そして八枚の翼は集いて、新たな時始まる。
ふと傲慢たる天使長は、懐かしい感じに捉われた。
彼は思い出したのだ。
師も走る12月、慌ただしい中皆様は如何お過ごしでしょうか?
最終話までお付き合いいただけまして、感謝感激雨あられの豊福しげき丸でございます。
気付けば約4年の月日が過ぎ、ようやっとこの日を迎える事が出ました。
どうか、最後の一文までお目通しを宜しくお願い致します。
それでは本編をどうぞ。
八枚の翼と大王の旅 -最終話-
-1-
その後、戦いは呆気なく人類の勝利に終わった。
一矢やブランドーや、近衛や魔法騎士の超人的活躍も有ったが、決定付けたのは、ある魔法だった。
民達は懸命に石を投げ、念動魔術師がこれを巨人にぶつけていたが、あちこちで石弾が尽きてしまった。
そこで念動魔術師は、自棄になって念動を直接巨人にぶつけたのだ。
普通、生物の身体はその主の意志に満ちている。
その意志が念動魔法のマナに抵抗すると、容易く魔法が解ける。不器用なクレーンで動く生物を捕えるようなものだ。
だから、生物は、合意した対象しか浮かべる事が出来ない。
だが、巨人はゴーレムであり、意志でなく、自身も念動魔法で動いていた。
そもそも意志と呼べるものが核にしか無く、巨体になった故、皮肉にも、より抵抗力が無くなってしまった。
故に、より強い念動魔法で吹き飛ばしたり、宙に浮かす事が出来たのだ。
それが分かってからは、次々と巨人は持ち上げられ、落下で破壊された。
慌てて元の怪物に分離した物もいたが、それらは容易く狩られて言ったのである。
-2-
「お主ら、死ぬのは許さんと云うたぞ」
ヴァーリは横たえられた骸の瞼を、一人一人閉じさせて行く。
「それでも、もう死んだ方がマシなほど、業に苦しんでおったか? そうで無ければ何故死んだ? 余の所為であるとなじればよい物を、死人に口無しとは口惜しいものよ」
多くの者が鼻を啜り涙を拭う。
ヴァーリは今度は、生き残った戦士達に向き直る。
「余は、この戦いを以って、このラ・フォーロ・ファ・ジーナをヴァルハラと宣した。故に、その統一王として、二つの法を制す。世界中が守るべき法よ」
人々がざわめく。
「まず一つ!
これより、剣や武器は、必ず相手を殺さず倒せるものしか持ってはならぬ!
真の戦士のみ持つ事を許され、例え戦士でも、殺し盗む事に使う事を許さぬ。
そして二つ目!
死刑を禁ず! 例え一つ目の刑を破ろうともだ!!
それでも掛け替えのない命や愛する者、二つと無き宝を奪いし者に仕置き必要とあらば、モ○プの刑を以って罰せよ!
公衆の面前でケ△の穴に◎ップを刺される屈辱は、最上最高の恥辱であるからぞ!
しかし、それでも収まらぬ時や、モッ※の刑を悪用する者あらば、その時は余が自ら72万の兵を率い、真●のブラシを△ツの穴に刺す刑を以って、未来永劫の切れ痔の刑に処すであろう!
皆の者、◎鍮のブラシを畏れ怖れるがいい!」
そして、ヴァーリはその鈍く輝く金属の生活道具を天にかざしたのだった。
呆気にとられる人々に、また慈愛の目を向ける。
「おぬしら、よう戦ったのう。
もう戦士が嫌なら辞めても構わん。だがそれでも剣を以って人を守りたき者は、不殺を誓いて、また取るも良かろう。
剣を取るか、ブラシを取るかよ。
ブラシを以って、掛け替え無き仕事道具を磨く生き方をしたき者は、そうすれば良い。
ブラシを持って己が仕事、己が道で人々を愛おしむ、王道楽土を歩め。
そして忘れるな。
愚かにも人の宝を奪う楽を選ぶ者は、必ずブラシによって報いを受ける事を。
皆、ブラシを畏み敬いて、生きるが良いぞ。
それがヴァルハラの法。ブラシの法ぞ」
多くの者が首を垂れ、聞き入り、
また多くの者が腹を抱えて笑い、
また多くの者が泡吹いて倒れた(合掌)。
「余はここに宣す。最愛の妻エセルリーシャをこのブラシによって守る事を!
