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18 また来客者

――イニシヤ達の家


「はい! お茶をどうぞ! お菓子もあるよ!」

「有難うございます」

「有難く頂戴するわ」


「……」


 テーブルがそこまで広くない為、3人の女性たちは椅子に座り、イニシヤはベッドに腰を下ろしている状況だ。


「とりあえず……自己紹介でもしようか。俺はイニシヤ。クラスはクイックキャスターだ」

「え? 自己紹介、次はぼくね! ぼくはノティア! クラスはナイト――」

「待ちなさい、自己紹介をする時はレベルも伝えるのがマナーですわ」

「それはパーティーメンバーでの自己紹介だろ? 今はそう言うのじゃないだろう」


「……そうですわね。ノティアさん、話を折ってしまいましたわね」

(やってしまいましたわ……! わたくしはまだ赤の他人……家に上げてもらえて少し距離感を見誤りましたわ……!)


「ううん! 改めてぼくはノティア! クラスはナイトだよ!」

「ナイト……? ナイトはブレイク系のスキルを使えないはずですわ……」

「ブレイクケイってなに! お菓子?」

「ブレイク系スキル! 相手のステータスダウンや発動前のスペルを止めたりするスキルの総称ですわ!」

「え? え? ぼくそんなスキルを――」


 ノティアが言葉を言い切る前にイニシヤは割って入った。


「まぁまぁ、そんな詳しい話は今度で良いだろ!」

「俺達は名乗ったぞ。お前も誰なのか教えてくれよ!」

「あの……私は良いんですか?」


 ミーナはそっと手を挙げて伺った。


「ミーナは騎士隊長! お菓子くれる人!」 


 ノティアは元気よくミーナを指し答えた。


「……こんな感じで、ミーナの事はしっかり理解しているよ」

「うう……ノティアちゃんからの評価が何とも言えないですね……」


「それに二人は知り合いだろ? 自己紹介は不要だろ」

「……ええ、そうですね」

「わかりましたわ。わたくしはステイシー=エント。ミーナの言う通り貴族……だった者ですわ」

「だったって事は貴族では無くなったのか」

「ええ……わたくしも色々ありましたの。今はただの冒険者ですわ」

「そうか……」


(ステイシーの服は麻布のローブ……正直元貴族と言われても信じられる部分が無い……しいて言えば話し方くらいか……)


「まぁとにかく! あの時は本当に助かったよ。有難う」

「え! ええ……困っている方が居れば助けるのは当然ですわ」


(ステイシーはあまり人の目を見て話してくれないな……)


「所で……ステイシーもあのダンジョンにはよく潜っているのか?」

「そうですわね……」

「てことはこの辺に住んでるのー?」

「ええ、そうね。最近はずっとこのあたりに住んでいるわ」

「この辺……? 俺達はこのあたりを殆ど把握しているつもりだ。家なんて無いとおもうんだけど……」

「川が二つに分かれる場所は分かるかしら?」

「ああ、よくあの辺には行くけど……」

「そこの丸太で出来た家に住んでいるわ」

「丸太の家……って、え?」


 イニシヤはその場所を思い出していたが、心当たりは一応あった。

 だがそれは家とはとても呼べるものではない……。

 地面に丸太が刺さっており、それに三角に折った布を斜めに掛けているだけ……。


「もしかしてあの丸太に布が斜めにかかった奴の事?!」

「……そうですわ」

「ステイシー様……そのような所で……」

「いや……あれは家とは……」

「ステイシーちゃん! あんなところ家とは言えないよ! あそこしかないなら家に泊まりなよ!」

「ノティア!?」

「じゃぁ何? あそこにこれからも住めって言うの? 可哀そうだよ!」

「それは……そうだが……」

「そんな……迷惑ですわ」

「迷惑じゃないよ! そんなに広くないけど、ここは壁と屋根があるだけあそこより遥かにましだよ!」


 ノティアはステイシーの手を握り熱弁した。

 そして、イニシヤの方をじーっと見ている……。


「……まぁ別に一人増えようと問題ないけどな、でも……」

「じゃぁお願いしますわ!」

「即答?!」

「じゃぁ決まりね! ステイシーちゃん、ようこそ! 荷物はあるの?」

「丸太の家に置いてあるわ」

「じゃぁ一緒に取りに行こう!」

「ありがとう、ノティアさん……」


(ノティアは一度決めると絶対に曲げない……だが、会って数日、全然知らない人を家に泊めるなんてどうかしてる……)


・・・

・・


 家にはミーナとイニシヤが取り残された。

 少しの沈黙が続いた後イニシヤはミーナに問いかけた。


「ミーナ、こんな事聞いていいのか分からないんだけど、ステイシーは何故そんな所で一人で……」


 イニシヤは一番気になっていた事を質問した。ミーナは少し迷ったが、話し始めてくれた。


「私も詳しくは分かりません……ですが、父親に決められた結婚相手と結婚する直前で姿を消したとは聞いています」

「そうだったのか……皆、決められた結婚相手と結婚するのか。貴族ってのは大変だな……」

「いえ、全員では無いみたいですね……ステイシー様はその……」

「落ちこぼれだったのよ」

「ステイシー?!」


 イニシヤとミーナは思ったより早く帰ってきたステイシーにかなり慌てていた。

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