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八枚の翼と大王の旅  作者: 豊福しげき丸
23/31

暗黒の谷攻防戦

 それを見たヴァースキ達兵士は、感心しつつも心配する。

 

 セントゥリウス。重ねて言うけど、貴方渋キャラでしたじゃん?(涙)

 

 眼前に並ぶ二百の黒い怪物を見ると、とても頼りなく思える。

 

 魔法陣は輝く。

 だが、その中から何者も現れる気配が無い。

 

 絶望を通り越して笑うしかない戦力差。

 

 覆せない高次曲線。

 

 叫んだところでどうしようもない。

 だが、叫ばずにはいられなかった。

 

 寒さ一番厳しい時期ですが、暦の上では春の始まりです。

 一月振りの御久しぶりです。毎月の連載が無事に続き、また皆様と会え、感謝感激の豊福です。

 今回、最終決戦前哨戦の最後、アフリカ、暗黒の谷攻防戦です。

 一矢達の活躍に乞う御期待。

 ちなみに以前言ってた『機動戦士ガンダムSS』ですが、全12話中第5話まで書き上がりました。

 ですがネットにうpれる見込みが立ちません(TT)。

 どこか出版社さんお声掛けいただけませんでしょうか(水爆)。

 『13個目のピーピングジャック』も、そろそろ次のインターミッション書かなくちゃな~。

 などとお見苦しい愚痴をこぼしましたが、気にせず本編をお楽しみください。

 では。

 八枚の翼と大王の旅 ―第二十三話―

 

 -1-

 

『ベルゼウス山に於いて百体の部隊が全滅』

『敗因は敵戦力が賢者の石を大量に使用した為との報告』

『如何に対処を?』

『敵戦力が賢者の石を使い切ったか否かの情報が不足』

『敵戦力は七十』

『賢者の石が残存していた場合無視するには惜しいが、大軍を差し向ける必要性も無し』

『砂漠地域の斥候は256体。残りの255体を集結させて差し向けるが適当かと』

『攻略戦術は如何に?』

『戦力を128体と127体に分割。基本陣形は敵戦術魔法を考慮して密集せず薄く広い横陣。どちらかが敵戦力と遭遇した場合、罠が有るものと考えこちらから前進はせず距離を置き対峙もしくは迎撃。遭遇しなかった、もしくは数のより少ない敵戦力と遭遇した部隊で集落を襲撃し、賢者の石を捜索し強奪。戦力の充実を図ってから合流し、敵戦力を殲滅』

『承認』

『承認』

『戦力の結集及び到着は?』

『おおよそ6日後』


 -2-

 

 アフリカ大陸、暗黒の谷。

 一矢達は鞘が付いたままの剣を、片手で前に突き出し支え、静止している。

 それを見たヴァースキ達兵士は、感心しつつも心配する。

「訓練熱心なのは結構だが、ほどほどにしないと、いざと言う時戦えないのではないか?」

「訓練は訓練ですけど、ほとんど筋肉は使ってませんよ。言うなれば、テイクイットイージー、楽をするための訓練です。六本指と言います」

「ほう?」

「掌の下側のふくらみには、球指根と言う骨が有る。特に小指側のそれに剣の柄を引っかけて、剣を楽に持つための訓練だな」

「まあ、更にゆーと、掌だけじゃなーくて、身体中の骨を正確に『引っかけ』て、楽にする訓練でーす」

「そうした分だけ、筋肉は自由になって軽く動かせるって言う事だぞ」

「正確に『引っかけ』るには根気がいるけどね~」

「慣れれば楽しいと言うか、やらずにおれぬものだ」

 骨格の鍛錬は、それこそ寝ている間でも出来るぐらい楽な(より正確には、楽になって行く)ものである。

 故に、それもサボって、年に1、2度温泉に浸かりに行く事を、昔の人は『骨休め』と言ったのだ。

「うーむ、確かにナイフ術や格闘術や行軍でも、慣れればほとんど力が要らなくなり、軽く自由に動かせるが、君達のそれは、より積極的にそうする為の訓練だな。剣は時代遅れと思っていたが、その道を究めた者からは、まだまだ学ぶ事が有りそうだ」

