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レンティア同級生に囲われた貧乏作家のぼく  作者: 勒野宇流
食うか食わないか
4/16

(4) 条件

  

 

 大男2人はどちらも黒いスーツにサングラス。御曹司レン太の用心棒だろう。それにしても、ベタな姿かたちだ。

 

 もしここで、ぼくがレン太の満足する答をしなかったとしたら……。


「彼らは?」

 

 ぼくは薄く笑い続けるレン太に聞く。

 

「あぁ。わが社の社員だ」

 

「それが、どうしてここに?」

 

「彼らは配膳係で、きみの皿を下げに来たんだよ」

 

「そうか。じゃあ、さっさと運び出してもらいたいな」

 

「ここはぼくの家だから、きみに従う義理はないよ。彼らは彼らのペースで仕事をやるまでさ」

 

 レン太は小ばかにしたように、手をひらひらと振る。

 

「ぼくをむりやり連れてきたくせに」

 

 そうなのだ。ぼくは自分の意思でこの屋敷に来たわけではない。ここに来るまでの過程は、拉致された、と言ってまちがいのないものだった。

 

「ちょっと強引にお連れしたのは悪かったと思っている。しかし君はこの3日間、ご飯もしっかり食べて、風呂にも入って、ずいぶん遅寝までしてたじゃないか。それらリラックスした姿を見て、納得してくれたんだなと安心してたんだ」

 

「それは……」

 

 たしかにバイトで疲れ切った体には、なにもかもが心地よかった。それで、いきなり豪邸に連れてこられて、訳が分からないまま、のんびりしてしまったのだ。

 

「まぁいいさ。君に何不自由なくすごしてもらうために、こちらがセッティングしたんだから。ところで質問に戻るけど、その君が残さず食べた食事を、今後も食べたいだろ?」

 

 ぼくとレン太の目がじっと合っている。目が合う時間というのは、実際の時間よりも長く感じるものだ。今もそうだった。

 

「なんの条件もないのであれば、今後も食べたい」

 

 ぼくは通常話す言葉よりも、ゆっくりと言った。

 

「風呂にも入りたいかい?」

 

 ぼくは昨晩の風呂を思い浮かべた。それは例えると、がらがらにすいているときのスーパー銭湯だった。家の狭苦しいユニットバスとちがい、手足が伸ばせるのだ。凝った体が一気にほぐれたような気分だった。

 

「あぁ、同じくなんの条件もないのであれば、また浸かりたい」

 

「あの布団で寝たいかい?」

 

 布団もまた、印象に残るものだった。まったく重さを感じさせないのに、保温性が長けている。日頃の寝不足とも相まって、ぼくは10時間寝続けてしまった。

 

「それも同じだ。条件がないのであれば、今すぐにでも潜り込みたい」

 

 その言葉に、レン太がうんうんと頷く。そして、

 

「じゃあ、条件があっても、それが聞ける条件だったらどうだろう?」

 


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