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30ページ 傀儡

「とりあえず、さ」

 圭人はニッと笑った。

「今から呼ぶヤツ、前へ来いよ」

 全員の目が見開かれた。

「呼んだら……どうする気だ?」

 慶介が震えた声で聞く。

「さぁ……呼ばれてからのお楽しみってヤツだよ」

「何がお楽しみだ! 散々人を殺しておいて、よくそんな……!」

 慶介の額の中央に黒く冷たい物体がコツン、と当たる。

「それ以上生意気な口利くな。お前の額に穴開けてやってもいいんだぜ?」

「……っ!」

「みんな。言うことを聞こう」

「航平!?」

圭人(コイツ)は本気だ。言うことを聞かないと、殺されるぞ」

 航平はまっすぐ圭人を見つめた。圭人は航平の言葉を聞いてニィッと不気味な笑みを浮かべる。

「ふぅん……。意外とお前が一番わかってるんだな、航平」

「……。」

 航平は何も答えない。

「じゃあ、名前を呼ばれた人は前へ出てきてね」

 圭人は順番に名前を呼んだ。呼ぶときに、凍てつくほど冷たい目でその人物をしっかりと見つめることを忘れずに。

「安藤 輝」

 輝がビクッと体を震わせた。

「早くしろ」

「ひゃっ、は、はい!」

 輝は大慌てで圭人のそばへ駆け寄った。

「次。佐々木稜」

「う……う……」

 泣きながら前へ行く稜。その額に銃が突然突きつけられた。

「ひいっ!?」

「泣くなよ。ウゼェ。ぶっ放すぞ」

「わ、わかったからやめて!」

「やめて? 言葉遣いがなってないなぁ」

 引き金がゆっくりと動く。

「ごめんなさい! ごめんなさい! やめてください!」

「しょうがないなぁ〜。1回だけだぞ?」

 圭人はゆっくりと銃を降ろした。

「次。蘇我篤志」

 篤志は怯えながら前へゆっくり歩く。何事もなく、次々と中学から上がってきたクラスメイトが呼ばれていく。慶介、佳典、荘一郎。そして女子が愛菜、あさひ、綾子と来たときだった。

「いやあああああああああ!」

 突然発狂して、雅恵が教室の後ろのほうへと走り出したのだ。

「やっ……やめろ吉田ぁ!」

「あーあ。オバカさんだな、吉田さんは」

 圭人がスッと銃を雅恵に狙いを定めて構えた。

「死ね」

「いやああああああああああああああああ!」

「やめろよ!」

 航平が雅恵に覆いかぶさるようにして立ちはだかった。

「邪魔すんな」

 圭人はギロッと航平を睨みつける。

「嫌だな」

「死にたい?」

「どうせいま、俺がどいたところで吉田を……撃つだろう?」

「よくわかってるじゃん」

「だったらますますどくわけにはいかないね」

「ふぅん……。そんなに」

 航平の額に銃が当たる。冴子はたまらず「やめてよ、航平!」と叫んでいた。

「死にたい?」

「……。」

「死にたい?」

「……ろよ」

「はぁ?」

()れるもんなら、()ってみろよ」

「……!」

 圭人の顔が歪んだ。

「できない?」

「……。」

 圭人の手が震え始めた。

「ハッ……。そうかよ。お前の『決意』はその程度かよ!」

「ちょっ……やめなさいよ!」

 沙耶が挑発とも取れる航平の発言に顔を青くする。

「今さらさぁ、怯んでどうするわけ?」

「よっ……寄るな!」

 近寄る航平に臆したのか、圭人が一歩後ろへ下がった。

「何人殺したんだよ、お前」

「うるせぇ!」

「お前の人生パァにしたんだよな? そこにいるクラスメイト」

「そうだよ! 俺の人生をパァにしやがって……!」

「バーッカじゃねぇの?」

「!?」

 圭人の顔が歪んだ。

()るなら一思いに()れってんだよ」

 スッと航平はポケットから光る刃物(それ)を取り出した。

「え……?」

 圭人も思わず声を上げてしまった。状況がよく飲み込めない沙耶や冴子、荘一郎たちも言葉を失っている。

「どうしたんだよ? 殺るんだろ……こういう風に!」

 次の瞬間、慶介の腹部に刃物が深々と刺さった。

「うあああああああああああ!?」

「きゃああああああああああ!」

「な、なにすんの航平ぃ〜!」

 慶介はそのままドクドクと血を流して倒れる。

「ほら……簡単だろ?」

「ひっ……!」

 半分狂気に満ちた航平の顔に、圭人ですら恐怖感を覚えた。

「ほら……。こんなに簡単なんだぜ?」

「やめろ……」

「何を? 今さら? どんだけ殺したんだよお前……」

「違う……違うんだよ、俺じゃない!」

 圭人の言葉に全員が言葉を失った。

「……え?」

 輝が間の抜けた声を出した。

「ち、違う?」

 綾子も状況がよく飲み込めていない。

「フッ……アハハハ!」

 航平は大笑いし始めた。

「ちょ、大西……?」

 沙耶も戸惑いながら航平を呼ぶ。

「ようやく本音、出したな?」

「……っ!」

 圭人が顔を歪める。

「本音?」

「お前……誰かに言われて『()ってるフリ』してただろ」

「な……!?」

 全員が言葉を失った。もちろん、後ろでずっと澄ました顔をしていた沙弓も顔を歪める。

「図星? 担任の、伊藤先生?」

「……!」

 航平はゆっくりと沙弓に近寄る。

「け、圭人は犯人じゃないのか……?」

「そうさ。いわば圭人は操り人形」

「じゃあ……」

「そう。犯人は、圭人とこの伊藤以外の13人の中にいるんだ」

 圭人と沙弓以外の全員の顔が一気に青ざめた。





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