22 その夜
――その日の夜
「……ちと熱すぎるか……」
――クイックアイスボール
――チャポン
「よし、いい感じだな! ノティア、風呂が沸いたよ」
「わーい! いつもありがとう! ステイシーちゃんも一緒にはいろー!」
「一緒に……?!」
「うん! 結構広いんだよ!」
「二人ともごゆっくり」
ステイシーはノティアに連れられ、お風呂場へと向かった。
風呂の水や火は基本的に俺のクイックボールで発生させている。
こういった時、本当に便利なスキルだ。
「いいなー! ステイシーちゃんおっきいね!」
「な! そんな事大声で言ってはいけませんわ!」
遠くで声が聞こえている。
「……さて、飯の準備をするか……」
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「ステイシー、ベッドは一つしかないから二人でシェアしてくれ」
「イニシヤさんは何処で寝るつもりですか?」
「俺の事は気にしないで」
「3人でも十分に寝られるよ! イニシヤ!」
「何言ってるんだ……二人ならまだしも女の子二人と一緒には寝れないよ。むしろステイシーには一人のベッドが用意できない時点で申し訳ないっての」
「いえ、暖かい布団で寝られるなんて久しぶり……本当に感謝していますわ。しかし! 家主を差し置いてわたくしがここで寝る訳には行きません!」
「いや……大丈夫だって……」
「なら僕が真ん中に行くよ! 左右で寝ればあまり気にならないでしょ?」
「いいアイディアですわ! それならイニシヤさんもいつもと同じだし大丈夫でしょう?」
「……わかったよ。ありがとうな二人とも」
そう言って俺達は3人で一つのベッドで寝る事となった。
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左を見ると、俺の腕に巻き付くステイシーが居て、右を見るとノティアの足がある……。
ノティアの寝相の悪さを考慮していなかった……。
「……」
俺はステイシーからそっと腕を外し、その場から離れようとした。
「お父さん……ごめんなさい……行かないで……」
「……ステイシー……」
寝言で涙を流すなんてな……。
俺はそっとステイシーの頭を撫でた。
すると、苦しそうな寝顔は、安堵したような表情に変わった。
そして、俺はそのまま寝てしまった。
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――翌朝
「おはよう……」
「おはようイニシヤ!」
「おはようございます……」
俺は、既に朝食が用意されたテーブルにつき、食事を取り始めた。
その時、ノティアがすねたような表情で質問してきた。
「ねぇイニシヤ」
「うん?」
「なんでステイシーちゃんと抱き合って寝てたの?」
「ぶはッ!?」
思わず口に含んでいたスープが飛び出してしまった。
「嘘……? そんな事してた俺……?」
「してたよ! 足と身体を絡ませるように抱き合ってて……僕とぎゅって寝る時よりなんかすごかったよ!!」
ステイシーは顔をうつ伏せにし、赤面している……どうやら本当の様だ……。
「い、いやでもノティアが寝相悪くて俺を押してそうなったとかだって! そもそも真ん中に居たノティアはどこに居たんだよ」
「僕は……ベッドの下……」
「寝相悪すぎだっての! とにかく、ごめんステイシー! わざとじゃないんだ。どうか許してくれ……」
「いえ、大丈夫ですわ……」
(頭を撫でで貰ったのが嬉しくて、わたくしから抱きついた事は内緒ですわ……)
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