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レンティア同級生に囲われた貧乏作家のぼく  作者: 勒野宇流
食うか食わないか
5/16

(5) お願い

「もちろん、聞ける条件であれば聞くよ。これほど居心地がいいんだから。でも……」

 

「でも?」

 

「でも、レン太のような大富豪が、貧乏人のぼくに頼み事なんてあるのかな?」

 

 おそらくぼくは、同級生のなかで最貧だと自覚していた。なにしろ大学を出たあと、就職もせずに日銭を稼ぐアルバイトしかしていないのだ。あとは原稿料がぽつぽつ。ほとんどのものが金で片が付くこの世の中で、レン太がぼくに頼ることなどほとんどないはずだった。

 

 ぼくの頭にまず浮かんだのは、臓器売買だった。一人暮らし、生活費にすら困窮する貧乏人、20代中頃という体力の充実期、どれをとっても適任者だ。突拍子もない考えだとは思うが、いきなり両腕をつかまれて車の後部座席に放り込まれるという手荒なやり口を喰らうと、考えも過激なものになる。

 

 そう考えれば、すべてつじつまが合う。ここに来て快適な生活をさせているのも、体を痛めつけないためのケアともとれる。どこだろう、腎臓か、肝臓か、目か……。

 

「聞ける条件じゃないかと、思っている」

 

 レン太はニヤついたままだ。あんたは囲われの身で、すべての主導権はこちらにある。その歪んだ笑い顔がそう言っている。

 

「言ってほしいな、早いところ」

 

 ぼくもニヤつき返す。しかしそれは引きつったもので、とても効果を発揮しているとは思えない。

 

「その前に、君の現在の状況を言わせてもらおう。君は昨日、仕事中に携帯をいじっていたことでアルバイトをクビになり、早急に次の働き場所を見つけようとしていた。今月末には、家賃40000円と携帯電話の支払いがある。経済的になかなか追い詰められた状況となっている」

 

 ぼくは口がポカンと開いてしまった。なんなんだ、この男は! どうして自分のことを調べ上げていたんだ! ここまでやるなんて、やっぱり臓器売買なのか!!!

 

「おいっ」

 

 レン太がうしろの黒服に声をかける。クッと首を折り、右側の男がぼくの横まで進んだ。

 

 ぼくは緊張で全身を硬くさせた。首もすくむ。

 

 黒服は内ポケットに手を入れる。なんだ、けん銃か!?

 

 しかしちがった。万札だった。黒服は皿をどけると、ぼくの前に40000円と20000円を並べた。

 

「家賃と、携帯代だ。携帯料金は20000までいかないだろうけど、まぁおまけだ」

 

「こんなもの、レン太にははした金だろう。こんなんで言うことを聞かせるつもりか?」

 

「いやいや、そうじゃない。おれはね、君にお願いをしたいんだよ」

 



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