「若輩者ですが、教えられる事が有れば、時間が許す限り何なりと。俺達が貴方達を利用させてもらっている御礼です」

「…………」

「どうしました?」

「いや、民間人の君達を利用している、狡い大人は、我々の方だと思ってね」

「まあ、そうですね。たかだか自分の為に人を利用する人は信用できません」

「―――――っ」

「でも、『何かを大切にしたい』自分の気持ちの為に人を利用する人は信用できます。特に、その事を誤魔化さず後ろめたく思う人は」


 ―――自分がしたい事、今必要な事、その正直な大切な気持ちを、行いを、人と重ね合わせられる事―――

 大威徳明王の悟りである。

 

「軍人の貴方達と俺達が、いつまでも心や行動を同じにできる訳ではありませんが、今この時『大切な何か』を、その気持ちを重ね合わせられる。それで充分でしょう」

「…………」

「そうだな」

「ああ」

「その通りだ」

「後は、願わくば難民の中からも元気な者が、怪我をした者の代わりに闘ってくれればいいのだが」

「そうですね、彼等はルーズです」

「おい?」

「そこまではっきり言うか?」

「ですが、日本語でルーズとは『怠ける』。心の上に重しの蓋が有ると書きます。彼等は何をしても無理だ無駄だと絶望し、心に重い蓋をしています。だから、そうでは無いと気付いてくれればいいですね」

「だが、どう励ませば?」

「今、何かを言っても通じるとは思えません。でも、きっと声の届く時は訪れます。待ちましょう」


 -3-


 ジュデッカ大陸。大王開拓地。

「して、怪物どもの動きはどうなっておる?」

 ヴァーリが兵達を見回りながら傍らのセントゥリウスに訊ねる。

「はっ、通信魔法の報告では、ザーダーン王国各地で増えた怪物が、王都の本軍と合流を計っている様子。このままで行くと、合流に3日、我らが陣に辿り着くには4日、合わせて最短で1週間と思われます」

「ふーむ。であるか。では6日後が決戦と思っておいた方が良い。怪物に飲食睡眠が不要と分かって計算していても、それでもまだわずかに甘く見積もっている恐れがあるでな」

「御意っ!」

 時折意味不明な事を言うが、殊、戦に於いて、決して敵戦力に甘い見積もりをしない所は、流石信頼に値する王将と感服する。

「ですが、僅か6日では、寄せ集めを精兵に鍛錬はおろか、最低限ひとまとまりの軍隊として均すのにも、とても足りませぬ。ザーダーン王国残党軍に至っては、まだ到着までには2日がかかるとか。着いたらついたで、1日は休息に当てねばならぬので、訓練に参加できるのは残り3日……。号令を一致させるのもできるかどうか」

「では均さねば良い」

「はあ?」

「個性そのままを楽しめばよいと言うたろーが!何べん言わせる? おっそこの爺共、死にかけに鞭打ってよう頑張るのう? そんなに孫が可愛いか。良い良い、10点中8点を授ける。残り2点をのんびり楽しみ励むが良い」

「おう、8点も下さりますか?」

「ありがたやありがたや」

「ホンに大王は分かっておいでじゃあ、ワシら孫が可愛うてならんで」

「うむ。余も四十になってようやっと男児を授かった故、主らの気持ちわからんでも無い」

「それはそれは、可愛くて仕方ありませんな」

「儂らこそわかりますとも!」

「「「わはははは」」」

「だ、大王、兵と親しむは平時においては大事ですが、今はそれどころではっ!?」

「分かっておる故、今こうやって兵を練っておる」

「はああぁ?」

「心配なさりますな。大王はいつもこうやって勝ってこられました」

 グスタフが請け負う。

「そ、そうなのか?」

「ああ、俺も吟遊詩人の歌でよく聞いたぜ」

 ジッタが気安くセントゥリウスの肩を叩く。

「では、これから秘策の戦準備が有るのだな?」

「ありませぬ」

「は?」

「ああ、延々これが続くだけで、確か後は出たとこ任せだよな」

「はあああああぁあぁあああ!?」

 セントゥリウス。重ねて言うけど、貴方渋キャラでしたじゃん?(涙)

「だいじょうぶです。僕もわかっててもお目付け役してて胃が痛いぐらいですから」

 キーパのそれは、慰めになっているかどうか微妙である。

 

 -3-

 

