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2 6年前の惨劇

「あっ! ちょっと待ってね!」


 ノティアはそういうと、俺達の住む木造の小さな家に先に入っていった。

 この場所も少し高い丘の上であり、そこのポツンと一軒俺達の小屋がある。

 この家は俺が高レベルだった時に魔法を駆使して建てた簡単なつくりの家だ。


「毎日飽きないね……」


 俺は少しその場で待った後、小屋の扉を開いた。


「イニシヤ! おかえりっ! ご飯にする? お風呂にするー?」

「ただいまノティア。とりあえず、ご飯にしよっか!」

「はーい!」


 このやり取りは毎日のようにしている。以前、ノティアの両親が毎日やっていた行動らしい。

 とても仲が良い夫婦だったんだな……。

 俺達は16歳の子供だ。こうやって二人だけで生きているだけでも奇跡に近い。


「……」


 そんな事を思いながら、俺は丁度6年前、10歳になるときに起こった惨劇を思い出していた。


・・・

・・


 俺はいわゆる転生者だ。まさか自分がこんな場所へ来れるとは思っていなかったから驚きだ。

 記憶がハッキリしてきたのは5歳位だろうか。それまでは普通の子供だったに違いない。

 俺の両親もとても良い人達で、毎日が平和で楽しかった。

 そして、隣の家に住んでいたノティア、この子ともずっと一緒に遊んでいる。

 というのもこの村には俺とノティアしか子供は居なかった。

 いってしまえば俺達は村のアイドル的な存在だったな……。


 9歳の誕生日、俺は初めて父親の狩りについていった。その時に、自身のステータスの見かたやパネルの使い方を学んだ。

 この世界では生を受けた瞬間、神の加護を受け、この能力を皆分け隔てなく得るようだ。


 その時、初めて自身の特別効果を見た。

 経験値9880倍って奴を……


「父さん、特別効果ってなんだろう?」

「特別効果……? それは稀にもらえる神様の贈り物だね!! すごいよ! どんな特別効果がついていたんだい?」

「えっと、経験値が倍? になるんだって!」

「へー! すごいな! 魔物を一体倒すと二体分の経験値を得るという事か……とんでもなく凄いな……」


 まぁ、2体どころか9880体分になるけどね……。

 とにかく! 父さんの驚き方を見ると倍でも相当凄いっぽいな……! これは嬉しい!


「でも聞いた事もない特別効果だよ! 本当は10歳に自身の持つ最初のクラスが発現するから、その時に実戦と思っていたけど、今日から少しずつやってみるか?」

「うん! 俺も早く戦いを覚えたいよ!」


「よし分かった! 父さんは戦士だから、剣しか教えることが出来ないが、適正外だったらごめんよ?」

「大丈夫だよ!」


 そういってその日から父親との狩りについていくようになった。

 少し後から、ノティアもついてくるようになったが、村で一番強かった戦士である父親についていくという事で誰も止めたりすることは無かった。


 それから約1年後……俺が10歳になる誕生日の前日だった。


「イニシヤ! どんなクラスになるかが楽しみだな! そういえばレベルはいくつになったんだ?」

「うん! 楽しみだよ! えーっと……ノティアのレベルは?」

「ぼくは10になったよ!」

「おお、やっぱ倍くらいなのかな? 俺は15だよ!」


 本当は180になっていたけど、それは伏せることにしていた。あまりにもかけ離れて居ると異常な奴って思われそうで怖かったのだ。


「おお、やはり倍は大きいみたいだな! ノティアはナイトだったね。前も言ったけど凄く珍しいクラスよ? つよーい冒険者になれるかもしれないわね!」

「ぼくはナイトになって、イニシヤも守るんだよっ!」

「あっはっは! 頼もしいな! うちのイニシヤを頼むよ!」

「父さん……また恥ずかしい事を……」

「それより、本当に無理をしては駄目よ? 沢山ダメージを受けると突然来るんだから……ちゃんと黄色になる前に逃げてるかい?」

「うん! 大丈夫だよ! ちゃんとケージは見てるし!」


 母さんが言う突然来るというのは、怪我の事だ。この世界ではステータスに俗にいうHPバーが存在し、そのケージは赤、黄、緑の3色に分かれている。

 HPバーが緑であれば、どれだけダメージを受けても怪我が瞬時に治る。

 ところがダメージを受けすぎて黄色までおちると、再生能力が少し落ち、赤まで行くとまったく再生しなくなってしまう。

 赤まで来ると、ダメージが治らない為、時間で徐々にHPがさがってしまい、それが0まで行くと死だ。


「あはは! 大丈夫だ! 父さんがついてるしな!」


 俺の誕生日の日は目前だった。夜中にもかかわらず皆で祝ってくれた……というか宴会みたいになっていたけどね。

 俺自身も自分が何になるのかすごく楽しみで、ワクワクしていたのを覚えている。


「ねーあっちの丘の上で星をみようよイニシヤ!」

「いや、でもクラスを見ないと……」

「まぁまだ30分はある、12時前に戻って来てくれればいいさ!」

「わかったよ父さん! じゃぁ行こうかノティア!」

「わーい!」


 そうして俺達はいつも二人で星を見ていた丘へと向かった。


・・・


「綺麗だねー」

「そうだな……」

「イニシヤは将来何になりたいの?」

「俺? うーん。考えたことないけど、この村で平和に過ごせればいいかなぁ」

「えー? つまんないよそれじゃ!」

「ノティアは何になりたいの?」

「うーん。ぼくもここでイニシヤと一緒に暮らせればいいかなっ!」

「あはは。人に聞いておいてなんだよそれ」


 星を眺めながらノティアとの他愛もない会話をする時間は本当に好きだった。


――ズゥゥゥン!


「!? なんだ今の大きな音……」

「イニシヤ……怖いよ……」

「ちょっと見てくるよ。ノティアはここに居て!」

「あっ……イニシヤ!」


 俺はそのまま音のした方へと向かった。

 音がした村の方へ……。

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