表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/44

34ページ 災禍

「わかる? この腐った学校を作った校長の……娘なの、私」

「……。」

 生き残った航平、輝、稜、篤志、佳典、荘一郎。愛菜、あさひ、綾子、沙耶、冴子、雅恵。12人は息を呑んで紗弓の話を聞き続ける。

「この高校があるおかげで……圭人くんも、真奈ちゃんも不幸になった。違う?」

「……。」

 誰も答えられない。

「こんな学校……存在するだけで人に害を与えるの……」

 紗弓がニッコリ笑って前へ出た。航平たちは警戒して一歩後ずさる。

「どう?」

 紗弓が言った。

「賭けをしてみない?」

「賭け……だと?」

「そう。賭け」

 紗弓がニッコリ笑うのが、航平には狂ったように見える。いや、実際コイツは狂っている。航平は確信した。

「ロシアンルーレットみたいなものよ。助かるか死ぬかは、あなたたち次第」

「……もっと具体的に言えよ」

「わかってるくせに」

 紗弓は意地悪く笑った。そう。もう罪が暴かれた紗弓、真奈、圭人たちに残された道は少ない。警察が外で待ち構えている。もしも警察が突入してきたり、投降せざるをえないような状況になれば、必然的に紗弓たちは拘束されるのである。

「もしも私たちが警察に捕まったりすれば……これまでの計画が水の泡よ。ねぇ? 浜野さん」

「……。」

 真奈は無表情で銃を向けたままだ。

「そういうわけで……あなたたちには強制的にこのゲームに最期まで付き合ってもらうから」

「……。」

 ガチャッ、と機械が航平たちの前に置かれた。

「……?」

「これ、何だ?っていう顔をしてるわね。教えてあげる」

 血の臭いが充満してきていた。既に事切れた慶介と負傷して意識が混濁してきている圭人、軽傷で済んだ冴子、重傷を負いつつも懸命に立ち上がる航平の4人の血の臭いが部屋に充満しているのだ。

 真奈が無表情でスイッチを押した。

「!?」

 その瞬間、体育館のあたりが明るくなったかと思うと轟音が響いた。窓ガラスが一部、亀裂を走らせ校舎がグラグラと揺れ動く。

「あっ!」

 輝が声を上げた。航平も痛む体を荘一郎に支えてもらいながら外を見ると、体育館が炎上していた。

「ウソ……」

「ウソなんかじゃないの」

 真奈がようやく口を開いた。

「このボタンのどれかで……体育館のように、この教室が吹き飛ぶようになってるのよ」

「……!」

 全員の顔が青くなる。

「10個のボタンの中には2つ、爆弾と連動してるボタンがある」

「……2つも」

 あさひが震える声で呟いた。

「ひとつはこの部屋。そしてもう一つは……私たちが今から移動する、隣の部屋よ」

「なんだと?」

「……。」

 真奈の顔がようやくいつもの優しげな表情に戻った。

「聞いてくれる? 大西くん」

「……なんだ?」

「私ね……。本当はこのクラス、大好きだった」

「……。」

「何言ってんの、今さらって思うかもしれないけど……本当に好きだったよ?」

 その目には、涙が浮かんでいた。

「でも……自分の中の憎悪がどんどん、どんどん大きくなっていったの。抑えきれない。爆発しそうになっていく。毎日、毎日。どうして私だけ、こんな目に合うんだろう。それがただ、爆発したの」

「……。」

「そうなるともう抑え切れなかった。どうやってコイツらを殺してやろうか。自分の思う存分、痛めつけてやる。そう思ったらもう、止まらなかった。伊藤さんと、こんな腐った学校……潰してやるって誓ったの」

「それで……なんでクラスメイトを平気な顔して殺せるんだ!」

「……。」

 スッと真奈の手が上がった。銃口が航平たちに向けられる。

「やめて! 真奈!」

「下がって!」

「!?」

 紗弓が走り出していた。放り投げられた機械を持ち上げ、構える。

「何……する気だ!?」

「もう……後戻りなんてできないの」

「……。」

 冴子が力なく立ち上がって呟いた。

「そんなことないよ……。真奈。今からでも反省すれば……」

「そうだね。サエちゃん。でもね、私が殺した人たちはもう……戻ってこない」

「それはそうかもしれないけど! でも……」

 ガシャアアァン!と何かが割れる音が響いた。

「あっ……! 警察が来た!」

 荘一郎が嬉しそうな声を上げた。同時に、紗弓と真奈は顔を合わせる。

「は、浜野……!」

「ありがと……大西くん」

 銃を構えたまま、真奈と紗弓はジリジリと後ろへ下がる。

「浜野!」

「寄らないで! 離れて……」

「待てよ……。もう少し、もう少し話を」

「時間がないの」

「ないことねぇ!」

 真奈の目から涙がこぼれた。

「ありがと……。でも、もう……私はダメになっちゃった」

 スイッチに、真奈のか細い指が触れる。

「やっ……やめろおおおぉぉぉ〜っ!」

 航平の悲鳴が教室に響き渡る。

 次の瞬間、全員の目の前で閃光が起きた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