 アフリカ大陸、暗黒の谷。

 峡谷において狭くなっている箇所、それに更に岩や土塁を積み、簡易な砦を築いた。

 だが、眼前に並ぶ二百の黒い怪物を見ると、とても頼りなく思える。

「援軍は間に合わなかったな」

「いえ、もうすぐです」

 ヴァースキに一矢が答える。

「説明を聞いてもいまだに信じられんが、それにしてもしばらくは我々だけで持ち堪えねばならん」

「それは仕方ないですね」

「本当に来るのだろうな?」

「来なければ皆死ぬだけですから、流石に死んだ後の心配までしても始まりません」

「言ってくれる!」

 二人の指揮官のやり取りに周りの者は苦笑する。

「来ますよ!」

「総員、構え!」


 峡谷の奥で難民と医師たちは、黙って3人の魔女の儀式を見つめていた。

 巨大な魔方陣。

 魔法陣を構成する一部、六芒星と呼ばれるその図形の一つの三角形の頂点に、3人の魔女は立つ。

「「「ラム・ドゥーサ・エアリドゥー」」」

「来たれ、オクシオンの子、魔道士カーツよ、同胞とともに道を通りて来たれ!」

 魔法陣は輝く。

 だが、その中から何者も現れる気配が無い。

「ど、どうしよう、姫様?」

「道が古過ぎるせいで、なかなか繋がらないよ~!」

「諦めるな! 必ず繋がる!」

「くそっ! 間に合え間に合えー!」

「お願い~!」


 15対200。

 十分の一以下。

 絶望を通り越して笑うしかない戦力差。

 倒しても倒してもきりがない。

 懸命にスコップを喉に向けて突きだす。

 懸命にマチェットを振るう。

 懸命に刀を振るう。

 自分達と同じ数の15体は倒した。

 だが負傷で1人欠ける。

 その穴を埋めるために他の者に負担がかかる。

 ヴァースキの脳裏に冷徹な計算が告げる。

 人間は無限に戦い続けられない。

 疲労はこれから加速度的に増す。

 負傷者はこれから加速度的に増える。

 戦果はこれから加速度的に減って行く。

 覆せない高次曲線。

 嫌と言うほど軍学で習った。

 セオリーは損害を押さえつつ撤退。

 さもなくば全滅。

 だが、後など無い、無いのだ。

 やがて次の8体も倒さない内にまた一人欠ける。

「ウオオオオオォォオオォ!!!!」

 叫ぶ。

 叫んだところでどうしようもない。

 だが、叫ばずにはいられなかった。

 目の前が白くなる。

 ああ、遂に自分は死んだか。

 ヴァースキは諦観の笑みを浮かべる。

 だが、世界に色が戻った時、眼に映ったのは、怪物のほとんどが吹き飛ばされた光景。


「やった!」

「ドレス頂きぃ!」

「いや、まだだ、ロレンス、メイシア!」

 カーツの声に、魔道士たちが、いや、その場にいた全員が見たのは、薙ぎ倒された怪物たちが、次々と再生を終えて立ち上がる光景だった。

「うそおおぉ? 50人と賢者の石で放った、攻城級戦略魔法『衝星炸裂』だよぉお? ちょっとした城門だって吹き飛ぶんだよぉ?」

「話以上の化け物ね」

「いやまあ、流石に3、4体ぐらいは首が千切れ飛んでるから、全くの無駄じゃなかったみたいだな」


 難民達の幾人かは、その光景を見て立ち上がる。

「聴いてくれ!」

 一矢は叫ぶ。

「あの怪物には、銃も戦車も戦闘機も敵わない! 世界中のどんな兵器も軍隊も敵わないんだ!」

 シエラ達は、ラ・フォーロ・ファ・ジーナから武器を届けに来た数人は、難民達に武器を手渡す。

 それは加藤清正が、虎退治に使ったと言われる十字槍。

 勿論、『斬徹』の製法で作った物である。

「でも、貴方達なら敵う! 貴方達なら勝てるんだ! 何故なら、他の世界中の誰もが逃げ出した、獅子や豹や象の、猛獣の住まうこの地に、槍一本で踏み止まり、これらと戦い生き抜いてきた真の戦士の末裔の貴方達なら! 信じてくれ!貴方自身を! 貴方達が世界中の人に救われて生き延びてきたのは、きっと今、貴方達が世界中の人を、世界を救う為なんだ!!!!」

