15 仇
――――
名前:シャドウウォーカーlv100
ステータス平均:90
スキル
・シャドウソード
瘴気の漂う剣で斬りかかる。
――――
「シャドウウォーカーですよ……! 2体もですか。確か、レベルは100前後ですね」
「ぼくが構えるよ!」
「よし、こっちへ来る前に一発魔法を入れる!」
イニシヤはそう言って、人差し指と親指で円を作り、その円を風船を膨らますように吹いた。
すると、すぐに火の玉が掌に生成された。
「撃つぞ!」
――クイックファイヤボール!
真っ直ぐに放たれた魔法はシャドウウォーカーに着弾し、一発で消滅させる事ができた。
「え……?」
一瞬で死んだ敵をみて、ミーナは目が丸くなっていた。
(しまった……そりゃ即死するよな。400もレベルに差があるし……)
「ウォーカーを一撃で……なんという火力ですか……! 火の魔法、ファイヤボールに見えましたが、魔方陣を描かずに撃ってましたよね……?」
「今のがクイックキャスターの技なんだ。指で丸を作ってそこに魔力を溜めて発動するんだよ」
「魔方陣を書かなくていい上に威力も高い……素晴らしいクラスですねクイックキャスター! 羨ましいですよ……!」
「あはは。ありがとう! でも今のはたまたま致命打を与えられただけ……次は一撃で倒せないかも。あと次撃つのに少しクールタイムが必要だから……」
「もう一匹は頼んだって事ですね! 任せてください!」
(とりあえずミーナの戦闘センスも見ておきたいから俺はお休みだ)
「ミーナさん少し待って!」
(ノティア)――ディフェンスオーラ!
自身と自身の近くに居る仲間に対して、防御膜を貼る。
「これは……! 有難うございます!」
「グォォ!」
~~シャドウソード!
ウォーカーは剣で斬りかかってきた。ノティアはそれを盾で受け切った。
「ノティアちゃんナイス!」
ミーナはそう言ってウォーカーに飛び込んだ、
(ミーナ)――ビートスタンプ!
垂直に武器を振り下ろす。武器とその周辺の大気を大きく振動させ相手を怯ませる。
ウォーカーは手を広げ硬直した。
ミーナはそれを瞬時に確認し、次の技へと移行した。
「もう一回!」
(ミーナ)――ブーストスラッシュ!
手に闘気を溜め、高速で相手を斬り付ける。
――ザンッ!!
次の技も綺麗に決まり、ウォーカーは消滅した。
「おお……鮮やか!」
「凄いよミーナさん!」
「ふふん。名前だけの隊長じゃないのです!」
「じゃぁ今日はガッツリレベル上げだ!」
「おー!」
その調子でイニシヤ一行は1階を狩場として、どんどんと魔物を狩っていった。
・・・
・・
・
「ふう……今日は頑張りましたね」
「うんうん! レベルも上がったね!」
「お疲れ様。二人とも!」
「ところで、この階段を降りたら地下二階なんでしょうか?」
「まぁ降りて行く階段だし、そうじゃないかな?」
「なるほど……ではいずれこの下へも行きましょう!」
「そうだな! もう少しレベルを上げたらいけるだろうし!」
――カンッ……カンッ……
「階段から音がしますね……」
(何かが登ってくる……階層を行き来する魔物なんて居るのか……?)
階段は曲がりくねっている為、そいつの姿は見えない。だがイニシヤ達はその階段の先から目を離す事ができなかった。
――ガシャ……
階段の壁部分に手が掛けられた。
――ゾクッ
その手は木の枝の様に細い。
「ミーナ! ノティア! 下がれ!!!」
「え?」
イニシヤは声を荒げた。
「オヤ……こんな所にヒトガいるトハ」
「闇の道化……! 何故こんな所に!!」
イニシヤは迷いなくクイックジャッジメントの構えを取った。
光の柱を使った正体がバレるなど考える余裕は無かったのだ。
(今度は一撃で倒れてくれよ……!)
「ナンデスカ? おまじないか何かデスカ?」
(イニシヤ)――クイックジャッジメント!!
(発動まで3秒! 余裕で間に――)
――チュドン!!!
「イニシヤ!!!」
「かはッ……そんな……ッ!」
(俺の方がINT値が低いのか……ッ!?)
技発動後、光の柱が出現した。
だが、光の柱のダメージを受けたのはイニシヤの方だった……。
「オヤオヤ。自爆デスカ。何がしたかったのヤラ」
「お前は……!!」
ノティアは恐ろしい表情で闇の道化を見つめていた。
(イニシヤ)――クイックサーチ!
――――
名前:闇の道化(分身)lv600
ステータス平均:600
スキル
・シャドウスパイク
瘴気の槍を身体のどこからでも出現させる。
――――
(600……!)
「ミーナ! ノティア! 逃げるぞ! こいつには絶対に勝てない!」
「よくもお母さん達を……!」
「ノティアちゃん! 聞こえましたか! 逃げますよ!!」
「よくも……!」
(駄目だ……完全にキレてしまってる……! くそ、どうすれば……!)




