10 胸騒ぎ
「すごいねっ!」
「ああ、これでダンジョンで食料が尽きて途中で帰らないといけない事は無くなるぞ!」
大きなリュックに詰め込んだ食糧は全部この筒へと収納された。
こんなに小さな棒に全てが入っているとは夢のようだな……。
「よーし! これで軽々帰れるぞ!」
「やったね! ダッシュでかえろー!」
そうして毎月恒例の買い物は無事に終了した。
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――春季2刻 月末
――最上級ダンジョン5階
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名前:イニシヤlv620
クラス:クイックキャスター
ステータス平均:710
特殊スペル
・クイックサーチ(相手のステータスを参照できる)
・クイックジャッジメント(自身と相手のINTを参照する。INTの差分、低い方がダメージを受ける)
→手で円を作り、その円に3秒間ターゲットを収めることで発動する
・ワイドクイックジャッジメント(自身と相手のINTを参照する。INTの差分、低い方がダメージを受ける)
→両手で円を作り、その円に6秒間収めたターゲット全員に発動する。差分参照は個々で判定
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「今月は頑張りすぎたな」
「だねー! ゴーグルで視界もいいし、食料も気にしなくていいから奥まで行き過ぎたね! レベルはいくつになったの?」
「620だな! 600超えたのは始めてだ。600で新しい特殊スペルも覚えたしな」
「すごいすごいっ! でも……明日には忘れちゃうんだよね……」
「多分な……」
「まぁ600で新たなスペルを覚えられるという事だけでも分かったし、儲けものだよ。使いたくなったら600まで上げればいいさ」
「うんうん! 頑張ろうねっ!」
「とりあえず、早いけど今日はもう戻るか」
そうして俺達はダンジョンを引き返し、地上へと戻ってきた。
「んん……夕日が眩しいねえ~」
「……いや、時間的には夕日が出るくらいだが、この空の赤さは異常だぞ」
「そう言われてみると……まるで血の色みたいだね……」
毎月、月末になると街の周辺で魔物が大量に出現する。その合図として、いつも空が赤くなるのだが、その赤さが今日は異常だ。
妙な胸騒ぎはする。だが正直、街で人が死のうとどうだっていい……俺とノティアは村のダンジョンに潜り、素材を集めて街で売り捌き、食事を取って眠る……。その生活が出来ればそれでいいんだ。妙に目立つとろくな事は無いだろう……。
「大丈夫かな……ミーナさん達も心配だね。見に行く?」
「……」
まだ夕方ではあるが、疲れがたまっていた為二人でゴロゴロしながら会話をしていた。
「ノティア、月末に現れる魔物の平均レベルを知っているか?」
「えっと……100位だったよね」
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名前:ノティアlv80
クラス:ナイト
ステータス平均:88
スキル
・ディフェンスオーラ
自身と自身の近くに居る仲間に対して、防御膜を貼る。
・ノックバック
武器に力を込め、敵を思いっきり吹き飛ばす。
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「ノティアはまだ80だろ? ミーナさんはもっと高レベルだ。俺も連携なんてできないし、足手まといになるだけだよ」
「そう……だね」
ノティアはよほど疲れていたのか、そのまま眠りについた……。
「……あいつには借りがあるよな……」
イニシヤはノティアを起こさない様に布団をかけゆっくりと起き上がった。そして、ゴーグルを装着し、出かける準備を行った。




