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レンティア同級生に囲われた貧乏作家のぼく  作者: 勒野宇流
ザ・至れ~り尽くせ~り
16/16

(1) 第1章なんか投げ捨ててしまえ!(まずは)

 

 ぼくはすぐさま書き出した。

 

 秋川史郎ならば、中学生の頃からたくさん読んで熟知している。作家を目指したひとつのきっかけといってもいい。なにしろ膨大な著作物なので、作品1つ1つの内容は覚えていない。でも、その傾向は熟知しているので割合簡単に進められそうだ。

 

 まず、主人公は女子大生。秋川史郎風の作品ならば、それが妥当だ。そこに刑事が絡む。ようやく新米から中堅どころになりかけの、30前後の細身の男。性格は、几帳面か、とんでもなくずぼらか、概ねそのどちらか。今回は几帳面を採ってみよう。エリートな分、融通が利かなくて、気も利かなくて、でも真面目に女子大生を心配する。そして女子大生がおもしろく感じる程度に、振り回される。

 

 主要キャラはそんなところ。年配のベテラン刑事も必要だ。彼女たちがピンチの場面で登場してもらう。場面設定は、基本は首都圏だが、地方都市も少々使う。これがフォーマットだ。多作の怪物秋川史郎は出たとこ勝負でプロットも決めずに書き出すらしいが、ぼくにはそんなことできない。ある程度の筋道をつけておかないと、必ずどこかで引っかかって作品が止まってしまう。並なのだ、ぼくは。己の実力を受け止めて、準備をしなければならない。

 

 それにしても、レン太が秋川史郎を好きだったとは意外だった。学校では、本の話などしたことがなかった。それを知っていれば、もっと深い友達になれたかもしれない。貸しっこしたり、作品のことを話し合ったり。いや、逆に、おれこれ持ってるゼ、これこれ知ってるゼ合戦になってたかもしれない。同好の士は競い合う間柄にもなるから。生活水準から趣味からなにも接点がなかったからこそ、こうやって付かず離れずで長く付き合えているのかもしれない。

 

 フォーマットは紙に殴り書きして、パソコンの前に置く。常に目を通すものは紙の方が楽なのだ。そしてWordで書いていく。第1章は抜かして第2章から。第1章で読み手には登場人物たちの背景がすべて伝わっていると仮定して、書いていく。この方が文章が進みやすい。どういった人物か、どういった状況かということを、説明文ではなく、物語の中でうまく伝えるのはなかなか面倒なのだ。そこで頭を悩ますと、やる気が失せて頓挫してしまう。だから放り出す気を起こさせないため、進めやすい第2章から書いて一気に100ページくらい進めておく。そうすればもったいなくてお蔵入りになることを防げる。文章に書くコツはたくさんあるだろうが、その一つは、第1章なんか投げ捨ててしまえ!(まずは)  だとぼくは思っている。

 

 ぼくは第2章をあらかた書きあげて、せっかくだからと携帯でホッピーを頼んだ。

 

 黒服が来たらイヤだな、あの執事のおじいちゃんが来てほしいなと思いながらふかふかベッドの感触を楽しんでいると、部屋がノックされ、入ってきたのはメイドだった。

 


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