30 試しに
――リセット10分前
「よし、やるぞ……!」
その様子をステイシーとノティアはじっと見ている。
何かあっては危険なので、離れる様に言ったんだが聞いてくれなかった……。
狂暴化して襲ったらどうするんだよ……。
・・・
「極地・解放!」
両手を胸に当て、イニシヤはスキル名を叫んだ。
――シュゥゥゥ……
すると、イニシヤの身体から黒い瘴気が漂い始めた。
「ぐ……ぐググ……!」
「イニシヤ!?」
ノティアとステイシーは心配して寄って来ようとしたが、イニシヤは呟くようにそれを抑止した。
「マテ……! 寄らないでくれ……!」
瘴気はイニシヤを飲みこむように収束していく……!
――ボンッ!!
「きゃっ!」
そして、その瘴気は一気に爆発するように四散した。
ノティアはすぐさまその場所を見たが……。
「イニシヤが居ない……!」
その場所にイニシヤの姿は無かった。
「きゃっ!」
ノティアがそう思った瞬間、ステイシーが声を出した。
「うまそうだな……ステイシー……」
イニシヤはステイシーの顎をくっと上げ、ステイシーをじっと見ている。
「イ……イニシヤ、一体どういうつもりですの……?」
イニシヤからはうっすらと黒い瘴気が漂っている。
髪の色もより深い黒色に変貌しており、遠目で見ると一瞬人型の魔物に見間違えてしまう程だ。
「イ、イニシヤ――」
ノティアがイニシヤを呼んだその時だった。
「んん――っ!?」
イニシヤはおもむろにステイシーの唇を優しく噛んだ。
そして、そのまま開いた口に絡めるように舌を入れた。
「は……はひ……」
ステイシーはあまりにも突然な事態にされるがまま……虚ろな目になり膝から崩れ落ちそうになった。
――グッ
イニシヤは崩れ落ちそうになるステイシーを腰から支え、横にあった机に座らせ舌を絡ませ続けた。
――チゥ……
唇を離した時、イニシヤとステイシーの舌先を繋ぐように一本の糸が引いていた。
ノティアはそれを、顔を赤らめ何とも言えない表情でぼーっと見つめていた。
「はぁ……はぁ……」
ステイシーはそのまま机に寝転がってしまった。
「ステイシー、続きは後で……ノティア!」
イニシアはそう言ってノティアの方へも近づき、顎をくいっと上げた。
「イ、イニシヤ……ぼく……」
その瞬間、イニシヤの身体が白く光りはじめた。
時刻は0時……リセットが始まったのであった。
・・・
・・
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