目の前に自分と同じ姿の者が現れた。
「やっとここまで来たね。レベル1000おめでとう。ここからはオレニマカセテ」
「え……?」
もう一人のイニシヤはそう言うと、突然手を突き出し、胸を突き刺した。
「ガッ……!」
「フフ、これでオレモ、魔王様の……ナンダッ!?」
その瞬間、空間が突然バラバラに破壊され、消えていった。
・・・
・・
・
「ん……ここは……」
「イニシヤ! 大丈夫だったの!」
「え……?」
目が覚めると、そこは家のベッドだった。
胸には包帯が巻かれており、ズキズキと痛む。
「いてて……一体何が起こったんだ……」
「分かりませんわ……突然大きな音が鳴ったと思ったら、イニシヤが胸にぽっかり穴が開いた状態で倒れてましたの……」
「いまは元に戻ってるよっ! 本当にビックリしたんだから……穴が開いているのに血も一切でてなかったよ」
「何がどうなったんだ……」
また……思い出す事ができない。
でも今までにない……何かがきっと起こったんだ。
俺はそれを、試していかなければならない。
「おはようございます皆さん!」
「あ、ミーナおはようっ!」
「うわ、イニシヤさんその傷……大丈夫なんですか?」
「ああ、多少痛いけど問題なしだよ」
「今日は早いわね。急用ですわね?」
「ええ、そうです! すぐに伝えたいことがありまして……」
ミーナはそう言って、かなり古そうなスクロールを丁寧に広げていった。
「なになに……消えた英雄たち……?」
「ええ、騎士団の宝物子で見つけたのでこっそり持ってきました!」
「ミーナ……大丈夫かよそれ……」
「後でちゃんと元の場所に戻しますよ! それより見てください」
そう言われ、スクロールを見始めた。