 一矢自身も、シエラから十字槍を受け取る。

 一矢は十字槍を右手に、小太刀を左に構え、長老を見つめた。

 長老は、足を引きずりながら、槍を構える。

「「ィヤアアァァアアア!!」」

 砦に取り付く怪物の首目がけ、十字槍が振るわれる。

 そして、難民、いや、アフリカの戦士たちはそれに続いた。


 ―――人と人が心を重ね行いを重ねる時、徳成る時、それは自ずと魔を祓う大威を発す―――

 

「『死神の大鎌ァ!』」

 まとめて7、8体の首が真空の刃で飛ぶ。

 隠れ里の戦闘より戦果が少ないのは、真横からか斜め上からかの、角度の問題である。

「最初からこれで行っておけばよかったんじゃないのぉ?」

「五月蠅い! 戦術上先ず、敵を引きはがす方が先だったから、あれで良かったんだよ!」

 魔道士たちも奮戦する。

 

 勝ち目が見えて、国連軍兵士の動きも目に見えて良くなる。

 そして、数が100を大きく割り込んだ時、怪物たちは攻撃を諦め、整然と撤退を始めた。

「やった!」

「「「やったぞおぉぉお!」」」」

 人々は抱き合い、涙を流して喜んだ。


 -4-

 

『地球上に魔道士が出現』

『二百体の部隊を半数以下に減らす損失の発生』

『間違いなく地球における最大の敵性勢力』

『地球における全戦力を、敵魔道士部隊の排除に注ぐ事を提案』

『承認』

『承認』

『承認』

『戦力集結と到着にかかる時間は5日と半日』


 ―――斯くて、2つの惑星の命運を定める三つの決戦は、すべて同日同時刻に定められた―――

 

 ―第24話に続く―

「…………少し待ってくれ。考えたい」

「いいとも」


「ただし、老い先短い身だ。くたばる前にしてくれ給え」


「もう、どっちが守られる側かわかりませんね」


「? では、『武徳』とは何だね?」


「「「―――――魔法だ」」」


「そうでもない」


「分かればよろしい」


「おう。これはまた見事なへたれっぷりよな」


「陛下~」


 以上、次回予告でした。

 なんだかんだで前哨戦もすべて終了。

 残すは最終決戦のみと相成りました。

 泣いても笑っても正真正銘クライマックス。

 皆様ご覚悟を。

 と、その前に次回は残された一週間、最後の平穏の一幕となります。

 ちょっとだけ肩の力を抜いてお付き合いください。

 それはそうと解説。

 今回大威徳の悟りまで来ましたが、遡ってみると、そんなん一矢、前作『六枚の翼』からいつもやってるやん、とツッコみも来る事でしょう(笑)。あれが彼の平常運転なので、今更大威徳なんて真言っぽい事いうのは、厨二病以外の何物でも無いわ~wwwwwwww

 まあ、小説なのでそう言う格好付けもいるんですよwwwwww

 マリエルだってブランドーとのコンビで、この旅の間、一杯やってきましたしね。

 ヴァーリ大王に至っては、もう滅茶苦茶wwwwwwwww

(なんか草ばかり生やしてすみません(^^;))。

 話を変えて、藤田先生の、見るぞ即ち切る、の見切り間合いの『波』の極意、痺れますね。大技で読者の目を引き付けての基本にして極意投入、エンタメの先生として見習うばかりです。

 まあ、ちょっとだけコツも明かすと、足は車輪であると同時に振り子でもあるから、前後自在の無足は成り立つ訳ですが。黒田先生の言う、加速では無く、既にある等速度を利して陰陽を入れ替えているだけ、ですね。

 すでにある等速度は、何も振り子だけではありませんが。体の中は流れで一杯。気の流れと合わせるから気合いとも言います。

 まあ、偉そうに言うほど、俺もできてはいませんが(苦笑)。

 逆にがっかりしたのは某頑駄無漫画でした。頼むからもうちょっと(武の)言葉は丁寧に使ってあげて下さい。

 『アメリカの大きなお友達(バイク用語。アメリカから逆輸入した年代物日本バイクが、とんでもない不具合整備や改造をされていた時に使う)』が書いたアメコミサムライ漫画だと思って読めば面白いんでしょうがね。

 それを言うなら機動武闘伝Gガンダムだって、最初は叩かれてましたから、今後に期待します(南無)。

 などと説教で終わって済みませんが、宜しければ次回も読んでやって下さい。

 それではまた春3月にお会いしましょう。

 皆様それまでお元気で。

 まったね~。

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