28 今回は皆で
――月末 ブラッドゾーン当日
「すごーい! 沢山人が集まってるね!」
「ノティア、あまり大声で話さないようにな。目立たない様にしないと動きにくいからな」
「ミーナはこちらに合流は難しそうですわね。あそこで大人数に作戦、指揮をしていますわ」
ステイシーの言う通り、ミーナは大忙しに見える。
とにかく、俺達は俺達の仕事を全うしよう。
フード深く被り、ゴーグルをつけた俺達はある意味目立ってしまっていたかもしれない。
皆が重装備の中、比較的軽装だったのと、身長がどう考えても子供だからだ。
「どこに現れるか分からないけど、ここから離れよう。高台で待つのがベストだ」
「はーい!」
そうして俺達3人は人だかりからこっそりと抜け出し、高台を目指した。
・・・
「あと5分で始まる。もしここがブラッドゾーンの範囲内ならすぐに撤退し、その後入場する」
「わかりましたわ」
「経験値の配分方法が分からないから、二人とも俺にバフを掛けるのはブラッドゾーンに入ってからだ」
「まかせてっ!」
経験値を得るには、魔物に攻撃、止めを刺すほかに、倒した者に対してアシストをする方法もある。
幸いミーナ以外の二人はバフスキルがある為、俺にバフをかけてもらった後殲滅すれば3人に経験値が入るのだ。
「このタイミングでの狩りはやる気しなかったけど、二人がどれだけレベルが上がるのかが結構楽しみだ」
「わくわくだね!」
――ゴゥン……ゴゥン……
「! 始まるぞ!」
その瞬間、うっすらと地面に線が現れ始めた。
「だめだ! ここはブラッドゾーンの内になる。後退するぞ!」
「了解!」
すぐさま後退し、線の外側まで走った。
――ズズ……ブォン
「これがブラッドゾーンなんだね……」
「ああ。あの真っ赤な壁の中に入るんだ。ここから多分30分くらいかけて騎士団たちが配置、そして突入している」
「皆の突入は待つの?」
「前回は待ったんだ。けど、今回はすぐに入るよ! 入ってない間に殲滅するのが一番死者が出ないからね」
「だよねー! じゃぁ入ろう!」
「よし、目指すはさっきの高台だ!」
そうして、間髪入れずに俺達はブラッドゾーンへと入った。
――クイックサーチ!
――――
名前:シャドウゴッドウルフlv400
ステータス平均:401
スキル
・シャドウゴッドクロー
とてつもない範囲を切り裂く
――――
「レベル400がごろごろ居やがる……絶対に交戦するな! 一気に高台まで行くぞ!」
そうして俺達は一目散に走って高台へ向かった。
「グオオオオ!」
「イニシヤ、やばいですわ! 凄い数の狼が追いかけて来てますわ!」
「いい感じにまとまってるな……! 二人とも! バフをしてくれ! 一旦処理する!」
恐ろしい程のウルフが追いかけてきている。こんなに居たか……?
ネットゲームでモンスターをめちゃくちゃ引き連れている状態を思い出すな……。
(ノティア)――ディフェンスオーラ!
(ステイシー)――エンチャント・マジック
「よし!」
そのまま俺は走りながら後方に向き、両手で円を作った。
(イニシヤ)――ワイドクイックジャッジメント
6秒後、ウルフから光の柱が伸びた。
その光の柱は集団になっていたウルフ全てから発生した為、一見するととてつもなく巨大な一つの光の柱に見えた。
――――
レベルアップ
イニシヤ
610 → 710
ノティア
116 → 120
ステイシー
82 → 90
――――
「うわ! 凄いレベル上がったよ!!」
「わたくしもですわ!」
「よし、このまま高台に行って全処理だ! きっともっと上がるよレベル!」
高台は目の前だ。俺達はそのままスムーズにその高台の上へ向かった。




