32 消えた1位
「とにかく、やる事はこの二つだな」
・当分は3人のレベル上げ。 目指せ250レベル!
・[極地・解放]を月末に試す。
「あとはミーナがなんとかブラッドゾーンの時に俺達とこっそり合流出来ればいいんだが……」
「それには私、考えがあります! 任せてください!」
「お、そうなのか?」
「ええ、必ず合流致します! これ以上離される訳には行きませんからね!」
「わかった、じゃぁそれは任せるよ!」
「ねぇ、ちょっとランキングを見て!」
ノティアは焦るようにそう言った。
言われるがままに俺達はランキングを見た。
「え……? 1位のヒュージって人、レベル822になってる!」
「先月見た時もこの人が1位だったんだけど、その時はレベル622だったよ!」
「じゃぁ、たった1ヵ月で200レベルも上がったって言うのか……?」
この数字は本当にあり得ないと俺達は理解していた。
レベル120前後から目に見えて上がりにくくなったノティアやステイシーの事を考えると、
レベル600以降の必要経験値は途方もない量が必要なはずだ。
経験値が10000倍にでもなってない限りは……。
「まさか、このヒュージって人も経験値に凄い倍率が……」
「……その可能性が高そうですね。しかし、急に伸び始めたのが気になる所ですね……」
「いや、でもこれは良い事じゃないか? 敵には1000レベル越えがいる。一人でも強い人が人類には必要だ」
「そうだね! もしかしたら共闘する日が来るかもだねっ」
「だな! とにかく俺達も頑張ろう!」
夏季1刻……俺達のレベル上げはまた始まった。
・・・
・・
・
――2ヵ月後 夏季3刻
「ぐ……だめだ。一切記憶が残ってない……!」
もはや修行の一部となったリセット前の極地開放。俺はリセットがあるから正気を取り戻せるが……リセットされない他の人がこうなっちまったらどうなるんだろうか。
そして……この朝はいつも二人が気まずそうにしているのも何だが居心地が悪い……絶対俺が何かしでかしているはずなのに、そこは全く教えてくれない……。
「ん……あれ」
俺は月初なので更新されたランキングを見ていた。
前月1位だったヒュージ、レベル952……そいつの表示が消えており、2位が1位に変わっていたのだ。
「ヒュージって人がランキングから消えてる……もうすぐ1000だったのにどういう事なんだ?」
「本当ですわね……ランキングから消えた……つまり……」
ステイシーが話そうとした時、うちの扉がバンと開いた。
「ランキングから消えたという事は、亡くなったという事ですね……」
「ミーナ!」
「わたくしが言おうと思ったのに……」
「そうか……死んだらランキングから消えるのか……」
「信じがたいですがそうでしょう」
「あんなにレベルが高かったのに……あいつらにやられちゃったのかな……」
「考えたくないがな」
しばらく沈黙が続いた。
「さぁここでぼーっとしてる場合じゃないですわ。ブラッドゾーンも幸いレベルが上がってませんし、わたくしたちもその間にしっかりとレベル上げですわ!」
「ステイシーの言う通りだな! よし、今月も頑張るぞ!」
「おー!」
とにかく俺達が出来る事はレベルを効率よく上げる事だけだ。
そして……極地開放をしても、意識を保てるようにしなければ。
・・・
・・
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――最上級ダンジョン最下層
「……」
「オヤ……見ない顔デスネ」
闇の道化ダーロスの前にどす黒い瘴気で覆われた魔物が黙って立っている。
「マダ、話す事も出来ない……新参者カ」
「……」
「マァヨイ。歓迎いたしますよ。ワタシも最初はソウデシタシ。キナサイ」
ダーロスに言われるがまま、魔物はゆっくりと歩き始めた。
・・・
・・
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