もし奪われたなら、ブラシによって思い知らし、例え己の◎ツにブラシを刺される事になろうとも奪い返す! 皆もそれくらいの気合いで己が道、己が家族を守り抜くがいいぞ!」
「おお、あの時と同じぞ」
グスタフが涙を流す。
「あの時はモップで結婚を宣言し、それ以来ローンガルドでは驚くほど強姦が減り平和になったっスよ」
ジッタもうんうんと頷く。
「いや、知ってるけどさ、これがこの物語のオチ?」
キーパもメタい事を言いながら涙を流したが、これは情けない涙だろう(合掌)。
「所謂仏契りとゆーヤツぞ!!」
ヤンキーかよ(核爆)。
どうでもいい小ネタだが、古い言い回しでは、弩ヤンキーの事をノーライフキング(不死の王)とも言うらしい。
かくてラ・フォーロ・ファ・ジーナはブラシの元、ヴァルハラとして統一されたのであった。
なんだかなあ。
『良かろうヴァーリよ。お主の言、確かにラ・フォーロ・ファ・ジーナ中に余さず届けた。ついでに地球の民にもな』
大天使長を始めとする72のドラゴンが、王の宣言を認め、また各地の縄張りへと飛び去って行く。
『願わくば人の天寿以外の死の全て滅びる日の訪れん事を願う。それではサラバだ!』
「………行ってしまわれたか」
「これですべて終わったのですね」
嘆息するセントゥリウス。
「感動のラストを期待していた人達に、何とお詫びした物やら」
頭を抱えるキーパ君だった。
クロースリア王城のテラスで、水晶を前に笑い転げるエセルリーシャと、ずっこけたままの女王と重臣『四本の剣』。
「あ、アホ! やっぱアイツ最高のアホ!!」
「こ、こんなので世界は平和になるの?」
「なったら我々の苦労って一体?」
「そんなアホな」
「………なるようにしかなりませんな」
「だから言ったのですよ。私など大王の足を引くばかりと」
吹っ切れた顔で、片腕の男は清々しく笑んだのである。
-3-
人々はその場にへたり込み、各々に生き延びた事を喜び合う。
ズーも、クロブも、グレガンも、ルーフェスも、ザッパも、オフィーリアも、イシュヴァーナも。
カーツも、ロレンスも、メイシアも、ヴァースキも、長老も、パランタンも、カロも、レイチェルも、エリスロも。
カイネルも、ダガランも、バルクも、ルードも、サマンドも、ゲラードも、バンデルも。
そしてエッセとサトラも。
「だからしてやるって言っただろう?」
「アタシらじゃ不満だって言うのかい?」
「違うっす。そうじゃないっす」
「そんな事したら悪いからっす」
「何が悪いってんだよ?」
「姐さんと、その未来の彼氏に悪いっす」
「俺達の未来の彼女にも悪いっす」
「アンタら………」
「いい漢になったねえ」
「「「押忍! 姐さんらのお蔭っス!!」」」
「よーし、なら俺達が」
「お前等をナンパに」
「「連れてってやらあ」」
大見得を切るバルクとルード。
「いや、流石にこの人数は無理っしょ」
「「「わはははは! ワーハハハハハハ!!」」」
こんな笑いがあちらこちらで起こったのだった。
-4-
隠れ里では、へたり込んだままの戦士たちに、里の者が気を聞かせて酒を運んでくる。
これで次の月は大分酒を控えねば蓄えが怪しいが、折角のめでたさには代えられぬ。
その分、皆、味わいしみじみと飲んだ。
少し酔いも回った頃、ある若者が空の点に気付く。
酔いで目が曇ったかと思ったが、よく見るとあれはドラゴンだ。
「お、おい! あれは大天使長様だぞ!」
「ははーっ」
「有難や有難や!」
『有難うはこちらの台詞かもしれぬな。大儀であった。お主らがこの人の世を救ったのだ』
「ただ我が家を守っただけだ」
「そうです」
笑みを持って応えるブランドーとマリエル。
「大層傲慢なセリフだな。この傲慢たる天使長を前にして」
「あら、傲慢は天使長様だけの幸せではありませんよ」
「そうとも」
『ほう、傲慢を罪で無く幸せと言うか?』
「そうだ。人には傲慢にもして上げる喜びが有る」
「傲慢にもさせて上げる喜びも有ります」
「何故ならそれは同時に、させて頂ける謙譲の喜びでもあり」
「して頂ける謙譲の喜びでもありますから」
『おお?』
「だから人は」
「常に寄り添い」
「手を取り」
「学び合い」
「「どこまでもいつまでも、共に道を歩める喜びを、五つの喜びを得て生きれるのです」
『フ、フ、フハハハハハ』
「「?」」
『我は久方ぶりに、まこと、お主ら人間が羨ましいと思うたわ。人の世から愚かしい争いが消え、人が皆楽園に相応しき暮しの分を弁える日が来て世が平らかになり、ドラゴンの役から降りれる日が待ち遠しいと思うた。
褒美を取らす。何が良い?』
「「それでは――――」」
-4-
一矢達6人は、気付けば妙な場所にいた。
山の斜面か何かだろうか?
