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17 救世主

(ステータスが圧倒的に負けているとどうしようもない……! こればっかりはこの世界では覆せないんだ……!)


「まずはキミカラです」

「くそっ……!」


 万事休す……そう思った瞬間だった。


「貴方、もう一度最初に放ったスペルを使いなさい!」

「は……? 君は一体……?」

「いいから! さっさとしないと死ぬわよ!!」

「いやでもステータスが負けている……その場合スペルは俺に全部跳ね返ってくるんだよ!」

「次の一撃は絶対そうならない! いいから撃つのよ!」

「くそ! わかったよ!」


 イニシヤは突然現れた銀色のセミロングヘアの少女の言う通り、再度クイックジャッジメントの構えを取った。

 その瞬間、少女はメイスを構えた。

 

(???)――エンチャント・マジック

INTの数値を30%UPする(重複不可)一度スペルを使用した後、すぐにINT値は元に戻る。


(どうにでもなれ!)


(イニシヤ)――クイックジャッジメント!


――チュドン!!


「な……! 俺のINT値が勝った……?!」

「まだよ! 多分後3発は食らわさないと倒せないわ!」

「え? ああ!」


 イニシヤは言われるがままに再度構えを取った。


「まって! わたくしが間に合わないわ!」


 少女はそのまま再度メイスを祈るように構えた。


「俺のINTが勝ったのは君のおかげなのか……?」

「それが私のスペルなのよ! 終わってから説明してあげるからまずは奴を倒しなさい!」

「ああ!」


(???)――エンチャント・マジック

INTの数値を30%UPする(重複不可)一度スペルを使用した後、すぐにINT値は元に戻る。


「よし、いいわよ!」

「おう!」


(イニシヤ)――クイックジャッジメント!


――ドン!!


「グギャアアアア!!! クソ……ナゼダ……!!」


「その調子よ!」

「ああ!」


 イニシヤと少女はそのまま二回、続けて攻撃を行った。


・・・


――シュゥゥゥ……


 煙が立っているその場所には綺麗な状態で闇の道化の死体が転がっていた。


「やった……!」

「ん……あれ? ぼく、寝てた……?」

「ノティア、何とか倒せたぞ」

「すごい! さすがイニシヤだね!」

「いや、助太刀してくれたこの方のおかげだ……ありがとう」

「わたくしの前で死なれては夢に出てきてしまいますわ」

「すごいねお姉ちゃん! ありがとう!」

「というか、こんな所で一人で何を?」

「え!? えっと……わたくしもここを狩場にしているのよ」


(なんだろう……妙にそわそわしているな……)


(一緒に狩りたかったけど、声をずっと掛けれなかったなんて言えませんわ……!)


「イニシヤ君! 闇の道化は完全に死んでいるようです! ほら色々は剥ぎ取ってきましたよ!」


 闇の道化をあさっていたミーナがこちらへと戻ってきた。

 そして銀色の髪の少女を見た瞬間、驚いたような顔を見せた。


「あ……貴方は……!」


 ミーナが指をさすと、少女はイニシヤの陰に隠れた。


「エント家のステイシー様じゃないですか!!」

「え? ミーナこの人と知り合い?」

「知り合いも何もこの方は貴族のエント家の……」

「"元"貴族よ。ミーナ」

「あ……失礼いたしました……」


 少しの間二人の間で重い空気が流れた。


「ねえ皆! とにかく一旦帰ろうよー! ぼくもう疲れちゃったよ……」

「ああ、ノティアの言う通りだ。奴の増援が来ないとも限らない。とにかく一度家へ戻ろう」


 そう言って俺達はダンジョンを後にした。

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