よく見ると阿蘇の様な、巨大な外輪山の中に、豊かな自然と人の集落が有る。
「ここは何処だ?」
一矢が皆に訊ねる。
「ミーにもわかりませーん」
「本当に知らないとこだぞ」
「おっ、ドラゴンが! 六枚の翼の天使長様がいるぞ!」
「じゃあ、あそこを目指してみる~?」
「行こう! きっとあれは姉様だ! 間違いない!」
「シエラさんが言うならきっとそうだ! 行こう!!」
6人はマリエル達を目指し歩きはじめる。
「四善(自然)一悪、即ち吾の心か」
シエラが歩きながら呟く。
「ああ、悟りの事だね」
一矢も歩きながら応える。
「それは、姉様に遠慮をさせたからには、もうそれ以上『悪』を重ねてならぬ事、嘘を付いて誤魔化してはならぬ事なのだな」
「二つ重ねれば悪辣となり、三つ重ねれば邪悪、四つ重ねれば極悪、五つ重ねれば善一つ無き猛悪。心の中の嘘、妄想の割合さ。シンプルな5進数だよね」
「自分の正直な気持ちを殺せば、結局は大切な人のそれも殺しかねない。危く、姉君のブランドー殿への気持ちまで殺す所だった」
「たとえ思いやりでも、自分の気持ちを殺す事が、時に人を殺す事になりかねないんだね」
「幸せになって欲しい夢さえ想いさえ、盲信になれば、人を苦しめる」
「四信一疑かな、必要なのは」
「?」
「これも5進数さ。観たまま、聴いたまま、感じたまま、三つの在りのままを信じ、もう一つは礼儀を持って信ず」
「礼儀?」
「自分やその人が未熟でも、疑わしくても、一人前として扱う事だよ。その人を成長させる為に、あえて重荷になっても信じる事が礼儀を以って信じる事って教わった。
失敗した時に、ちゃんと自分やその人が後悔して成長できるようにってね」
「では? 残る一疑とは何なのだ?」
「ならその分、礼儀を持って疑う事だと思う。時に慈愛を以ってその人の事情を慮り、時に畏敬を以って、その人を侮らない為に疑う。すると騙される事も防げたり、騙されても大丈夫なように準備できるし、時に労わる事もできる」
「?一矢がいつもしている事のように思うぞ?」
「うーん。前から漠然と思っては居たんだよ。でも、ちゃんと言葉にして、自分のしたい事はいつもそうなんだって確認したのさ。どんな人とでも、人と人との絆を結ぶ為にそうする事。学ぶ事が」
「ふふっ。そうか、一矢らしいな」
「うん」
「あっ! 姉様だ! 姉様―!!」
「シエラちゃーん!!」
ふと傲慢たる天使長は、懐かしい感じに捉われた。
彼は思い出したのだ。
地球が氷河期になった時、魔法を選び、新たな地を求めてかつての楽園から自らを追放し、ドラゴンと共に旅立ったラ・フォーロ・ファ・ジーナ最初の王と王妃、アダムとエヴァの事を。
そして、魔法を捨て、地球に残り生きる人々を導いた王と王妃、ミヒャエルとジブリールの事を。
ブランドーとマリエルに、一矢とシエラに、彼はその面影を見出す。
ひょっとしたら、本当に彼等はその生まれ変わりかもしれぬ、と彼はこの再会を、我が事の様に喜んだのだった。
そうして八枚の翼はここに集い、物語はここに終わる。
八十億の命よ、八百万の天職を得、八百の邦、ことごとく栄えたまえ。
宇宙八方に広(紘)くとも、常に人と人の掌合わさる天(点)下の下、一つに結ばるる。
全ての人よ国よ、皆共にありのままに家族の如く心豊かに尊び合い在り給え。
八万の荒御魂よ、英霊和御魂への功徳ならん事を。
南無八幡大菩薩。
-完劇―
終わってしまいましたね。
これで俺は普通の男の子に戻ります!
とは行かず、『新ログ・ホライズン』が有るので、まだしばらく兼業作家生活からは足抜けできません。
はーやれやれ。
最後に感謝の言葉を。
柏木咲さん。
相棒のシステムエンジニアChi-さん。
会社の同僚、元同僚たち。
そして旧ホビ-・データを通じて知り合った皆様方。
故人でありますが、我が父、衛、祖父、森周平。
武術を縁に知り合った御方々。
何よりこの物語を最後まで読んで下さった読者の御方々。
大変有難うございました。
それでは、またどこかでお会い致しましょう。
まったねー。




